【無料掲載】2016Jリーグ2ndステージ第2節・柏レイソル戦[ミハイロ・ペトロヴィッチ監督][監督コメント]

○ミハイロ・ペトロヴィッチ監督
私は今日のチームの出来には満足していません。不満に思うのは特に前半、我々の強さである後ろからの組み立ての部分がうまくできていませんでした。ボールをつなぐことを恐れ、長いボールを多用してしまった前半でした。

後半に入って若干改善して、我慢してボールを動かしていくなかでチャンスを作れていたと思いますが、前半の後ろからのボールの運びができていなかったことに関して、私は非常に不満を覚えています。トータルして見れば、浦和が勝利に値するゲームができていたと思っていますが、ただ勝って全て良しというわけではありません。特に前半の攻撃の組み立て、そこに私はとても不満を持っています。

Q 前からボールを取る力がファーストステージの前半に比べて落ちているように感じたが、攻撃面と関係があるのか、無関係なのか?

逆であると。長いボールを蹴るがゆえに、はね返されて前からボールを奪えない。やはり後ろからポゼッションしながら運ぶ、あるいは高い位置までボールを動かしながら仕掛けていければ、相手陣内でボールを失ったとしても、そこで人数を掛けてボールを奪いにいくことができる。ただ長いボールを蹴るがゆえに、後ろから押し上げようとしても、跳ね返されてボールが自陣に戻ってくる、それで前でボールを奪いに行く回数が少なかったのだと思います。

もちろん、相手も中を締めた守備をしていましたが、ボールを動かすなかで縦につけられるパスコースも生まれると思います。それをせずに、早い段階から長いボールを蹴り込む場面が多かったので、なかなか自分たちの狙いとする攻撃の組み立てができませんでした。

選手も狙いとすることをやろうとしてくれたとは思いますが、後ろの選手は普段と立ち位置が違う影響ももしかしたらあったかもしれません。ただ、できていなかったのは事実であると。私は勝てば良しという、そういう日本的な見方を決してしていません。結果だけでサッカーを判断してはいけません。今日は勝利しましたが、決して満足できる内容ではなかったと思っています。

我々、ファーストステージの最後に3連敗しましたが、内容的に見れば今日よりもいいゲームはありました。ただ、負けてしまうと全て否定されてしまいますが、私はそうは見ていません。今、我々は4連勝していますが、勝っているから全てがいいかと言えばそうではありません。勝っているなかでも、3連敗した試合よりも出来が悪い試合もありました。

Q 前節は那須選手がセットプレーで決め、今節も阿部選手が決めましたが、セットプレーで取れていることについては?

今日、柏は我々が狙いとするサッカーにとっては、理想的な戦いをしてくれました。前からプレッシャーを掛けに来るなかで、我々は2回に1回はプレッシャーを外してシュートシーンまで持っていけるようなプレーができるはずです。そういう意味で理想的な戦いをしてくれた柏に対して、我々は自分たちの強さである後ろからの攻撃的な組み立てができませんでした。そのことがとても不満です。我々は日々そういうトレーニングを積んでいます。相手が前から来ようが、それを外して前にボールを運んでチャンスを作れるようにすることがトレーニングでやっていることです。それが今日のゲームでできなかったことが、腹立たしいです。ゲームのなかで、選手がボールを受けるのを怖がって動かない場面を見ることは非常に腹立たしいです。

それ以外の部分の、選手の勝利への気持ち、一対一の戦い、運動量の部分はとても良かったと思います。ただ、攻撃の組み立ての部分は不満です。たとえば、クリスティアーノ選手やディエゴ・オリヴェイラ選手はいい選手で、攻撃や個人の能力が高い選手です。ただ、そういった選手のところで数的優位を作っていくことは、サッカーのなかでアドバンテージです。

負けたチームが全て否定されるわけではないし、勝ったチームが全て賞賛されるわけでもありません。サッカーというのはもっと多様な見方がなければいけない。それは私からみなさんへのメッセージです。私は負けたときも内容的に上回っていたとコメントすることも多いですが、逆に勝ったときも出来が良くなかった、あるいは不満であるということはコメントしています。結果だけでなくサッカーそのものを見て、ものごとを捉えるということをした方がいいと思います。

Q 下平監督が浦和の方が個の力が強いチームだとコメントしてたが?

