ターンオーバーは不発も、チームコンセプトは示した【島崎英純】2016ACLグループステージ第6節・浦項戦レビュー

■コンビネーションに問題の見られた攻撃

浦項スティーラーズのチェ・ジンチョル監督は3─4─3のようなシステムで浦和レッズ戦に臨んだ。ついにAFCアジア・チャンピオンズリーグの舞台でも『ミラーゲーム』で浦和対策を施すチームが現れたわけだ。これまでのACLのゲームでも、浦和の特殊な3─4─2─1可変システムへの対処としてアンカーが4バックに加わったり、サイドアタッカーのどちらかが交互にバックラインに入り込んで浦和の5トップを監視するチームはあった。マルチェロ・リッピ監督が率いた2013シーズンの広州恒大は、ほぼ初見で浦和の戦略を封じ込める見事な対策を示した。しかし今回の浦項のように、本来は4─4─2や4─2─3─1を採用するチームが自らのストロングシステムを捨てたケースはない。この点からも、今季の浦和の力をアジア地域のチームが警戒している様がうかがえる。

浦項はサイドアタッカーが3バックと横並びになる、明確な5バックを形成して浦和攻撃陣をマンマークした。1トップ・ズラタン、2シャドー・高木俊幸&石原直樹、サイドアタッカー・梅崎司&駒井善成は狭小エリアで窮屈なプレーを強いられ、その中でコンビネーションによる局面打開を求められた。また浦項は1トップのラザル・ヴェセリノヴィッチを最前線に残して4人のMFが中盤で横並びになってポジションを取ったため、浦和は攻撃発動の合図となるクサビ縦パスを入れ難くなった。中央へのパス供給が難しいならばサイドへのエリアチェンジパスが有効になる。しかし浦項はエリアを逸脱しないポジショニングで各選手が横へ広がったままなので、体力が満ちている前半に関しては浦和が浦項に揺さぶりを掛けることができなかった。

それでも今季の浦和は、ガチガチに自陣を固めてブロック守備を形成する相手を攻略する術を会得している。それは前線トライアングルを中心としたスーパーコンビネーションである。縦パス発動の瞬間に様々な選手が動き出しを始め、フリック、スルー、ワンタッチパス、スペースランニングと、多岐に渡るプレーを表出していく。数秒間の中で次々に繰り出されるプレーの連続に相手守備網は混乱をきたし、おそらく理解不能のままにフィニッシュシーンに至ってしまう。その連動を担う幹は1トップの興梠慎三であり、シャドーの李忠成であり、武藤雄樹。あるいはサイドの宇賀神友弥、関根貴大、ボランチの阿部勇樹&柏木陽介らがそれに融合し、後方から槙野智章、森脇良太、遠藤航、西川周作が支えている。

しかし今回の浦和はメンバーが代わっていた。

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