[無料記事 新連載!] 浦研・アウェー備忘録—再び降り立つ時のために@韓国・浦項編

浦研・アウェー備忘録—再び降り立つ時のために@韓国・浦項編

サッカーのゲームに付き物のアウェー遠征。世界各国、各地を巡る旅はクラブ、チームにとってだけでなく、サポーターや僕のようなメディアにとっても貴重でかけがえのない思い出となります。そこで『浦研』では、アウェー各地を旅した流行行程の記録を詳細に記し、またいつか、その地を旅する際の貴重なバイブルとしてアーカイブ化しようかと考えました!
島崎は基本的に旅行好きです。もちろん浦和レッズやその他クラブの試合を取材観戦するために世界各国、各地を巡りますが、それに付帯する旅行の楽しみも存分に味わいたい欲張り派です。したがって、その行程はできるだけ長く、せっかく高い航空運賃を払うんだから試合当日や前日ではなく3日前あたりから現地へ行っちゃったり、試合翌日にそそくさと帰らずに何日か余分に滞在しちゃったり、結構ランダムな行程を辿っちゃいます。その点をご承知おきの上、是非皆様の今後のアウェー遠征の参考資料として『浦研・アウェー備忘録』をご活用ください!

■今回のアウェー行程■

行き先:韓国・浦項
対象試合:2016年3月2日(水) AFCチャンピオンズリーグ・グループリーグ第2節・浦項スティーラーズ戦
渡航日程:2月29日〜3月3日(4日間)

 ■島崎的/主観的各種採点■

(1〜5の5段階評価。数字が小さいほど低い、もしくは簡単、悪い。数字が高いほど高い、もしくは難しい、良い)
アウェー渡航困難度:1
現地治安度:4
物価:3
交通事情:3
食事充実度:5
スタジアム観戦充実度:3

■今回の渡航スケジュール■

2月29日(月)
10:40日本・成田発(大韓航空)→13:00韓国・釜山着→14:20韓国・釜山・金海空港発(高速バス)→16:30韓国・浦項バスターミナル着(タクシー)→現地ホテル着
3月1日(火)現地泊
3月2日(水)現地泊(試合日)
3月3日(木)
9:30現地ホテル発(タクシー)→10:20韓国・浦項バスターミナル(高速バス)→12:10韓国・釜山・金海空港着→16:20韓国・釜山・金海空港発(大韓航空)→18:20日本・成田着

■スタジアム■

浦項スティールヤード(韓国Kリーグ:浦項スティーラーズ)
住所:1 Goe-dong, Nam-gu, Pohang-si, Gyeongsangbuk-do, 大韓民国

市内中心部からタクシーで約15分。韓国のタクシーは日本よりも料金が安く、約65000ウォン(日本円で約615円程度)で着ける。ただし、このスタジアムは地元鉄鋼会社『POSCO(ポスコ)』の工場敷地内にあり、一見すると『部外者立ち入り禁止!』的な雰囲気の入口門を通らなければならない。しかし実際は工場内の敷地が広大な上に、一般の方が自由に行き来できる動線があるため心配はいらない。臆せず突き進め!
『浦項スティールヤード』は、韓国初のサッカー専用スタジアムとして1990年に完成。スタンドからピッチまでの距離が近く、四方を屋根で覆われているため、風がなく臨場感があり、サポーターの歓声も響き渡る観戦環境は素晴らしいの一言。スタンドの傾斜も角度があるため、イングランド・プレミアリーグの各クラブがホームとするスタジアムの形状に似ている。ただし築26年以上が経過していることから老朽化が進んでおり、公称25000人収容と謳われる観客動員数も傍目から見ると怪しく、おそらく20000人以上は収容できないと思われる。鉄工所敷地内、小振りなサッカー専用スタジアムということから『フクダ電子アリーナ』との相似性が指摘されるが、『フクダ電子アリーナ』はとりあえず工場群の手前に建つのに対し、『浦項スティルヤード』は紛うことなく工場の中、ど真ん中。巨大な煙突から白い煙がモクモク立ち上がる横を素通りする様はスリル満点。決して企業スパイではありません。会社のリクリエーション施設と言われたら、『そりゃ、そうだよね』と反応したくなるくらい、このスタジアムは純然たる『POSCO』の持ち物。
また、今回のように平日ナイターのゲームの際には帰路の『足』を確保するのも重要。前述した通り、ここは『POSCO』の敷地内で、スタジアムが建つ敷地内を出ても、そこは再び別の工場施設が建ち並んでいる異様な空間。したがって流しのタクシーを待ってもほとんど通らず。現地のコーディネイターさん曰く、「あんまり夜遅いと、そこにはタクシーを電話などで呼んでもこない」という、『魔の領域』。最悪は「市街中心部まで6キロくらいなので、歩けないこともない」とのことだが、夜中にどす黒い鉄鋼施設の脇を1時間以上掛けて徒歩で帰るのは嫌。できれば事前にタクシー運転手と交渉して約束の時間に来てもらうか(ハングル語を介せないと難しいので上級者向け)、旅行会社の手配で観光バスで移動するか……。いずれにしても、国際的に名の知れているサッカークラブでありながら、観戦環境、手段はかなり特殊。それが浦項。

