【掲載無料】2016Jリーグ2ndステージ第16節・ジュビロ磐田戦[ミハイロ・ペトロヴィッチ][監督コメント]

○ミハイロ・ペトロヴィッチ監督
今日のゲームは、前節の新潟と同じように残留を争うチームとの対戦でした。相手もポイントが必要であり、逆に優勝を狙う我々にとっても勝利が必要なゲームでした。その意味で非常に難しいゲームでした。ただ、立ち上がりからレッズが主導権を握り、得点になってもおかしくないチャンスをいくつも作り出せていたのですが、最後の精度が足りずに得点に至らない展開でした。

後半にようやく1-0でリードして、その後にも決定的な得点機会が何度もあったのですが、なかなかそれを決めきれない展開でした。そうしたチャンスを外し続ける展開が続いてしまうと、逆に相手のワンチャンスで追いつかれてしまう、あるいは逆転されてしまうというのはサッカーではよくある展開です。2年前の33節の鳥栖戦だったと思いますけど、1-0でリードして、最後は相手GKも上がってくるような、最後の最後のCKで失点して、同点に追いつかれてしまいました。そういう非常に痛い経験が過去にありましたけど、そうなってもおかしくないような、我々にチャンスがたくさんあって、相手にあまりチャンスがない中で1-0でリードして終盤を迎えるという展開でした。

今日見せてくれた選手たちのパフォーマンスは非常に満足できるものだったと、私は思っています。ただ、チャンスをゴールに結びつける割合はもっと上げなければいけないと思いますし、唯一このゲームの中で、チャンスを決める、最後の精度を上げていく部分は今後変えていかなければいけないと思ったところでした。

Q 多くのチャンスを決められない中で、1点を取った後も選手の落ち着きが感じられたが、その落ち着きはどこから来ているか?

我々、浦和レッズというクラブについては、このクラブで仕事をした人でなければ、あるいはプレーした人でなければ、いかにこのクラブで仕事をするのが難しいかというのはなかなか身をもってわからないでしょう。非常に大きなプレッシャーの中で我々は仕事をしています。

もし、我々が2011年に降格していたら、なかなかJ2から上がってこられない状況、ジェフ千葉のようになってしまっていたかもしれません。ただ、我々は2011年にJ1に残ることができ、その翌年から我々は毎年積み重ねてきました。なかなかタイトルが獲れない中で、その悔しさをバネに毎年チームとしてレベルアップをし、毎年ベターなサッカー、ベターな成績を残しながらここまできました。

そういう中で結果が出ないと、このクラブに対する外からの圧力は相当なものです。ただ、我々はそれに負けることなく、自分たちを信じて、選手たちを信じて、前に突き進んで来ました。その毎年の積み重ねが今の経験につながっています。それが今のチームの安定感と落ち着きにつながっていると感じています。

我々は昨シーズン、浦和レッズの歴史の中でも最もいいシーズンだったと思っています。優勝した2006年よりもベターなシーズンを送ったと私は思います。ただ、最後にタイトルが獲れなかった、それだけで評価が得られなかったというのは間違いないでしょう。我々は昨シーズン、Jリーグで負けなしの記録を更新しました。チャンピオンシップの準決勝でガンバには負けましたけど、我々はシーズンの中で最もすばらしいゲームをしたと思っています。

ただ、あれだけのいいシーズンを送ったとしても、最後にタイトルが獲れないと、そのシーズンに対して満足していただくことができないのが浦和レッズです。それが我々の厳しさであり、難しさだと思います。

最終節、我々は横浜F・マリノスとのゲームを残していますけど、必ず我々は勝利して76ポイントを取り、Jリーグの歴史を更新して優勝したいと思っています。

我々は来週、勝利すればチャンピオンシップの決勝に進めます。おそらく、川崎と鹿島の勝者が我々と当たるわけですけど、最後の2試合で相手に勝利しなければ、我々はチャンピオンシップの優勝というタイトルを手にできないでしょう。そうなってしまうと、残念ながら、我々浦和レッズを取り巻く環境は非常に難しいものになってしまうのは間違いないでしょう。誰も、それに対して満足しなくなってしまうのも事実です。いかに選手として、そして監督として、そういった環境の中で仕事をするのが難しいかというのは、みなさんも想像がつくのではないかと思います。

