無料記事:午前・フィジカル、午後・実践練習。“ミシャ流サイクル”は今年も不変【島崎英純・沖縄キャンプレポート】(2016/1/19)

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身体をイジめ抜いた午前練習

浦和レッズは、沖縄県島尻郡八重瀬町の東風平運動公園サッカー場で沖縄キャンプ2日目の練習を行った。

まず午前練習の最初に八重瀬町役場の歓迎セレモニーが開催され、比屋根方次町長の挨拶と贈答品の授与が執り行われた。花束贈呈ではミハイロ・ペトロヴィッチ監督とキャプテンの阿部勇樹が代表して受け取り、八重瀬町からチームに授与された沖縄名産のオリオンビール5ケース、タンカン(果物)20キロ、そして八重瀬町名産の塩黒糖とジャムの詰め合わせを、それぞれ槙野智章、柏木陽介、宇賀神友弥が代表して受け取り、感謝の意を表した。

その後、チームはさっそくフィジカルトレーニングを開始した。野崎信行トレーナーの指示の下、2人一組となってさまざまなメニューをこなしていく。その内容はゴムチューブ引き、段差のある箇所に両足で30秒間足踏みする反復動作、または仰向け状態からヘディングを放って腹筋に負荷をかけるなど、見た目以上に厳しいメニューが目白押し。選手たちは時折苦悶の表情を浮かべたり、思わず悲鳴を上げたりするなど、全身で感情を表しながら精力的にトレーニングに励んだ。

11時過ぎにようやくトレーニングが終了するかと思いきや、午前練の最後にはピッチの横幅を往復するシャトルランダッシュが待ち構えていた。ここで気合を全面に押し出したのが関根貴大だった。彼は猛ダッシュで終始先頭を走って誰よりも速く駆け抜けてゴール。全力疾走した関根は精魂尽き果てた様子で芝生に倒れ込み、厳しい練習をしっかりと締めた。

リベロで起用されたイリッチ

一方、昼食を挟んで16時から開始された午後練習は一転してボールを使用した実践練習が実施された。キャンプ中の午前・フィジカル、午後・実践メニューという流れはペトロヴィッチ監督のチーム構築の定番でもある。ボールを使用せずにランニングや筋力トレーニングだけのメニューを続けると選手たちにストレスがたまり、効率性に支障が出る。ペトロヴィッチ監督はその点を十分熟知しており、2部練習のどちらか一方でシーズン中と変わらぬトレーニングを行い、メリハリを与える。浦和におけるペトロヴィッチ監督体制は今季で5年目を迎え、在籍年数の長い選手はそのサイクルを認識してもいる。『鳥かご』、『パス回し』、「ミニゲーム」という実践メニューの中で浦和のサッカースタイルを浸透させる。今季もその流れはまったく変わらず、選手たちは必死にボールを追いかけ、キャンプ2日目にして早くも軽快な動きを見せていた。

ただし、ペトロヴィッチ監督が選手に課す実践メニューは甘いものではない。この日の午後練習は16時から開始され、ミニゲームなどを経て終了の号令が響いた時には18時を回っていた。みっちり2時間のトレーニングを終えた選手の多数は足の張りを訴え、トレーナーを呼んでアイシングに勤しむなど、早くも身体のダメージを訴える者が続出した。

さて、そのミニゲームの内容だが、縦約80メートル、横幅は実際のピッチと同様のスペースで、GKを入れて12人対11人という変則マッチ、プレーは2タッチ制限など、縛りのある、これまた通常通りの形式で行われていた。今回のキャンプには『AFC U-23選手権2016』に出場中のU-23日本代表・遠藤航が不参加で、他に西川周作と柏木の2人がリハビリメニューをこなしている。その結果、GKの岩舘直、大谷幸輝、福島春樹の3人を除き、今キャンプで通常メニューをこなしているフィールドプレーヤーは総計21人となる。この構成では11人対10人となるため、高卒新人の伊藤涼太郎が途中でチームを入れ替り、その他は以下の陣容でチームが組み分けされていた。

 

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注目の新戦力、ブランコ・イリッチはリベロを務めた。まだキャンプ序盤でチームコンセプトの可変システムによるビルドアップを行う形には至らなかったが、それでもイリッチは高い足元のスキルを駆使してスムーズなパスワークをこなし、リベロの素養を醸し出していた。ただしイリッチに関しては今後も仔細な見極めが成されるだろう。今後の彼はストッパーポジションなどでも試されるはずで、チームメイトとの相性によっても彼の役割に変化が生じるかもしれない。

また、駒井善成は阿部と組んでボランチを務めていた。ただし彼の適性ポジションはトップ下、もしくはサイドアタッカーであると思われ、今回はチーム構成の都合(遠藤のキャンプ不参加、柏木のリハビリ調整など)でボランチ起用されたのかもしれない。また前述した伊藤は両方のチームのトップ下でプレーし、前への推進力あるドリブルを繰り出すなど、その持ち味の一端を示していた。

チームは明日も午前・午後の2部練習を予定している。当地沖縄の天候は曇りで、気温は平年を下回る12℃前後で肌寒い。また明後日以降は雨予報が続き、風も強く、気象条件はあまり恵まれていない。しかし第一次キャンプの主目的はシーズンを戦い抜くための体力強化が主眼だ。選手たちはそれを十分認識し、現在は黙々とトレーニングに励んでいる。

(了)

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