■日本から浦項までの行き方(島崎の場合)■

千葉県の成田空港から韓国南部の釜山までは飛行機で移動。所要時間は約2時間30分。日本と韓国の時差はないので、時計の時刻を合わせ直す必要はなし。
釜山の金海空港で入国審査を受けて一階の到着ロビーに出たら、ロビー左右の端に貨幣両替の窓口やクレジットカード対応などのATMがあるので、そこで日本円から韓国ウォンへ両替する。両替を終えたら到着ロビー出口へ。道路に韓国国内の各地方行きのバス発着所があるので、そこで『慶州、浦項』行きのバスに乗車する。金海空港内にバスチケット売り場があるはずだが、今回は見つけられず。ただ韓国の空港バスは基本的にチケット無しでバスに乗り込んで席に座っていると運転手さんが集金しに回るので、そこで支払いをすればOK。ただし、今回は浦項まで11000ウォン(約1000円強)に対して、僕は両替したばかりで大きな紙幣しかなく20000ウォンを差し出したら「お釣りがないよ」と突き返されてしまいました。「両替したばかりなのに、どうしたらいいのよ」と途方に暮れていると、他の乗客からチケット代を集金した運転手さんが戻ってきて無事に徴収してもらえました。
金海空港からは慶州(ハングル読みでキョンジュ)を経由して浦項まで約1時間50分の行程。その間、金海空港の国際線ターミナルを出発して国内線ターミナル、慶州、終点の浦項と、途中停車は2回だけ。慶州までは約1時間10分掛かるので、事前にトイレを済ませないとヤバイです。別の記事でも書きましたが、島崎は長距離バスに乗るとプレッシャーを感じて急に尿意や便意をもよおすので、あまり長時間バスに乗りたくありません。しかし浦項へ行くのはやはりバスが便利なので、ここは断腸の思いで乗ったのです、はい。
浦項には『市街バスターミナル』に到着する。ここ、重要です。浦項には『市街バスターミナル』と『高速バスターミナル』の2箇所のバス乗り場があります。どちらも長距離都市への発着所なのですが、釜山の金海空港への発着は『市街バスターミナル』です。僕の同僚の記者はタクシーに乗って間違えて『高速バスターミナル』に連れて行かれてしまい、そこから徒歩で戻ったそうです。何分掛かったかは、恥ずかしいのか教えてくれませんでした。
島崎の宿泊ホテルは海岸線沿いで、『市街バスターミナル』からはタクシーで約10分程度。韓国のタクシー事情は大変良好で、ボッタクリはなし。自身の体験では乗車拒否もされたことがありません。ただしソウルなどの大都市だと稀に乗車拒否されたり、乗車距離などによっては料金を上乗せされるという話を聞いたこともあります。ただし浦項や以前渡航した全州などの地方都市の方々は基本的に穏やかで、旅行者に対して優しく丁寧に接してくれる印象があります。また韓国はタクシー代が他国に比べて安いと思います。日本的にワンメーター(約2キロ?)で換算すると5000ウォン(約480円)くらいですが、そこから長距離、長時間乗車してもそれほど金額が変わりません。ちなみに釜山の金海空港から浦項までは約1時間50分と記しましたが、その距離をタクシーで移動した場合、料金は約1100000ウォン(約10000円)とのこと。これならば有事の際に集団で乗れば、ひとり2500円程度で釜山まで行ける計算になります。
帰路も往路と同様の行程。『市街バスターミナル』からは1時間に1本、もしくは2本の金海空港行きがあるので、時間に余裕を持って行けば問題なく乗車できます。島崎の場合は出発約20分前にバスターミナルに到着しましたが、バス停の列に並んでいる方はおらず、無事に席に座ることができました。
金海空港は大韓航空とアシアナ航空という韓国の2大キャリアのラウンジがあります。大韓航空はスカイチーム、アシアナ航空はスターアライアンスのマイレージプログラムで、ステータスがゴールド以上であればビジネスクラスでなくてもラウンジを使用することができます。金海空港は入国審査前の出発ロビーには韓国レストランやフードコートがありますが、入国審査を通過した後のコンコース内には小振りな免税店、お土産屋さん以外にはダンキンドーナツなどの軽食を取れるお店しかなく、かなり規模が小さいです。お腹が空いている方は入国審査前にレストランなどに入るのが得策でしょう。

