無料記事:午後は初の戦術トレーニング【島崎英純・沖縄キャンプレポート第5日】(2016/1/22)

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午前中はフィジカルメニューを徹底して行う

浦和レッズは、沖縄キャンプ5日目の今日も沖縄県島尻郡八重瀬町の東風平運動公園サッカー場で午前、午後の2部練習を行った。

この日の沖縄地方の天気予報は当初、曇りのち雨だったが、天候はそれほど崩れず、結局午後練習の終盤に霧雨に見舞われた程度で、前日のように練習メニューに支障を来すような事態にはならなかった。

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まず、午前練習はこれまで通り9時30分から開始され、今キャンプを通してと同じく、フィジカルメニューを徹底して行った。野崎信行コーチ主導による体幹トレーニング、6種類に分かれたサーキットメニューをこなした選手たちは、10分間2セットのジョギング&ダッシュを敢行。単調なランニングは選手にとって決して楽しいものではないが、基礎体力を付けるにはこのトレーニングが最も適切であり、選手たちは黙々とランニングに勤しんでいた。また、今練習から柏木陽介が他のメンバーと同じメニューをこなした。左膝を痛めている柏木は主に右足を使いながらもボールを蹴り、順調な回復具合を見せ、ジョギング&ダッシュも他のメンバーと同様の負荷で参加した。ただし午後はこれまで通り別メニューでリハビリ・トレーニングを行っており、実践メニューへの本格復帰はもう少し先になりそうだ。

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初の戦術トレーニングが行われる

そして午後練習は15時50分から開始され、定例の鳥かご、4人一組のパスワークを行い、ここから沖縄キャンプでは初となる戦術トレーニングが行われた。まずチームは2チームに分けられ、フルコートを使用。その陣容は以下の通りだった。

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特徴的だったのは、最前線に11人以外のポスト役を付けたこと。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は選手に素早い縦パスを供給することを指示した上で、リベロ、両ストッパー、ダブルボランチの計5人にビルドアップを課し、縦パスが供給された後は、ビルドアップ役の5人は攻撃に参加せず、両サイドアタッカー、2シャドー、1トップ、そしてポスト役の選手の計6人で攻撃する形を反復した。また攻撃の際に1トップ、2シャドーの誰かが後方に下がって攻撃の組み立てに参加する形を指示し、そこからサイドへのパス、最前線へのクサビパスなどを駆使しながらテンポよく攻撃構築するよう、激しく指示が飛んだ。

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この戦術トレーニングで終始良いビルドアップ、攻撃を繰り出せていたのはBチームだった。興梠慎三、ズラタン、石原直樹のトライアングルが巧みなマークの引き剥がしやパスワークで躍動し、サイドの関根貴大、梅崎司がスピード感溢れる縦突破とクロスでゴールをお膳立てした。また、森脇良太、永田充、橋本和のバックラインは出足鋭く相手の縦パスをカットし、そこからボランチの青木拓矢、那須大亮を経由して素早く攻守転換が行えていた。

一方、Aチームの方は縦パスをことごとく相手にカットされる苦しい展開で、なかなかゴール前に迫れず、時間帯によってはワンサイドで攻め込まれて攻撃側の李忠成、高木俊幸、武藤雄樹へボールが入らずに、彼らが傍観することもあった。チームの組み合わせとしてはそれほど戦力差があるように思えないのだが、これだけプレー内容に差異が生まれたのは意外だった。

そしてペトロヴィッチ監督は、続いて攻撃者と守備者を裏返すようにして同じメニューを敢行した。つまり、バックラインが前線トライアングルになり、前線トライアングルがバックラインに成り代わる形である。こうなると1トップのブランコ・イリッチとリベロのズラタンが激しくボールを競り合うという珍しい光景が見られる。この練習の意図を汲み取るならば、あらゆるポジションの選手が攻守両面の役割を担うというチームコンセプトを染み込ませること。そして各選手があらゆるポジションの役割を認知し、それぞれのポジションの考え方を理解させ、チーム全体の共通認識を浸透させることなどが挙げられる。いずれにしてもペトロヴィッチ監督らしい、アイディア溢れる練習方法である。

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そして最後は、戦術トレーニングの成果を試すためにプレーエリアを狭めた上でミニゲームが実施された。この時点で霧雨が降ってきたが、選手たちの動きは機敏で、皆真剣な表情でボールを追いかけ、引き締まったトレーニングが行えたように思う。

実践メニューを通して感じた点をいくつか。リベロを務めたイリッチは足下のスキルに優れ、巧みなビルドアップ技術で起点役を器用にこなしていた。イリッチはこれまでの練習で終始リベロを務めており、ペトロヴィッチ監督は彼をバックラインの中央でプレーさせる意図があるようだ。つまりイリッチは那須、永田らとポジション争いをすることになると思われる。

また、ズラタン、興梠と共に前線トライアングルを組んだ石原の動きが目立った。彼は決してスピード豊かではないが、余裕ある挙動で巧みにボールキープし、一瞬の隙を見極めてスペースへ入り込む術に長けている。移籍初年度の昨季はシーズン序盤に膝を負傷して長期離脱するアクシデントに見舞われたが、今季は心機一転巻き返しを図り、順調にトレーニングをこなしている。前線はズラタン、興梠、武藤、高木、李らに加えて高卒新人の伊藤涼太郎ら、実力者が‘ひしめき合っている。現状では誰が先発のピッチに立ってもレベルの高い攻撃を構築できるだろう。この中でペトロヴィッチ監督はどんな組み合わせをファースト・プライオリティとするのか、注目である。

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もう一点。戦術トレーニングの最中に青木が足に違和感を覚えて練習を途中離脱した。それほど大きなケガではないとのことだが、明日以降の練習参加は症状を見極めて判断されるとのことだ。青木の状態については明日、詳細をお伝えしたい。

(了)

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