【島崎英純】2023Jリーグ第29節/浦和レッズvs横浜FC・試合レビュー『尽きていた体力。痛恨のドロー。それでも全てを諦めてはならない』

©Yuichiro Okinaga

整理された戦略

試合序盤からの緩慢な動きが気になった。ボールへの反応が鈍い浦和レッズの選手たちはアウェーの横浜FCにポゼッションを握られ、自陣に押し留められる時間が長く続いた。

横浜FCは独特な3-4-2-1システムを用いるチームだ。四方田修平監督は北海道コンサドーレ札幌のヘッドコーチを務めていた時代にミハイロ・ペトロヴィッチ監督の薫陶を受けているが、実際に現在の横浜FCで実践しているシステムメソッドはかなり守備に重きを置いたもので、好戦的な『ミシャ式』とは一線を画する。特に前線からの緻密なプレスワーク、敵陣での局面に人数を掛ける守備、そして自陣での一転したワイドディフェンスブロックと、様々なシチュエーション、ボールが置かれている場所、相手のプレー動向に合わせて、その守備組織を変化させていく。

前線守備に関しては1トップのマルセロ・ヒアンが最前線に張る中で、シャドーのカプリーニと小川慶治朗が敵陣中央エリアを埋めて浦和のビルドアップコースを遮断した。特にアンカー役を務める岩尾憲にカプリーニ、もしくはマルセロが密着する形は効果的で、浦和の前進コースを効果的に阻んでいた。またサイドエリアもサイドアタッカーの林幸多郎と山根永遠がしっかりと蓋を閉めて酒井宏樹と荻原拓也の浦和サイドバックが縦へ進出するコースを埋めた。そしてインサイドハーフ気味にプレーする伊藤敦樹とトップ下の早川隼平はダブルボランチの井上潮音とユーリ・ララが十全に監視している。横浜FCのバックラインは一層秩序的だ。右の安居海渡には吉野恭平、左の小泉佳穂には岩武克弥の両ストッパーが付き、リベロのンドカ・ボニフェイスは当然1トップのブライアン・リンセンの自由を奪っていた。浦和の4-2-3-1に対してミスマッチ状況を生まない横浜FCのディフェンスワークは秀逸で、浦和は敵陣奥深くへほとんど侵入できず、相手の様子をうかがう横パスやギャンブル的要素の高い前線フィードに終始した。

横浜FCのディフェンスワークは確かに堅牢だった。しかし、それ以前に浦和の選手たちのプレーが冴えない点が非常に気になった。ボール奪取争いで相手に劣り、パスアングルを生み出す予備動作も少ない。これでは円滑なビルドアップは構築できず、逆に相手のパスワークも分断できない。浦和の4-2-3-1、横浜FCの3-4-2-1というシステム上のギャップが試合状況を左右する以前に、今節の浦和はチーム全体の減退感が顕著で、単純に球際勝負で劣勢を強いられた。

【2023Jリーグ第29節/浦和レッズvs横浜FC・スターティングメンバー】

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