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【トピックス】自由な発想を引き出す、クラブの本気度 〜U-23マーケティング部 後編・ミーティング編〜

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「アイデア講義」は、ニーズを探り、解決策を見つけていく実践的な手法を山﨑蓮さん(写真右)の主導で学んでいった。

16歳から23歳までの若者・学生たちによる地域活性化プロジェクト「U-23マーケティング部」がこのたび発足し、1月14日に山形市・Q1(きゅういち)で第1回の活動が行われた。
前回は記者会見の模様をお伝えしたが、今回は、その直後に行われた第1回のミーティングの模様をレポートする。

3階で行われた記者会見から場所を2階に移し、ミーティングがメディアに公開されたのは14時。事前のスケジュールと若干前後する部分あったが、濃密で刺激的な3時間だった。

参加したのは会場に25人、オンラインで17人。会場の参加者たちはひとテーブル5人程度のグループになり、オンラインは3つのグループに分かれ、それぞれ仲介のクラブスタッフが付いた。

相田健太郎社長からはモンテディオ山形の成り立ちやチーム、クラブとしての現状、U-23マーケティング部の役割などについての説明があった。

「アイデア講義」では、営業部マーケティング担当・山﨑蓮さんが主導し、新たなアイデアを生み出す手法をグループごとに実践的に学んだ。

「『シャレン!』はオフ・ザ・ピッチのパスサッカー」。記念すべき最初のスペシャル講師はJリーグ・鈴木順さん。地域の豊かな“生態系”を作ることが、結果として自分たちに還ってくると説いた。

公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)・鈴木順さんの講話では、Jリーグが取り組んでいる「シャレン!」(Jリーグ社会連携活動)についての紹介や、「僕は誰が笑顔になるのかを考えていく」、「ドリブルでシュートまでたどりつけるかもしれないけども、みんなでパスを回してみんなでゴールするほうが成長につながる」など、社会連携の基本的な考え方に関する内容が語られた。

その他、南秀仁選手と山田拓巳選手からのメッセージビデオも流された。

■「この場所は失敗していい場所」

相田健太郎社長は記者会見の中で、前年の取り組みを例に出し、「一緒に取り組んでいくと、我々に欠けているものを若い人たちがいろいろ考えてくれたり、形にしていただいたり、そういったことがすごくあるなと、実りあることが非常に多いなというのが印象としてすごくありました」と、若い人たちの発想の豊かさに大きな期待を寄せていた。

ただし、若い人たちをただ集めてアイディアを出し合うだけであれば、このプロジェクトの成功は難しく、それ以前に、このプロジェクト自体が立ち上げられることもなかっただろう。山﨑さんも「思いつきでできたわけではございません」と参加者たちに説明している。

このプロジェクトの成否の決め手は、参加者たちのこれまでにない発想を引き出すことにある。それを実現させるため、クラブが本気で取り組んでいることがさまざまな場面で感じ取れた。多岐にわたるその中から2つ挙げるなら、「失敗の許容」と「ノウハウ、メソッドの提供」だ。

山﨑さんは「皆さん緊張してますし、僕らも緊張してるので、リラックスして、楽しくやっていきましょう」という言葉から始めた。「堅いことをやりたいわけじゃないので、ヘラヘラしてていいですから、リラックスして参加してください」は相田社長の冒頭のあいさつ。緊張した状態や誰かに遠慮した状態では、アイディアが埋もれてしまいかねない。

相田社長は「いまから言う3つのことをよーく守ってやってほしい」と前置きしたうえで、次のように挙げた。
① Let’s get excited!(ウキウキしましょう)
② Respevt each other(互いにリスペクトしてください)
③ Positive attitude bring succsess(ポジティブな考えは成功をもたらします)

そのうえで、「この場所は失敗していい場所だし、僕が自分の人生を考えても2割ぐらいはうまくいかなかったし、8割は失敗だと思ってください。人よりもたくさんいいことをやりたいんだったら、たくさん失敗するしかないので、ウキウキしながら、リスペクトして、ポジティブに考えながら1年間やっていきましょう」と話を締めくくった。

それに先立って話をした山﨑さんも、「為せば成る」をスローガンとして示しながら、「『失敗したらどうしよう? 』と思う必要はないです。僕も毎日失敗してます。でも、恐れずにやることが大事」「うまくいかないことが当たり前なんです。失敗しても、反省してまた次やればいい」と語りかけた。

グループごとに考えを出し合いながら付箋紙に必要事項を記入していく。この日が初日とは思えないほど、最後のほうではリラックスした雰囲気となり、いい連携が見られた。

■クラブのノウハウ、メソッドを惜しまず注入

今回のミーティングのもっとも核となったものが「アイデア講義」。価値のあるサービスをどう生み出していくか、そのベーシックな手法を参加者たちは学んだ。

まずは、社会構造の変化や価値観の変化など、身の回りで起きている時流(物価が上がった、キャッシュレス化が進んだ、など)を思いつくまま挙げていき、ピンクの付箋紙1枚に1項目ずつ書き入れる。
それを系統ごとにまとめたり、それがなぜ起きているのか遡ったりしながら整理する。
どんなユーザーが想像し、これを黄色の付箋紙に記入する。
時流と人を組み合わせ、その解決策(ソリューション)を青の付箋紙に書き出していく。
最後に、グループからひとりずつ前に出て発表する。どんな市場があり、どんな時流になっていて、誰がユーザーになり、そのニーズに応えるためにどんなソリューションがあるのか。

青い付箋紙にはソリューション(解決策)を記入していく。ユニークなアイデアが数多く生まれた。

ソリューションでは、「都会でキャンプをする」、「同じテイストの服が好きな人同士で服の貸し借りができるサービス」など、ユニークな結論に到達するグループも多かった。グループごとのディスカッションを重ねるうちに、最初は探りながら発言していた参加者たちの声が大きくなっていくなど、長い時間ではなかったが場に慣れていく様子も見受けられた。人によって発言の多い、少ないはあるが、全体としては積極的で活発な話し合いが行われていたように見えた。

最後にグループごとの発表。この時間には外も暗くなっていた。

せっかくいいアイデアを持っていても、それをアウトプットできなければ世に存在しないことになる。このミーティングでは、コロナ禍以降も順調に営業の業績を上げているモンテディオ山形がそのメソッドを惜しまず提供する姿勢がある。参加者たちの質のいいアウトプットが今後も期待できそうだと感じた。

先の記者会見で相田社長は、U-23マーケティング部の活動では、ノルマなど数値目標を課さないことを表明している。全責任をクラブ側が持つことで、参加者たちの潜在的な可能性を最大限に引き出そうとしている。さらに、将来的に社会に貢献できる人材として育てようとの相当な覚悟が感じられた。

(文・写真=佐藤円)

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