【無料掲載】2016Jリーグ2ndステージ第17節・横浜F・マリノス戦[ミハイロ・ペトロヴィッチ][監督コメント]

○ミハイロ・ペトロヴィッチ監督
まずは、私がここ(会見場)に来た時に拍手で迎えていただいて、ありがとうございます。なかなか慣れませんが、ようやく年間1位を取ることができました。今日のゲームのマリノス戦は非常に難しいゲームになると思っていた。最近は若い選手を多く起用し、運動量とハングリーさ、より規律を持って戦っているチームだし、最近のマリノスのゲームを見て、簡単ではないと思っていた。

今日のゲームは他会場の結果を気にすることなく、勝利するために試合に入った。前半は相手コートで激しくプレッシャーをかけてボールを奪う、そういう狙いとする形は出せたと思う。ただ、相手にプレッシャーをかけてボールを奪うところまではうまくいったが、その後のショートカウンターの精度が良くなかった。ボールを持ってから失うまでが少し早かったし、精度が足りなかった。ゴール前のアイデア、奪ってからの質が足りなかった前半だった。ただ、今日は選手たちも平常心を持って戦うという気持ちが強かったと思うが、満員のスタジアムで絶対に勝たないといけないゲームだったので、選手たちは緊張があったのか、慎重だったの、普段よりも柔軟さやアイデアが足りない前半だった。

相手のペナルティエリア付近、あるいは侵入した後で、ラストパスの精度は前半は特に良くなかった。今日はプレッシャーがかなりかかった中で、緊張感からくる精度の低さだったと捉えたい。

ハーフタイムに選手に言ったのは、ボールを奪った後の質を上げること、ゴール前での落ち着きを出していこうということ。後半も前半と同じく、我々が主導権を握りながら相手を押し込む展開が続いていたと思うし、その中でいくつかチャンスはあったが、決めきれない展開で0−0で進んでいった。相手は少ないチャンスの中で、齋藤学選手が放ったシュート、それは周作がよく止めてくれた。ああいった際どいシュートがあるなかでも、選手たちは落ち着いてゲームを進めてくれたと思う。1−0でリードを奪った後、追加点を奪わないといけないシーンが何度かあったと思うが、そういう中で同点に追いつかれた。本来ならああいった失点はしてはいけない。相手にほぼチャンスはなかったと思うが、少ないチャンスを決められてしまうというのは今後の我々の戦いであってはならない。しっかり分析し、今後にその反省を生かさないといけない。今日のゲームでああいうことが起こったのは、私は前向きに捉えたい。

今シーズン、74ポイントを取って年間1位を勝ち取ってくれた選手に私はとても感謝している。本当に心から彼らを称賛したい。昨シーズンは天皇杯決勝を戦い、非常に短いオフの後に今シーズンはスタートした。非常に厳しい日程で戦ってきた、Jリーグで最も厳しい日程で戦ったチームの一つだと思うが、その中で選手たちは素晴らしい内容と結果のゲームをもたらしてくれた。我々、浦和レッズが年間1位に値するプレーの内容と結果を選手たちは示してくれたと思う。彼らに大きな感謝をしたい。そして、決して簡単ではなかった今シーズンで最後まで後押ししてくれたサポーターのみなさんに感謝したい。今シーズン、我々は素晴らしいモザイク絵を完成させることができた。その中心にあるのは選手とサポーターであると思う。私、クラブ、その他のスタッフというのは、モザイク絵の一部だと思う。選手、サポーターが作り上げてくれた素晴らしい絵に感謝したいし、それを見てそれを幸せだと思う。この成功の一番大きなファクターは選手とサポーターです。。

Q まだチャンピオンシップが残っているが、監督の心の中ではレッズが真のチャンピオンだと思っているか?

非常にミックスされた気持ちだ。年間34試合を戦い、74ポイントを取ったというのは本当に素晴らしい結果だ。それで優勝できたこと、年間勝点1位を取れたことというのはとてもうれしいが、我々にはまだチャンピオンシップが残っている。そういう意味では、我々はまだ「Jリーグチャンピオンシップ」とは言えない。

気持ちとしては、うれしい部分とまだ終わっていないと思う部分の両方がある。本来であれば、どこかのお店にいって、メダルを勝って、金メッキを付けて選手の首に一人ひとりかけてあげたい、それくらいの気持ちだ。ただ、わたしがそれをしなかったのは、まだ終わっていないという思いもあるからだ。我々はまだ終わっていない。決勝2試合に気持ちを持って以下兄といけない。

今年はACLでも非常に素晴らしい戦いをして、残念ながら際どいところでPKに負けてしまった。ただ、その後にルヴァンカップ決勝を戦い、我々がリードを手にすることができた。リーグ戦では年間優勝を勝ち取った。本来であれば手放しに喜んでいいくらい、非常に素晴シーズンだが、まだ2つ残っているので、どこかその部分が頭から離れない今日の試合の終わりだった。それは私だけでなく、選手も同じだと思う。

Q 罠が多い難しい試合だったと思うが、チーム、選手の成長をどのように感じているのか?

