【無料掲載】2016Jリーグファーストステージ第9節・名古屋グランパス戦[ミハイロ・ペトロヴィッチ監督][監督コメント]

Q 素晴らしい試合だったが、あえて言うと最近はCKからシュートにつながっていない。その部分については?

それは私のせいかもしれない。なぜなら、CKについては攻撃も守備もトレーニングしていないからです。多くのチームがセットプレーを得点源としてしっかりトレーニングしていることは知っていますが、私はCKというのはキッカーの精度、入っていくタイミング、それが点と線でつながれば得点が生まれると思っています。それがなかなか合わないのも多いが、私はそれはトレーニングの部分というよりは、試合のなかでの集中力であったり、偶然性だったりで得点が生まれると思っています。

私の考え方としては、仕事としてゲームの中でいかにクリエイトするかを植え付けること。そこを選手たちにしっかりとコンセプトとして植え付けていくことが、私の監督としての主な仕事です。CK、セットプレーはキッカーとボールに競りに行く選手に委ね、選手たちが責任を持ってやるべきです。多くの時間を戦術的なトレーニングに割いていくなかで、選手たちは自分たちの話し合いのなかで、セットプレーから得点に結びつけてほしいと思っています。

ユーゴスラビア時代、チームには高さがあってセットプレーで得点する選手がいました。監督が変わって、新しい監督はそのセットプレーで得点力のある選手に、常にニアポストに走れと指示を出しました。そこから彼は、何試合も得点することができませんでした。ただ、その選手はその後、自分の狙いはここだという意識を持ってゴール前に入ったところ、得点をすることができました。

全て監督が指示を出したとして、良くなる部分とそうでない部分があります。セットプレーに関しては、選手に委ねることが多いし、それが私のやり方です。決まり切った戦術のなかで得点できれば、それに越したことはないですが、相手あっての攻撃ですので、状況のなかで瞬間的に選手の感覚で動くことももちろん大事だと思います。以前も我々はセットプレーの練習はしていませんが、それで取った試合もあれば、そうでない試合もありました。セットプレーから得点できていない状況であるのなら、それは私のせいにしてもらって構いません。私が監督なので。

Q 試合途中から駒井選手を右、関根選手を左に入れたが、その手応えは?

昔で言えば、ヨハン・クライフ監督はよく、ラウドルップとストイチコフを右と左で入れ替えることをやりました。前半、関根は右サイドのスペースからドリブルでよく仕掛けていましたが、相手を抜いて決定的な仕事をするまでには至りませんでした。そのなかで、途中からドリブルを得意とする駒井を右に入れて、関根を左にポジションチェンジさせました。以前も関根が左をやることはありましたが、関根は右も左も遜色なくできる選手ですし、両足でしっかりと蹴れる選手です。そういった変化を与えてみて、どうなるかを見てみました。今日はそれがうまくいきましたが、今後もうまくいくとは限りません。

昔のサッカーの戦い方のなかに、クライフのような戦い方をする監督と、サッキのような戦い方をする監督がいます。クライフはACミラン時代にサッキに負けましたが、私はクライフのようなサッカーを目指した指導者です。サッキさんは守備の戦術において、ロープで選手をつないで、右に左にと距離感を保つようなトレーニングをする人でした。日本代表のハリルホジッチさんも同じようなトレーニングをしたとうかがっていますけど、私はおそらく、そういうトレーニングはしないタイプの監督です。選手は考える力があります。それならば、無理矢理に鎖でつながなくても、選手たちはしっかり理解してくれると思います。あまりこういう話しを長く続けるのはよくないので終わりにしましょう。

Q 伊藤選手、初めて見ました。相手は弱くないグランパスで、ボールを持ったら本当に素晴らしいセンスでした。ところが守備機会が4回ありましたが、完全にアリバイ守備で、この選手がもし攻守のハードワークができるようになったら、たぶん日本を代表するようなプレーメーカーになるだろうなと思いました。

私も同じ意見です。ただ、日本の若い選手によくある傾向があります。以前は陽介や元気もそうでしたが、非常に技術があって、高い攻撃能力、ドリブルだったり、パスだったりを持っているが、片側だけしかプレーしないと。守備に関しては、監督である私が走らなければいけないと思うほどでした。

伊藤に関しては、非常に才能のある選手だと評価しています。私はスロベニア、オーストリア、そして日本でも多くの若い選手を代表選手に育ててきました。ただ、彼が今後、日本を代表する選手になるには、自分自身で攻撃と守備、特に守備をしっかりやらなければいけないという認識を持ってトレーニングできるかどうかです。

今年のキャンプでは、阿部とボランチをよく組ませて、練習試合などをやってきました。彼が阿部の姿を見て、守備の部分をよく学び、そこで成長したいと思うかどうかです。今のサッカーで、若干守備の仕事を少なくできるポジションは1人か、多くて2人です。今のサッカーは、全員が攻撃と守備でハードワークを求められます。伊藤が成長していくためには、それを自身の課題としてしっかり取り組むことが大切です。そのことを考え、取り組んでいけば、近い将来に日の丸を背負える選手になれるでしょう。

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