【福田正博FUKUDA’S EYE】2015Jリーグ1stステージ第14節・鳥栖戦&第10節・柏戦レビュー(2015/6/5)

ミシャの度量の大きさを感じる

まず、先週のサガン鳥栖戦に関して。鳥栖は必ず試合序盤からフルパワーで襲いかかる。浦和レッズはその点を十分に認識していて、最初は慎重な戦いを選択していたと思う。GKの西川周作を含めてシンプルなロングフィードを多用していたのは、その表れだろう。今季の鳥栖は前半に体力を消耗させ、後半に息切れする傾向もある。それもあって、浦和は慌てることなく、失点をしないように戦おうとしていたように見えた。FKから水沼宏太に先制点を決められてしまっても動揺が見られなかったのは、後半のギアチェンジを想定していたからだろう。

ただ、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は前半のチームの戦いぶりに不満の意を述べていた。これもまた、指揮官としては当然の振る舞いだろう。鳥栖は22分に吉田豊が2枚目のイエローカードで退場処分を下されて10人での戦いを強いられていた。こうなれば浦和は後半にギアチェンジするのではなく、数的優位に乗じて早めに試合を決めてしまっても良かった。

ペトロヴィッチ監督としては、今はチーム全体の雰囲気を締めているのではないか。これまでの数々の経験から、どんな試合でも相手をリスペクトし、油断せずに戦うことを選手に言い聞かせている。それがこのような厳しい見方に繋がっていると思うし、それは監督自身の今季に懸ける思いの表れだとも思う。監督は第13節の鹿島アントラーズ戦の後も勝利しながらチームの出来を厳しく評価していた。それはチームに良い意味での緊張感を与え、選手の集中を切らさないための所作だと思う。最近、浦和の選手たちは監督の指導に加えて自分たちでプレー内容を応用させているという発言をしている。当然そのような状況もあるだろう。しかし根底にはその選手の判断を許容している監督の裁量が大きく作用している。あえて選手に自由を与え、考える能力を植え付け、そのうえであまりにもチーム戦術から逸脱すれば、監督はそれをコントロールするだろう。今のペトロヴィッチ監督からはそれくらいの余裕が感じられるし、油断なく物事を進められているとも思う。

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