【特別全文公開】日々雑感[2024沖縄キャンプ編]宇賀神友弥−『僕は”そのためだけに”、浦和へ戻ってきた』

©Hidezumi Shimazaki

浦和レッズの2024シーズン沖縄キャンプで精力的にトレーニングに取り組む選手たちの、それぞれの想いに迫るプレーヤーズコラム。今回は特別に、どなたでもご閲覧できる特別全文公開で配信します! 浦研プラスのご購読をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。よろしくお願いします!

その佇まい

 新体制発表会見での佇まいをひと目見て、以前との違いを如実に感じた。かつての宇賀神友弥はどこまでも血気盛んで、勝ち気で、挑戦的で、良い意味でセルフィッシュな選手だった。しかし、浦和を離れて幾多の経験を積んだ彼は、聡明で利他的な歴戦の勇士へと変貌を遂げて、再び浦和レッズへと戻ってきた。

「僕は中学校の頃から18年間、この浦和レッズというチームを背負って戦ってきて、その間、一度も外からこのクラブを見ることがなかったんですよね。今回、岐阜で2年間を過ごして、改めてこのクラブの偉大さが分かりました。昨年もACLの戦いなど、浦和の試合を多く観ていましたけども、その、俯瞰して浦和を見るということが、自分にとって大きな出来事だったんだなと。それが今の自分の佇まいにも影響しているのかなと思います」

 一方で、かねてから兼ね備える反骨心を依然として胸に秘める彼は、ペア=マティアス・ヘグモ監督体制下のチームで自身が成すべきことを十分に理解している。それは豊富な経験と知見に裏付けされたうえで施す、ポジティブなチーム内改革である。

「まだ数日ですけども、このチームに入って、足りないことだったり、自分の中で感じることもあるんです。そこを少しずつ、まずは自分が変えていければと。あとは、自分の経験を活かして、このクラブをより良い方向に、勝てるクラブにしていくことが自分の役割。僕は今までの歴代の先輩たちからたくさんのことを学んできました。その点を踏まえて、言葉ではなく『背中』で皆に語りかけたいと思っています」

©Hidezumi Shimazaki

 宇賀神が浦和からチーム加入のオファーを受けるのは生涯で2度目となる。約14年前の1度目のときは、ユースからトップに昇格できずに流通経済大学へと進学し、数多くの試練と苦難を経て評価を勝ち取った自負から、『あえて(浦和からのオファーを」)断ってやろうかと思った』とも言ったが、2度目の今回は、その心に虚飾はなかった。

「(新体制発表会見の場で)、(湘南ベルマーレから加入した)石原選手が、『浦和レッズからオファーをもらって断る理由はない』と言っていましたけども、僕はそれ以上の強い気持ちを持って、このオファーを受けました。僕はこのクラブに対してそれだけの愛情がありますし、だからこそ断る理由はなかった。まあ、ただ帰ってきても、結局プレーできなければ意味はないですから、しっかりとピッチに立って、そして結果を残す。今はそれだけを考えて、その準備のために、今のキャンプで下地を作り上げようとしています」

©Hidezumi Shimazaki

 そしてもう一つ。彼が浦和に帰還することを決断した最大の理由がある。

「自分が今まで積み上げてきたキャリアの中で、リーグ優勝だけを勝ち取ることができていない。だから僕は今回、この浦和で、その目標を達成するためだけに帰ってきました」

 『リーグ優勝』という言葉を発した瞬間、一瞬だけ、彼は感極まったような表情をした。そして筆者もまた、その想いに触れて心が熱くなった。筆者が現在ドイツで暮らしていることを告げると、彼はこうも言ってくれた。

「そうなんですか! じゃあ、そのドイツにまで届くように一生懸命プレーしますね!」

 颯爽と去っていく後姿、その彼の背中は、間違いなく以前よりも大きく、逞しく、威厳に満ち、この浦和で闘う覚悟にも似た”熱”を発していた。

(了)

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