■浦項・食事情■

元々韓国は美食の宝庫。特にお肉に関しては食文化が長く、大抵美味しい。今回も浦項渡航初日にうかがったのは焼肉屋さん。というか、外観の店構えからは焼肉屋さんかどうか分からなかったのですが、『えい!』って飛び込んだら、たまたま焼肉屋さんだっただけ。

 僕の大好物は豚の三枚肉をジューっと焼く『サムギョプサル』。韓国のレストランでは1品メニューを頼むと副菜としてテンジャンチゲ(韓国の味噌汁みたいなもの)やナムル(もやしなどの和え物)、キムチなどが次々に並べられるお得な仕様が定番です。また『サムギョプサル』の肉を巻いて挟む野菜類もたくさん盛られてきます。韓国の大葉のような『エゴマ』にお肉を挟んで食べると、大変よろしいです。

 

 

 


また浦項は漁業の街としても有名で、市内には『竹島市場』という大きな市場があり、様々な海産物を扱うお店が軒を連ねています。だから当然街中には海鮮料理のお店がたくさんあります。僕が今回同行取材者の方と入ったのはカニのお店! 巨大なカニを蒸して豪快にかぶりつく。その時、全員が無言になるのは万国共通のようで、周りの地元の方々もむさぼりつくようにカニを食しておりました。また店員のお姉さんに薦められて食べたホタテの焼き物が絶品でした。こちらは口の開いたホタテの上にチーズを振りかけて食べるらしく、試して見たらこれが絶妙に合う! 皆さんも是非お試しください。

■浦項・ホテル事情■

相対的に見て、浦項は各国主要都市に比べて宿泊施設が少ないです。特に一般的なホテルと称される施設は少なく、『市街バスターミナル』近辺と、僕が今回宿泊した海岸線沿いに数軒点在する程度。そもそも韓国の宿泊施設事情は特殊で、ソウル、そして各地方都市には『オンドル』と呼ばれる日本で言うところの旅館施設が数多くあり、地元の方々は旅行でそこへ宿泊する事が多いらしいです。『オンドル』とは、冬場に極寒となる韓国の気候を考慮して床に温水を巡らせる韓国式床暖房という意味のハングル語で、ここでは暖かい床に布団を敷いて寝る方式が取られています。ただ、『オンドル』は韓国国内向けの色合いが濃く、インターネットで予約できない施設が多く、日本人旅行者が予約して泊まるには工夫が必要です。また、韓国国内には日本で言う『モーテル』が点在しているのも特徴です。少し言い方が悪いのですが、完全に『ラブホテル』のような色彩、形状のものが多く、浦項もご多分に漏れず、お城みたいな巨大モーテルがそびえ立っていました。さすがにサッカー観戦を目的にして韓国に来て、『モーテル』に泊まるのは気が引けますよね。僕もいままで、この施設にはさすがに泊まったことがありません、ええ。
また浦項スティーラーズのホームスタジアムである『浦項スティールヤード』は鉄鋼会社『POSCO』の巨大工場群の一角にあり、周囲は工場施設で埋め尽くされ、旅行者が宿泊できるような施設は一切見当たりませんでした。スタジアム観戦する場合は浦項市街中心地などからタクシー、または旅行会社手配の観光バスなどでスタジアムに行くしか手はなさそうです。

■特記事項・韓国のカフェ事情■

今回、浦項に渡航して印象深かったのが韓国のカフェ。僕が泊まった地域は海岸沿いで、夏場はリゾートで訪れる方が多いらしく、道路に並ぶお店には瀟洒で小奇麗なカフェがいくつも連なっていました。その中のひとつ、『ARABICA COFFEE ROASTERS』はカウンターやソファーが並び、無料WIFIと、ほとんどの席に電源が設置され、僕のようなノマドには快適な空間でした。そしてもちろん、コーヒーの味も深く濃くきめ細やかで、コーヒーアートもとても綺麗でした。今回は冬場だったので外は寒かったですが、暑い夏はまた開放的で素敵な空間になるのだろうなぁと思いました。お気に入りの場所です。

 

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