【島崎英純】2023Jリーグ第27節/浦和レッズvs京都サンガ・試合レビュー『絶妙な試合コントロールも、決定力不足に泣く痛恨のドロー』

©Yuichiro Okinaga

ポジティブな変化

京都サンガのプレスワークが強烈なことは事前に承知済み。安易なビルドアップで相手にボールを狩られれば深刻な状況に陥ることは容易に想定できた中で、前半の浦和レッズはポゼッション率を求めず、あえて相手にボールを持たせて自陣へ引き込む対策を採ったように見えた。

日本代表への招集でベルギー開催のトルコ代表戦に出場したMF伊藤敦樹がベンチスタートとなったが、代わりに先発した安居海渡、そして岩尾憲のダブルボランチは良好な関係性を見せた。目を引いたのは、このふたりが極力バックラインへ降りなかったことだ。最近の浦和は前線3トップを敷く相手に対して、ボランチがミドルエリアに定位したパスワークを用いるようになった。YBCルヴァンカップ・プライムステージ準々決勝のガンバ大阪は3トップを用いるチームで、この2試合は格好のモデルケースとなり、ボランチが後方に吸収されて後傾にならないことでミドルエリアのパスコースを数多く創出させる形を実践した。

マチェイ・スコルジャ監督体制に移り変わってからの浦和はサイドエリアからのビルドアップ構築を最優先とし、味方サイドバックのポジションを敵陣側へ押し上げるためにアンカー役のボランチが味方CBの間に降りることで陣形を整えてきた。しかし対戦相手の研究と対策に遭ってからはサイドエリアのパスコースを激しく遮断されて手詰まりに陥るケースが頻発した。チームとしては今後のステップアップのためにも新たなる戦略を練らねばならない必要性に迫られたが、ダブルボランチのミドルエリア定位という新たなる戦略によって他エリアからのビルドアップスキームを見出す手法を見出した。

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