無料記事:午前・フィジカル、午後・実践練習。右サイドに入った駒井が切れ味の鋭さを見せる【島崎英純・沖縄キャンプレポート第3日】(2016/1/20)

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那須が背中を痛めるアクシデント

浦和レッズは、沖縄キャンプ3日目の今日も沖縄県島尻郡八重瀬町の東風平運動公園サッカー場で午前、午後の2部練習を行った。

今日の沖縄県豊見城市は曇り時々晴れで、風も弱く、気温は摂氏15度前後と穏やかな天候だった。そこでの午前練習は前日の2日目と同様に野崎信行トレーナーの指示による体幹トレーニングからスタートした(体幹トレーニングまではリハビリ調整の西川周作、柏木陽介のふたりも参加し、その後ふたりは別メニュー)。そして選手たちは約30分の体幹メニューの後に、ボールを使用したスキルトレーニングに取り組んだ。そのメニューは総計6種類で、内容は受け手が目印に対して回りこんでボールを受ける動作を繰り返すもの、4人一組で途切れることなくパス交換するもの、ゴールを設置して1対1を繰り返すもの等など。それらのメニューを各30秒間こなし、すぐさま次のメニューへと移行する。これによってボールコントロールと心肺機能を高める効果を狙うのだろう。

前回も記したが、シーズン始動直後の第一次キャンプは選手の身体を作り上げるフィジカルメニューが幹となる。ただし単純なフィジカルトレーニングでは単調な動作の繰り返しになり、選手たちにストレスが溜まってしまう。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督、そしてフィジカルメニューを指揮する野崎トレーナーは選手たちの心理を汲み取りながら、工夫をこらしたトレーニングを行う努力をしている。

ただ、それでも最終的に選手の心肺機能を高める最適なメニューはランニングである。この日の午前練習の最後のトレーニングはジョギングとダッシュを繰り返す20分間走で締めた。さすがの選手もこのメニューはキツかったようで、野崎トレーナーから終了の声が発せられると、溜息のような声を漏らして安堵の意を示していた。

その中で、午前練習の中盤に那須大亮が背中を痛めるアクシデントがあった。スキルトレーニングの最中に起きたもので、30秒間の動作を終えた後に那須が倒れ込み、背中を押さえて苦しい表情を浮かべた。その後那須は練習を取りやめ、背中を押さえたままチームバスに乗って宿泊ホテルへ戻った。しかし幸いにも症状は大事に至らず、午後練習の那須は他の選手と同じ通常メニューを全てこなしている。トレーナーに話を聞くと「全力疾走して脇腹が痛くなるような症状を背中側に感じたが、休息をして回復した」とのことだ。筋肉系などのケガではなく、一安心といったところである。

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守備陣が最も嫌がるプレーパターンを染み込ませる

15時50分から行われた午後練習は、これまた前日と同様に実践トレーニングを柱としたメニューが組まれた。お馴染みの『鳥かご』、『グループでのパスワーク』をこなした後、ペトロヴィッチ監督の指導を挟んで攻撃と守備に分かれた3対2を実施。このパターン練習では、攻撃側に1人目、2人目、3人目とパスを送ってフィニッシュする約束事が設けられた。興味深かったのはペトロヴィッチ監督が1人目の起点役の選手に対して中央へのドリブル進出を課し、なおかつスローテンポでボールを持ち上がるように指示したことだ。これによってふたりの守備者を中央エリアへ引き寄せ、そこからサイドに開いた2人目へパスを展開し、ボールを受けた2人目が逆サイドの3人目へラストパスを送ってフィニッシュする形を繰り返した。ペトロヴィッチ監督は常々『私には選手たちに攻撃を教え込むメソッドがある』と語っているが、その、相手守備が最も嫌がるプレーパターンを選手たちの身に染み込ませる作業がキャンプ序盤で早くも見られたわけだ。

そして午後練習の最後は定番の実践形式ミニゲームである。この日は前日よりもエリアを狭めたハーフコートで11人対11人、その組み分けは以下の通りだった(平川忠亮はここで別メニューとなった)。

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新加入選手のブランコ・イリッチは前日と同じくリベロのポジションを務めた。また前日はボランチを務めた駒井善成が適性ポジションの右サイドアタッカーに入り、再三に渡ってドリブル突破を仕掛けてその切れ味の鋭さを示した。駒井のドリブルは小刻みなステップと瞬間的な前への抜け出しが特長で、狭いスペースでも一気に対面の選手を抜き去る威力がある。練習の一端を見ただけでもその能力の高さが感じられ、今後が非常に楽しみだ。

一方、同じく新鮮力の伊藤涼太郎はボランチを務めた。作陽高校在学中に浦和の練習に参加し、FC東京とのトレーニングマッチでは得点もゲットしている伊藤だが、彼の適正ポジションはもうひとつ前のトップ下(シャドー)であると思われる。この日はプレーエリアが狭く、周囲からのプレッシャーを感じたのか、ワンタッチプレーを多用していた。フリックやワンツーなどのダイレクトプレーはより敵陣に近いエリアで効力を発揮すると思われ、是非今後は前線で伊藤のプレーを観てみたい。

他に目立った動きを見せていたのは高木俊幸か。今日の彼は興梠慎三、武藤雄樹と前線トライアングルを形成し、積極的にドリブルで仕掛けて能動的なアクションを起こした。そして最後は右サイドでボールを受け、そこから正確なファーサイドクロスを送って橋本和のヘディングゴールをアシストしている。その前の3対2のトレーニングで指揮官が指導した逆サイドへのフィニッシュパスを体現したわけで、高木のプレーは今日の練習を意義あるものにする秀逸なものだった。

このミニゲームのフィニッシュが素晴らしい形だったためか、午後練習は1時間30分ちょうどで終了した。浦和は明日も引き続き当地で午前、午後の2部練習を実施する予定だ。

(了)

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