【無料掲載】2016AFCチャンピオンズリーグ・ラウンド16第1戦・FCソウル戦[ミハイロ・ペトロヴィッチ監督・宇賀神友弥選手][記者会見]

宇賀神友弥「今日の試合はソウルが相手ということで、非常に難しい試合になるということは分かっていました。自分たちは日本を代表するクラブとして、強い意志を持って戦わなければいけないという思いを一人ひとりが持ちながらプレーしたことが、今日の結果につながったと思います。試合を見ていても、自分たちの方が球際で戦っているというプレーがたくさんあったと思いますし、ゴールもみんなの気持ちが乗り移ったゴールだったかなと思います」

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督「宇賀神選手はゴールについてあまり詳しく言わなかったですけど、ああいったシーンでのゴールは練習の中ではよくあります。CKはあまり練習しませんけど、ああいったシーンはよく練習していますし、その中で生まれたゴールだったと思います。宇賀神はクロスと見せかけて、しっかり狙ったシュートを打ってくれたと思います(笑)。

今日は非常に熱いゲームだったと思います。その熱いゲームを横で見ていて、私も暑くなったんですけど、白のシャツが相手チームと被るということで、暑いのにジャケットを着なければいけなくて、余計暑くなりました。先ほど宇賀神選手が言ったように、選手たちは非常に強い気持ち、高いモチベーションでこの試合に臨んでくれたと思います。よく日本人選手は韓国人選手に対して、フィジカル面や球際で負けるというのは、メディアや世間で言われてきたことでした。そういった、みなさんが思っていることを払拭したいという思いを持って、選手たちは球際で戦ってくれたと思いますし、運動量の部分でも非常によく走ってくれたと思います。

残り15分を除く75分については、自分たちが比較的ゲームをコントロールできていたと思います。1─0で勝利しましたけど、内容を見れば2点目、3点目を取って、試合を決定づけなければいけないシーンがあったと思います。1─0で勝利した試合ではありましたけど、我々はまだ前半を戦っただけです。ソウルでのセカンドレグが一週間後に残っています。非常に厳しい試合になるでしょうが、今日、我々が見せたのと同じような戦いをソウルでも見せていきたいと思っています」

Q 得点に関する詳細を?
宇賀神友弥「先ほど監督が言ったように、練習通りです(笑)」

ペトロヴィッチ監督「宇賀神選手がまだいる間に、ひとつの物語をみなさんにお話ししたいと思います。宇賀神選手がユースの頃に遡ります。ユース時代には試合の時、自分でユニフォームを持参しなければいけませんでした。ある時、彼は練習試合で短パンを忘れてしまいました。今は熊本で仕事をしている、当時のユースのGKコーチは、自己管理できていない、忘れ物をしたということで、罰として相手の監督さんと交渉して、スパッツで試合をするように言いました。その試合で彼はスパッツでプレーし、ゴールを決めました。

つい最近のミーティングで、みんながいる前で宇賀神選手に言ったことは『当時にスパッツで試合に出てゴールを決めたが、最近はゴールを決めていないので次の試合はスパッツで出場したらどうか?』と(笑)。

今日の試合で彼が短パンをしっかり履いていたのかどうかは、みなさんには分からないところですし、そういう話があって今日のゴールがあったのかは分かりませんけど、ついこの間、そんな話をしました(笑)」

宇賀神友弥「そろそろ点を取らないと、本当にスパッツで試合をさせられそうだったので、がんばりました(笑)」

Q スパッツのことはわかりませんが、シュートを打った時の狙いは? また、あのシュートは何本打って1本決まるものか?

宇賀神友弥「正直な話をしますと、中に選手がいたので、折り返しました。ただ、ミシャ監督が就任してからの5年間、あの形を練習の中でずっと言われ続けていましたし、自分があそこに動き出して、あそこにパスを出してくれたからこそ、生まれたゴールだったと思います。狙った形ではないので、個人として納得はしていないですけど、あの動きをして、あの形を作れば、10回に1回は入るのではないでしょうか(笑)。動き出したことに意味があったと思います、いいパスが出てきたので」

Q 相手が終盤、長身選手を出して放り込んでくるのは予想していたと思うが、どういう準備をしていたか? 結果的にズラタンを守備に下げてしのいだが、次の試合でも同じような対応をするのか?

