【島崎英純】2014シーズン・選手総括─阿部勇樹(2015/01/19)

MF 22 阿部勇樹
2014シーズン採点 7
リーグ戦 34試合4得点
ヤマザキナビスコカップ 7試合1得点
天皇杯 1試合1得点
ベストゲーム Jリーグ第30節・鹿島アントラーズ戦

ミドルパスという大いなる武器

阿部勇樹の働きについて特別何かを申し立てることもないだろう。彼は2014シーズンも変わらずチームのために尽力してくれたし、その力を余すことなく発揮してくれた。むしろ2014シーズンは例年よりも本来のポテンシャルを如何なく表現してくれた。2013シーズンは他の主力選手と同様にシーズン終盤になって体力面が減退して不本意な結果に終わったが、2014シーズンはその反省を生かしてキャンプから厳しく自らを追い込んで体力強化に励み、その成果として最後までプレーレベルを落とすことなく戦い続けた。また、他のチームメイトがタイトルの懸かった正念場のゲームで精神的な危うさを見せても、キャプテンの阿部は時に冷静沈着に、時に熱く激しく仲間を鼓舞してチームを牽引し続けた。個人的には、2014シーズンの阿部は2012シーズンに浦和へ帰還して以降で最もベストパフォーマンスを発揮できたと思っている。

阿部がチームにもたらす影響力の高さ、その理由を挙げればきりがない。それでもいくつかプレー面における彼の貢献度を挙げてみる。まず攻撃起点としてのビルドアップ能力はチーム内でも突出している。彼のスタートポジションはダブルボランチの一角だが、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が採用する変則3─4─2─1システムの中で、攻撃時には最終ラインまで下がってリベロの那須大亮と共に攻撃構築を行う。その際、彼のプレー選択肢としては最前線へのクサビ縦パス、サイドエリアへのミドルパス、もしくは中盤で構えるボランチへのパス配給などがある。阿部はどのプレーも高質にこなすが、中でも最も優れている点は正確無比なミドルパスだ。

特に相手陣形を崩してから繰り出すサイドチェンジパスの精度は素晴らしい、約20メートルから30メートルの距離であれば味方選手の足元にピタリと付けることができるし、そのスピードも申し分ないために相手が守備を固めようとしても一気に切り崩すことができる。以前阿部に聞いたことがある。彼はイングランド・チャンピオンシップのレスター・シティに在籍していたことがあるためにイングランド・プレミアシップに在籍するMFのプレーにいつも感銘を受けてきたという。スティーブン・ジェラード(リバプール)、フランク・ランパード(マンチェスター・シティ)などはいずれも強烈なキック能力を備えていて、彼らが放つ中距離パスは一気に局面打開を果たす絶大な武器となっている。

中でも阿部が個人的に最も憧れる選手と思っているのは、すでに現役を引退した元マンチェスター・ユナイテッドのポール・スコールズだという。

(残り 2380文字/全文: 3545文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »