無料記事:鹿児島キャンプ初の戦術トレーニングを実施【島崎英純・鹿児島キャンプレポート第2日】(2016/2/1)

アジアを制した遠藤航は8日に合流

浦和レッズは鹿児島キャンプ2日目の2月1日、鹿児島県指宿市の指宿いわさきホテル内サッカー場でトレーニングを実施。鹿児島キャンプ初日の指宿地方は穏やかな青空が広がる好天だったが、2日目はあいにくの雨に見舞われ、日中の気温も8度と低く、選手たちはウインドブレイカー、ジャージ、ニットキャップなどの防寒具を装備してメニューをこなした。

最初に、今回のキャンプに参加している選手と負傷者の状況をお伝えする。まず、U-23日本代表の一員として『AFC U-23選手権カタール大会』に参加して見事優勝を果たし、リオ五輪への出場権を獲得した遠藤航はオフ期間を与えられ、チームへの初合流が8日に決まった。

また、今季新卒の福島春樹と伊藤涼太郎が2月1日から3日までJリーグの新人研修に参加しているため、チームを一時離脱している。そして負傷者は、沖縄キャンプの練習中に左足ハムストリングを痛めた青木拓矢が別メニュー調整となっている。また、駒井善成が午前練習の開始直後に足を痛めて練習を止め、大事を取って宿舎へ戻った。駒井は午後練習にも参加せず、明日以降は状態を見極めるとのことだが、明日の東海大学熊本とのトレーニングマッチには出場できないかもしれない。

一方、沖縄キャンプ中にリハビリ調整していた西川周作と柏木陽介は今キャンプから全体練習に加わった。ただ、西川はほぼ違和感のない状態でミニゲームでも機敏な動きを見せた一方、柏木は痛めていた左足を「今季最初のキック」と披露したものの、時折逆足の右足でのプレーを織り交ぜるなど、現在は様子見の段階だ。ただし柏木もこの日のミニゲームには参加しており、急ピッチで復活への道のりをたどっている。

午前9時30分からの午前練習は、キャンプ恒例となっている野崎信行トレーナー主導のサーキットトレーニングが行われた。ただ、沖縄キャンプでは主にボールを使用しないフィジカルメニューだったものが、今回の鹿児島では大半のメニューでボールが使用された。それでも、野崎トレーナーが施すフィジカルメニューは、身体への負荷が高いトレーニングが組み込まれている。

特に厳しかったメニューはグラウンドの四隅に設けられた縦約20メートル、横約10メートルのスペースでの1対1から、野崎トレーナーの笛が鳴った瞬間にダッシュで駆け出して対角のコーナーへ走っていくというもの。1対1の後、選手がダッシュで走り抜けると、そこには同じく1対1のスペースが用意されていて、そこから再び1対1が始まる。間髪入れずに局面バトル、ダッシュが繰り返される中で選手たちは息をつく暇もなく、最後はフラフラになりながらプレーするなど、かなりハードな内容であることがうかがえた。

結局午前練習はメニュー強度が高かった事情もあって約1時間で終了した。また、雨足が速くなったことも練習を早く切り上げた要因となったかもしれない。

午後練習はミシャ流戦術の精度アップに時間を割く

午後練習は15時30分からスタート。予報では雨が上がると言われていたが、依然雨が降り注ぐ悪条件で、チームは鳥かご、4人一組のパス回しといった定型のルーティーンをこなし、16時10分から今キャンプ初となる戦術トレーニングに取り組んだ。

まず、チームは以下のように分けられた。

 

システムが変則になっているのがお分かりだろうか。当初は柏木陽介がフリーマンになる形の10対10+1で行われていた戦術トレーニングだが、途中で高木俊幸が足を痛めて練習を取り止め、代わりに右サイドアタッカーだった梅崎司がシャドーのポジションに入ることで、上記のような右サイドアタッカーを置かない10対10の陣容となった。

この戦術トレーニングの骨子は最後尾からのビルドアップ、素早く機敏な縦パス供給、前線トライアングルのコンビネーション、オーバーラップしてくるサイドアタッカー、ストッパー、ボランチらへのパス展開、サイドからのクロス、フィニッシュという形の反復である。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は自陣から敵陣への鋭い縦パスから攻撃を発動し、前線トライアングルの連係で相手守備を崩し、後方からフォローするフリーマンへのパス供給、そして仕上げというパターンを選手たちの意識に刷り込み、その精度アップを目論んでいた。

今回の戦術トレーニングではプレーエリアの限定を施した上で、各ポジションの選手へプレー制限(ワンタッチ、リターン禁止、オーバーラップのタイミング限定)を与え、その縛りの中でいかに高質なプレーを実行するかを見極める作業が続けられた。ただその要求は非常に高く、選手たちが少しでもプレー精度を落とすと、ペトロヴィッチ監督はすぐさまプレーを止め、激しい言動で選手たちへ指導の声を飛ばしていた。

また、両チームは相手の攻撃を防いだ瞬間に攻守を転換させる意識を高め、目まぐるしく変わる戦況の中で集中力を削がない努力を重ねていた。時折攻守転換の切り替えが鈍くなると、監督から激しい怒声が飛ぶ。今日の練習の中で最も厳しい声が飛んだのはリベロのブランコ・イリッチが守備をした瞬間に攻撃へ転じなかったときだ。ペトロヴィッチ監督は、「ブランコ! ブランコ! ブランコ!」と何度も彼の名前を呼び、「攻撃への姿勢を崩すな!」と強い口調で叱咤激励していた。

約55分間にも及んだ戦術トレーニングを経て、最後は今日の練習の仕上げとなるミニゲームを敢行した。選手は指揮官から指導されたプレーを駆使しながら熱を帯びた局面バトルを展開し、最後はズラタンが豪快なゴールを突き刺して練習を締めた。

約2時間に及んだ午後練習がここで終了。時折激しい雨が降り注ぎ、気温も低下する中、チームは意欲高くトレーニングに励んで鹿児島キャンプ2日目を終えた。

チームは明日2月2日、鹿児島キャンプでは初となるトレーニングマッチ(vs東海大学熊本)を13時から行う予定だ。

(了)

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