我々はここ4シーズンの中で、決して大きな移籍金を選手に投資して、チームを編成してきたわけではありません。J2でブレーしていた駒井選手であったり、清水でプレーしていた高木選手であったり、あるいは仙台で決してレギュラーではなかった武藤選手だったりを獲得して、我々は戦ってきました。

我々のチーム編成の仕方、それによるクラブの経営的な安定を見れば、浦和レッズは非常に素晴らしい仕事をしていると言ってもいいだろうと思います。ただ、それに対して、浦和レッズがお金をたくさんばらまいて、選手を集めて結果を残しているというふうな捉え方をされることについて、それは事実ではないと思っています。

我々のチームは年々、選手たち、そしてチームが日々努力していく中で強くなりました。それは私自身、監督としても大きなリスペクトを持てるし、見ている方々もチームのがんばり、日々の積み重ねの中でのレベルアップを評価していいのではないかと思います。

浦和の選手になると、あるいは浦和のユニフォームを着ると、選手のクオリティーが高いからこういうサッカーができる、あるいは浦和は質の高い選手が多いから強いんだ、そういう言われ方をすると思いますが、決してそうではないということです。J2から来ている選手もいて、ユース上がりの3年目の選手もいます。ただ、彼らのような選手たちでも、しっかりと日々努力することによって、日々チームとして自分たちの戦い方を洗練していく上で、必ず強いチームになれます。それは、いかに日々の仕事の中でみんなが努力しているかです。

日本のサッカーの中でチーム編成の中でどういうお金が動いているかという話は、なかなか見えない部分があるのかもしれませんけど、そういったことはみなさんが厳しい目で見られてもいいのかなと思います。

たとえば、セレッソは非常に大きなお金を投資して選手を補強しながらJ2に落ちてしまった、あるいはそこから抜け出せないでいます。ジェフ千葉に関しては、毎年大きく選手を入れ替えるチーム編成を行っていますが、それでもなかなかJ2から上がってこれません。どういうお金を使い、どういうチーム編成をして、どういうプロセスを踏んでチームを作り上げていくのかというのは短期的なもの、長期的なものと、いろいろな見方があると思いますけど、そういう見方をしていく中でサッカーを見ていく、あるいは評価していくというのも非常に面白い視点だと思います。

日本のサッカーがこれからもっと前に進んでいくためには、いろいろな視点でサッカーを評価し、厳しい目で見ていく、そしてサッカーの現場に従事する一人ひとりが責任を持って仕事をしなければいけません。

日本人の選手をもっと評価していいと私は思います。外国籍選手に対する日本人の方々の評価は非常に高いと思いますけど、日本にも十分にその質に値する選手たちが十分にいると思います。

レッズもズラタン選手がプレーしていますけど、それ以外の選手はほぼ日本人の選手だけです。そういった意味で考えれば、他のチームは外国籍選手に頼るサッカーが多いと思いますけど、日本人の選手だけでも十分にJリーグの中で戦っていけるというのは我々自身が証明していると思いますし、そういう結果で我々は日本のサッカーの方向性を示していきたいと思っています。私がかつて指導した選手たちも、J1、J2のいろいろなクラブでプレーしていますけど、そういう選手たちが今後も活躍していく姿を見られるのは指導者としてうれしいことです。

磐田は非常に伝統のある素晴らしいクラブで、素晴らしい監督さんのいるチームです。残り1試合ですけど、J1に残ることを心から願っています。私がまだオーストリアにいたころ、オシムさんが千葉の監督をしているときに、オシムさんからは「磐田は非常に素晴らしいプレーをしている、素晴らしいチーム」ということを聞いていました。当時の磐田は非常に素晴らしいサッカーをする、非常に強いチームだと聞いていましたが、その伝統あるジュビロ磐田が必ずJ1に残って、来年も戦えることを私は心から願っています。

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