アンバランスな戦術、戦略 浦和は自滅、必定の敗戦【島崎英純 2016J1ファーストステージ第2節・磐田戦レビュー】

■疑問残る指揮官の選択

なぜ浦項スティーラーズ戦と同じシステムにしなかったのかが分からない。中3日の連戦で選手陣容を入れ替えたのは道理だ。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督曰く「ターンオーバーではなく常時ベストメンバー」という論旨も受け入れられる余地はある。

4ー2ー3ー1の浦項に対し、「相手1トップ+トップ下の、『トップ下』の選手に対するマークが曖昧になるから」という理由で4ー1ー4ー1を採用した前回は槙野智章のハンドでPKを与えて失点したものの、守備組織は良好に保たれ、最少得点差の0ー1で敗れた裏でチーム全体の戦略意図ははっきり示されていた。ならば今回、浦項と同システムを採用するジュビロ磐田に対しても同布陣で臨むのが道理ではないのか。

相手にはテクニックを有し、神出鬼没にエリアを移動しながらも最終的にバイタルエリアで勝負する小林祐希という危険人物がいる。彼の監視を怠れば失点は免れない。しかし、浦和は前日練習の段階ですでに定形の3ー4ー2ー1で対峙する姿勢を匂わせ、『小林対策』を放置して致命的な欠陥を露呈した。

なぜ、成果の出ないバックラインを再び形成したかが分からない。今回はJリーグ1stステージ第1節の柏レイソル戦で採用されたリベロ・槙野、右ストッパー・遠藤航、左ストッパー・森脇良太という布陣が再び採用された。浦項戦でフル出場させた永田充を温存させる意図は分かる。しかし那須大亮のプライオリティがなぜか格段に下がり、センターには公式戦3戦連続で槙野が入っている。槙野は1対1勝負の力量が向上し、相手FWを封殺する術に長けている。磐田は戦前に負傷明けのジェイ・ボスロイドを起用すると目されたため、その対策で指揮官は信頼を置く槙野のリベロ起用を決断したのだろう。これもある程度理解の範疇だ。

そして遠藤の右ストッパー。柏戦で見せた相手ボールへのアプローチ、フィジカルコンタクト、カバーリング、守備要素のすべてでハイレベルな力量を示した彼がストロングポジションで勝負するのは道理であり、この起用も見誤ってはいない。問題は唯一、

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