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【ランダムフォーカス盤外編】レアルに勝った監督~石﨑信弘監督

12月の某日、山形市内某所にて、モンテディオ番のメディア陣による石﨑信弘監督送別会が行われました。半ばプライベートな場でのエピソードではありますが、番外編ならぬ「盤外編」としてお届けしたいと思います。

送別会には、山形のスポーツジャーナリズムを牽引する新聞記者、テレビ・ラジオのキャスター、アナウンサー、ディレクター、フォトグラファーなどが勢揃いしました。ドライな言い方をすれば、地元のメディアにとって、山形を離れてしまう石﨑監督と、いまさら顔をつないでおくビジネス上のメリットはないはず。おそらくは誰もが個人として、石崎監督への“最後の囲み取材” をしたいという思いを胸に、多忙なスケジュールをやりくりして集まったのだろうと思います。

しかし、当の石﨑監督はもちろん、そんなセンチメンタルな空気に染まったりはしません。いつもの石﨑節で何度も一同を笑わせました。

「ワシ、解説もいけるよなあ?」

先だってのJ1昇格プレーオフ(C大阪vs岡山)に、ゲスト解説者として招かれた石崎監督。長いサッカーキャリアの中で、あれが初めての解説経験だったそうです。「もっと毒を吐くかと期待していましたよ」という声がかかると「いやあ、メインの解説は川勝(良一)さんじゃったしな。あれ、どこで喋ったらいいのか、タイミングが難しいしなあ」と腕組み。それでも、「また解説やらせてくれんかな」と、初解説に手応えを感じていたようです。

また、先日のFIFAクラブワールドカップ決勝戦(レアル・マドリードvs鹿島)にも触れていました。

「鹿島ががんばってたけどな、日本のクラブを率いてレアルに勝った監督はワシだけじゃ!」

ワイングラスを片手にドヤ顔! そう、石﨑監督は2005年に東京ヴェルディ1969(当時)のコーチを務めていましたが、アルディレス監督の退任に伴い一時的に監督代行としてチームを率いました。そのタイミングでレアル・マドリードとの国際親善試合が行われ、今回レアルの監督として来日したジダンをはじめ、ベッカム、カシージャス、ロベルト・カルロスといった錚々たるメンバーを相手に3−0と勝利したのです。しかし、「点を取ったのは誰ですか?」と尋ねると、「んー?忘れた(笑)」とやっぱり石﨑節。「ワシントンがいたのは覚えている」と話しましたが、実際、得点者は小林大悟、ワシントン、山田卓也の3人だったようです。こんなJリーグの生き字引みたいな人の話を、もっとディープに聞いておかなかったことが、返す返すも悔やまれます。

くだけた席の囲み取材の話題はサッカーから遠く離れたところまでも飛んで弾みに弾み、石崎監督の人望の厚さを改めて感じた夜でした。

58歳になるまで解説の仕事をしたことがないほど、ずっとプロサッカーの現場で指導を続けて来た人は、「解説もやれるなあ」とうそぶいてはいましたが、そのすっとぼけの横顔を見ながら、やはり現場を離れることはないのではないかとも感じました。

「まあ、もしどこかに決まったら、トガッシー(山形の広報・冨樫氏)が発表してくれるじゃろ」

またどこかで、取材ができる日まで。石崎監督、ひとまずお疲れさまでした。

文・写真:頼野亜唯子

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