ペトロヴィッチ監督「相手が負けていれば、パワープレーに出てくるのは予測していました。過去の試合を見ても、負けている時には高さのある23番を入れて、そこをターゲットに長いボールを放り込んでくることは分かっていました。

今日の試合では、ヘディングの強い那須が出場停止で、永田は膝の状態が完全ではなく、加賀もケガをしている状況でした。そこで今日はブランコ(イリッチ)を控えに入れました。最後にDFを入れる選択肢もありましたが、その前に関根選手が足をつってしまい、3枚目の交代をせざるを得ませんでした。その中で、最後はズラタン選手を23番につけるのは想定内のことでした。

ソウルでの試合でも、相手が高さのある選手を前に入れてパワープレーを仕掛けてくることは考えられます。我々には23番のような、飛び抜けた高さのある選手はいません。そのなかでパワープレーに対し、自分たちがどういう対応をしていくのかは一週間かけて対策を練っていきたいと思っています」

Q 宇賀神選手が先ほど『動き出したことが勝ちだった』と話していた。今、世界を見ても、スルーパスやコンビネーションで相手の裏を突けるチームは少なく、日本ではではミハイロのレッズと風間監督の川崎くらいだが、そのメカニズムについては?

ペトロヴィッチ監督「まず、我々と対戦するチームというのは、比較的守備的な戦術を採ってくることが多いです。そこで我々は、どうやって相手の守備をかいくぐって得点するかを考えています。基本的に、我々が重要視しているのはワイドの広さと縦の深さ。ピッチ上でバランス良くポジションを取ることが非常に大事です。ボールサイドに選手が寄っていってしまい、逆サイドのスペースに選手がいないというのは、サッカーの試合でよく見る光景です。

ボールをいかに動かしながら攻撃を組み立てるかが重要ですが、ボールを持っている選手はいいところを判断するだけです。とても重要なのは、ボールがない選手たちが5人、6人、最初にポジションを取りながら、いかに連動して動き出せるかどうかです。ボールがあるところに見ている人の注目が集まりがちですけど、ボールがないところで選手たちがいかに連動して動いているかが非常に重要です。

動き出しのタイミングもあると思います。そしてどの方向に動くのか、あるいのは動き直すのか、非常に複雑なものが絡み合って成立するものです。それは見ている以上に、やっている選手にとっては難しいものです。そういうものを試合の中で機能させるためには、日々、練習するしかありません。そういう練習で繰り返すことで、試合の中でそれを出せるようになります。

監督として私が狙いとする選手の動きの連動性を、いかに選手がそのように動くよう仕向けた練習をするか。それが、私が頭の中で描いているものを落とし込んでいくことにつながります。それも相手の状況によって、こうだったらこう、というのを選手に考えさせながらプレーさせなければいけません。複数の人間が同じイメージを共有しながら動いていくのは、繰り返し反復しなければできないことです。

おっしゃる通り、川崎も選手がポジションをとりながら連動しながらローテーションしていくような動きをするチームです。川崎も、狙いを持ったオフの動きがたくさんあります。

世界的に見れば、バイエルン・ミュンヘンやバルセロナのようなチームのプレー映像を見ることもあります。ただ、スカウティング映像の中では、違うチーム、自分たちが次に対戦するチームの映像を見ることもあります。そのなかで次に対戦する相手が自分たちと違う立ち位置にいると、『なんでそこに選手がいないんだ』と、違うチームの話なのに怒ってしまうこともあるくらいです。その時には通訳の大輔(杉浦コーチ)に、『これは違うチームなのだから怒らないでください』となだめられることもあります。パッと見ただけでは分かりづらい、非常に複雑なものが絡み合った、連動性のある、複数の選手が動く中での崩しです。

今日の最後、ソウルがしてきたような、高い選手を前に置いて長いボールを蹴ってセカンドボールを拾って、シュートを打つような戦い方の方が、やり方としては簡単でしょうし、比較的能力の高い選手を前に揃えることができるなら、短期的に成功させることも可能だと思います。

背の高い選手を前に入れて、ボンボン長いボールを蹴るサッカーは短期的に成功することもあるでしょう。最後は結果だと言われるでしょうし、それもひとつのサッカーのやり方であることは間違いありません。

世界的に見れば、バルセロナやバイエルン・ミュンヘンの選手の身長はそんなに高くはありません。ただ、彼らには自信と技術が溢れています。だからこそ、相手に高さがあっても、非常にコンパクトなラインを敷いて、相手をペナルティエリアに近づけない守備のやり方をします。そのやり方で対応できることを彼らは示していると思います。

もちろん、フィジカル的な強さもそうした戦いの中で求められるでしょう。70分を過ぎてから、ボールをクリアした後にラインを一気に30メートル押し上げるパワーがあるかどうか。あるいは、長いボールを簡単に蹴らせないために、ボールの出所に対してしっかりプレッシャーをかけられるのか。そうしたことができるのか、自分のチームの能力として把握していかなければいけません。

我々もディフェンスラインをコンパクトに保ちながら戦います。それをもっと徹底することが必要かもしれません。私はもし監督として残れるのであれば、そうしたところに働きかけていきたいと思っています」

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