多くの方は、浦和は選手のクオリティーが高いと言われます。ただ、よくボードを使ってミーティングをされる監督さんもいらっしゃいます。ボードを使って選手にどういう狙いを持って動いてほしいということを話すと思いますが、ピッチに立ってしまうとなかなかそうはいかないことが多い。監督としての仕事のなかで大きなものの一つは、いかに自分の考えてるアイデア、戦術を選手に落とし込んでいくかです。それを練習のなかで指導しながら、できるように仕向けていくのです。それが監督の大きな仕事の一つです。それを日々の練習で繰り返すことで、自分の頭のなかの戦術的なイメージを選手が学び、実践していくことにつながっていきます。

若い指導者の方でよくあるのは、選手が飽きないように様々な練習をする方がいます。そういった練習の例の本もたくさん出ていますが、そういったものを闇雲にトレーニングさせても、自分の思い描いた戦術ができるようにはならないと思います。大事なことは何を目的としてやっているかという哲学をしっかり持ってやることです。練習にはいろいろなやり方がありますが、全て同じ目的に向かっていなければいけません。そうやってチームに戦術が浸透していくのです。頭のなかで描いたことを選手が実践するにあたって、どういうトレーニングで組み立てていったらいいのか、どういうプロセスを踏んでいったら実現するのかをしっかり考えて練習しなければいけません。

私が84年にディナモ・ザグレブでプレーしていたときの監督はブランコ・ゼベツでした。彼は私に言ったことは、たとえば新聞を10紙読んで、全てに目を通すと、結局何が書かれていたのか頭に残るものは薄いが、3紙に絞ってしっかり読んだら頭に残るものは濃いと。

たとえば、クラブの会長やGMが見にくると、監督はいろいろなトレーニングができることを見せようとします。でも、そうすると選手は何を目的としてやっているのかわからなくなってしまいます。ただ、3つくらいのトレーニングを繰り返せば、選手は何を目的として、どういうことをやらなければいけないのか明確になります。それは80年代の話ですけども。

私はグラーツ、広島、浦和を率いてきましたが、どのチームでも狙いを明確にして、プロセスを踏みながらトレーニングしてきました。いいゲームをするときもあれば、そうでないときもありますが、自分たちがどういうサッカーをするのかは監督として明確に示してきたと思います。

見たことはありませんけど、おそらく川崎の監督さんは毎日同じようなトレーニングをしていると思います。ボールポゼッションをしながらスペースを狙う、ボールの止め方、動き方を毎日同じようにやっているのではないかと思います。監督として指導したことのない人はもしかしたら「この監督、毎日同じ練習をしているな」と思うものかもしれませんが、ゲーム形式の練習のなかには全てが詰まっています。試合に必要なことは全て詰まっています。

以前、私がオシムさんのアシスタントコーチをしているときに、オーストリアの協会の偉い人が練習を1週間くらい見にきたことがありました。オシムさんは常に3対3、4対4、5対5、7対7という対人のゲーム形式が多いですが、その練習のなかでゲームに必要なことを落とし込んで指導していました。見にきた方は、毎日同じことをやっているとしか思わなかったようで、それ以降は見に来ることはなかったです。

3対2のトレーニングは攻撃の練習と思われがちですが、どちらかと言えば私は守備的なトレーニングであると思います。試合のなかでもカウンターを受けて、数的不利で守らなければいけない場面はありますが、そういうときに2人のディフェンダーがどこをしめて、どこを優先して守って、相手の攻撃を限定しながら守るか。それは、より守備的な練習の一つだと思いますが、そういった狙いを練習をパッと見て理解するのはなかなか簡単ではないと思います。

そろそろ松本さん(広報担当)も終わりにしてほしいようなので終わりにしましょうか(笑)。私はまだまだ話せますが、終わりにしましょうか。こういったサッカーの話は3日間でも続けてできるでしょう(笑)。スミマセン。

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