なぜ我々が非常に安定した戦いを見せ続けられるのか、なぜ我々が大事なゲームで結果を出すことができたのか、私は2つの理由を見つけることができる。

過去2シーズン、私は3シーズンと言っていいと思いますが、優勝に手をかけながら、それを手にできないシーズンが続いた。本来ならば、そういったシーズンが2年続けば、その次は結果が少し落ちてしまうのがサッカーの世界でよくあると思う。ただ、選手たちは、来年こそはという思いで戦ってくれた。その強い思いを持って戦った昨シーズンも、残念ながらガンバとのチャンピオンシップ準決勝で負けるという悔しい結果に終わった。

それでも選手たちは今シーズン、さらに強い気持ちを持って、今年こそと戦ってくれた。厳しい結果をつきつけられながらも、そこで倒れることなく立ち上がり、さらに強くなって戻ってきた。だからこそ、我々は強くなった。選手たちの諦めない気持ち、過去の経験が今シーズンの安定感を勝負どころでの強さにつながったと思う。

我々は世間やメディアで「勝負弱い浦和」「失速の浦和」というレッテルを張られてきた。勝者が称賛されるのはわかるが、我々はほとんどの戦いで内容で上回ってきた。でも、結果が伴わないと認めてもらえない。勝負弱い、あるいは失速というレッテルを絶対に剥がすという強い思いも、間違いなく選手たちのモチベーションにつながったはずだ。

今日は引き分けで終わったが、もし川崎が勝っていたらという人もいるかもしれない。浦和は勝負弱いと言われていたかもしれない。タラレバの話になるが、もしそういう書かれ方、言われ方をするなら、それもまた我々のモチベーションになるだろう。過去の結果、過去のレッテルが我々を強くしたのは間違いない。

Q モチベーションの話が出たが、メンタルを強くするのは技術、戦術を向上させるより難しいのでは?

メンタルの成長を促すのは簡単ではないし、今日明日でできることではない。長いプロセスを踏むことで選手は成長していくと思う。我々、今日も6万人近くのサポーターが入っていたが、そういった中でプレーするのは決して簡単なことではない。大観衆の中で負けて年間1位を取れなかったらどうしようと、負けたらどうしようという思いが出てくることもあり得るだろう。

私は選手たちに自信を植え付けるために、バルセロナ、レアル、バイエルンのようなチームの映像を見せることが多いが、彼らがいかに自信をもってプレーしているかといったところを選手たちに見せているし、そういうことも日々の選手たちの気持ちの強さにつながっていると思う。

プレッシャーのかかった場面で力を発揮することが苦手の選手が多いのではないかと私は思う。プレッシャーのかかったところで、強い気持ちと冷静さをもって戦えるか。それは選手自身が見つけていかないといけないが、それには自信と経験が必要だと思う。毎年経験してきたこと、積み重ねてきたものが今の選手たちのメンタルの成長につながっていると思う。

選手によく言うのは、1点取ってあとは守るというのではく、1点を取ったら2点目を取る、3点目を取る、4点目を取る、5点目を取る、相手を叩きのめせるならとことん叩くというメンタリティがなければダメだということだ。自分たちがプレッシャーの中で戦い、勝者になるにはどうしたらいいのか、私は日々のミーティングで積み重ねてきた。それが今、少しずつ選手の成長につながっていると思う。

日本人選手をもっとしっかり評価する、それが日本サッカーで大事だと思う。特に外国人選手への強いあこがれ、あるいはそこにアイドルを見つけることが多いと思うが、日本人の中にも十分それに値する選手はいると思う。日本人選手への評価をしっかり見直すべきだと思う。

日本人に合うサッカーをもう少し考えて、そういう方向に進んでいかないといけない。日本人の平均身長は175センチ、たとえばドイツは180センチ以上だとして、体格差がある中でフィジカルを強調するサッカーをしようと思ったら、海外の体格に勝るチームには勝てないだろう。日本人選手には素晴らしい技術、アジリティ、スピードがあるので、そういうものを生かしながら戦うのが日本人のサッカーの良さだと思う。そういう方向性を今後考えていく必要があると思うし、日本がどういう戦い方をするのか、日本人に合うサッカーは何なのかは考える余地があると思う。

代表チームはこれからオマーンとの練習試合があるけど、ここ最近見ていると練習試合で強豪国と戦うことがなかなかない。私はヨーロッパにいって、強いチームと戦うことで日本と海外のトップレベルの差がはっきりと見られると思う。あるいは、Jリーグでプレーしている選手を見極めたいのなら、代表対Jリーグのあるクラブや先発チームというものを比較するのもおもしろいと思う。

来シーズン、おそらくJリーグも外国人枠が広がると思うが、外国人選手は日本人選手よりベターなプレーをしなければいけないと思う。ベターな質でなければいけないし、そうでなければ日本人がプレーするべきだと思う。日本にくる外国人選手の質はもっと考えないといけない。イングランドだったら、代表キャップがどれくらいといった縛りがあるが、日本もそういったルールを考えていくべきだと思う。外国人というだけで、やたらめったら連れてくるような状況になれば、日本人選手がプレーする機会も奪われるし、若い選手たちの出場機会も奪われると思う。ただ、質の高い外国人選手がくれば、日本人選手もそこから学ぶことができると思うし、リーグのレベルも上がるだろう。

日本にはオーガナイズされた素晴らしいリーグがある。リーグがさらに発展していくためには、各国で代表キャップがある質の高い選手がプレーすべきだと思う。そのことによって、日本のリーグはさらに発展して、レベルが上がっていくと感じる。それがJリーグで重要なことだと思う。

名前でサッカーするわけではない。金沢ではロマーリオ選手の息子がプレーしているという話を聞いたが、誰でもいいから外国人ならプレーできるのかといえば、そうではないと思う。しっかりとした目で外国人選手を獲得することが、今後のJリーグの課題になるのではないかと思う。

あとは普段あまりJリーグを見ない、一般のサッカーのファンの方もやはり、名前で興味を持つという視点でサッカーを見ないことが大事かなと思う。なぜそういう話をするのかと思う方も多いと思うが、私の言っていることは間違いないと思う。

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