シーズンはまだ終わらず。指揮官に、現実的な戦いを求む【島崎英純】2016Jリーグ1stステージ16節・サンフレッチェ広島戦レビュー

■指揮官の出した答え

今季のキャンプから取り組んできたアグレッシブなスタイルで臨む。それがチームの出した答えだった。1トップの興梠慎三、2シャドーの武藤雄樹、梅崎司が前線からプレス&チェイスを仕掛け、サイドアタッカーの関根貴大&宇賀神友弥が高く張って1対1勝負に挑む。ダブルボランチの阿部勇樹と駒井善成はフレキシブルなポジショニングでビルドアップを機能させ、バックラインの遠藤航、槙野智章、森脇良太が相手攻撃陣を監視しながら自らもアタックに関与する。GK西川周作がハイテンポにパス配給してフィールドプレーヤー化するのはもはや定形だ。

ただ、スタメンの人選には指揮官の苦悩の跡がうかがえた。ふくらはぎに違和感を覚えていた柏木陽介が先発から外れ、李忠成もベンチスタート。6月11日のJリーグ1stステージ第15節・鹿島アントラーズ戦から続く中2日、もしくは中3日の連戦でチームコンディションは大きく下降し、万全の状態で臨める選手はほぼおらず、鹿島戦はほぼベストメンバーで完敗し、普段はバックアップに控える駒井、梅崎、ズラタン、石原直樹、加賀健一らが抜擢された前節のガンバ大阪戦も落として連敗を喫した。

アウェーでの連戦となることで大阪から広島へ移動し敵地に滞在した2日間は、ほぼコンディション調整に費やすしかなかった。ミニゲームなどの実戦メニューは一度も行わず、心身の回復を目指して静かに時を待ったが、蓋を開けてみれば、やはりミハイロ・ペトロヴィッチ監督は選手たちに理想の体現を求めた。

序盤の浦和は素晴らしい動きを見せた。サンフレッチェ広島の面々を自陣に留め、ハイプレッシャーからの高速攻守転換でショートカウンターを発動し、何度も広島ゴールへ迫った。6分に中央エリアをブレイクされてFWピーター・ウタカにスルーパスを通され、柴崎晃誠に先制点を許しても戦意は保ったまま。26分に武藤のフィードボールを相手DFがヘディングでクリアしたこぼれ球を関根が拾ってゴールゲットし同点に追いつくと、40分にはペナルティアーク付近で森脇からパスを受けた宇賀神が鋭い振り足でゴール左隅にシュートを突き刺し、逆転に成功する。

前へ、前へ。推進力の高い浦和本来のプレースタイルを貫徹した選手たちは一気呵成にホームチームを追い込み、久しぶりにストロングポイントを標榜できたかもしれない。だが、連戦で蓄積させてきた心身のダメージはそう簡単に霧散できない。徐々に蝕まれる体力と知力を冷静に感じ取り、逆転を果たした時点でセカンドプランへ移行する。これが厳しい現状に直面するチームの、勝利への最善策だったのかもしれない。

■あくまで貫く己の哲学

ハーフタイム。ペトロヴィッチ監督はビルドアップ構築の手法に変更を加える。試合後に駒井が指揮官の意図を説明してくれた。

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