【島崎英純】2023YBCルヴァンカップ・プライムステージ準決勝第2戦/浦和レッズvs横浜F・マリノス・試合レビュー『ハイパフォーマンス、ハイレベル! 浦和、逆転でルヴァン決勝進出!』

©Yuichiro Okinaga

早川がトップ下で先発

浦和レッズはYBCルヴァンカップ・プライムステージ準決勝第1戦の前半途中に足を痛めて途中交代を余儀なくされた早川隼平が早期回復から再びトップ下で先発した。また出場停止のキャプテン・酒井宏樹の代わりに右サイドバックを務めたのは関根貴大だった。

なるほど、確かに関根はシーズン中に右サイドバックでプレーしたことがあるし、その局面強度には定評がある。対面には横浜F・マリノスの攻撃の鍵を握るエウベルが立つわけで、このエリアでのプレーインテンシティは落としたくない。マチェイ・スコルジャ監督は現有戦力のパーソナリティを十分に熟知した上で対横浜FM戦用のチーム編成を施した。それは同じく局面強度の高い髙橋利樹を右MFに据えた采配からもうかがえる。岩尾憲と安居海渡のダブルボランチは熟成の域に達しつつあるし、左サイドバックの荻原拓也は試合経験を積む毎に『スコルジャ式』の色に染まり始めている。アレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンの壁は何処までも厚いし、GK西川周作は依然としてキャリアハイのゴールキーピングを見せつけている。あとは攻撃陣の覚醒。これ次第で、第1戦で負ったビハインドを跳ね返せる。負傷者が続出し、2列目の人選に苦慮する日々が続きながらも、今の浦和は国内タイトル奪取への希求を隠さないでいる。

試合序盤は両チーム共にボールへの積極的なアプローチが見られた。特に1点リードで第2戦を迎えた横浜FMは一切守勢に回らずに好戦的な姿勢を醸し出してきた。これはもちろん想定内だ。ポゼッションで優位を保って敵陣へ殺到することこそが高尚なチームスタイルと標榜する彼らが、単にアドバンテージを得た時点で腰を引くわけもない。

そんな相手に対して浦和も果敢に前進する姿勢を示した。1トップのホセ・カンテ、トップ下の早川は相手センターバックの角田涼太朗&上島拓巳との局面バトルを厭わなかったし、両MFの髙橋&小泉佳穂も相手サイドバックの松原健、永戸勝也と真っ向勝負した。ただし、浦和の狙いは1対1のマッチアップ創出だけではなかった。それは横浜FMの戦術スキームの一環である特殊なトランスフォームのギャップを突く、鋭いサイドチェンジアクションだった。

右サイドバックに入った関根はエウベルとの勝負で堂々と対峙しつつ、ボールを奪った瞬間に逆サイドの状況を観察し、そこへ機敏なサイドチェンジパスを蹴り込んだ。横浜FM右サイドバックの松原は極端なまでのインサイドポジションを取って攻撃にバリエーションを付ける傾向がある。その影響もあって、横浜FMは攻撃から守備に移り変わった際に4-2-1-3のディフェンスブロックへ立ち戻るまでの時間を若干要する。すなわちトランジション時における横浜FMの自陣サイドスペースにはそれなりの空間があって、浦和の選手たちはそこに狙いを定めていた。特に左サイドバックの荻原、1トップのカンテは相手の急所スペースへの飛び込みが顕著で、横浜FMディフェンス陣はその都度対応に追われた。

また、今回の浦和はインサイドポジションからのパスレシーブが効果的に機能した。横浜FMは1トップのアンデルソン・ロペスが浦和CBのショルツ&ホイブラーテンへ前線アプローチする中で、両ウイングのエウベルと水沼宏太は浦和CBからSBへのパスコースを消すようなポジションを取ってプレスを仕掛ける。これは横浜FMに限らず、3トップを採用する相手チームが浦和対策として用いる常套策でもある。特にアンカー的役割を果たす岩尾が味方CBの間に降りて味方サイドバックのポジションを高く維持する挙動を示したとき、相手チームは浦和のビルドアップエリアの肝であるサイドスペースを消すプレスワークを実践するのである。

そんな相手に対して、浦和は新たなビルドアップスキームを見出しつつある。例えば岩尾が極端にバックラインに吸収されないポジショニングがその一つ。そしてサイドバックのインサイドポジション、また岩尾以外のもう一人のボランチの中盤中央でのポジション維持などで自陣でパスレシーブする選手を増やし、相手の前線プレスを無効化する手法を見出したのである。

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