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【W杯コラム】ブラジルワールドカップを見て – ①総括編(文:西部謙司)2014/07/18

■ドイツ優勝の意味するもの

 優勝はドイツでした。チームとしての総合力が最も高く、順当な結果だったように思います。決勝のアルゼンチン戦とアルジェリア戦が延長、ガーナと2-2で引き分けでしたが、どの試合もさほど危なげない横綱相撲でした。

 ドイツのプレースタイルは前回優勝のスペインと共通点があります。2000年のベッケンバウアーの大号令により育成改革がスタート、ザマーが総責任者となって才能の掘り起こしにかかりました。その成果は前回大会から出始め、エジル、ミュラー、ケディラ、クロース、ノイアーらが経験を積んだ今回にピークを迎えました。育成システムを整備したことで移民系選手が台頭したのは、フランスの前例を思い起こさせます。

 フランスの場合、移民系の人々は都市郊外に集中して住んでいて、有能な選手は家賃が安くて仕事もある都市郊外からしか輩出しないとまでいわれるようになりました。都市郊外には治安の良くない場所も多く、若くして大金を手にする選手の素行の悪さが問題になっていきました。前回大会のスキャンダルは、悪い意味での集大成でした。

 ドイツの事情はよく知らないので、フランスのような問題がこの先起こるかどうかはわかりません。ただ、今大会のドイツが素晴らしかったからといって、未来もバラ色とはかぎらないでしょう。

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