★無料記事【FUKUDA’S EYE】トレーニングマッチ山形戦〔後編〕(2011/4/16)

山形戦レビューを特別全文無料公開しています。

島崎

「ビルドアップが出来ないので、相手にボールを持たされると、今の浦和だと引き出しがないという不安がありますね」

福田

「それもそうだけど、チームの安定は、GKとセンターバック、ディフェンシブハーフのセンターラインが肝になる。今の浦和は、センターバックに関して安定感がないのは事実。マンチェスターユナイテッドだって、リオ・ファーディナントが不在のとき、ビディッチと若い選手が組むとやはり不安定になるわけだよ。Jリーグを見ても、センターバックとGKの安定しているところが、安定して戦うことが出来る。ガンバでも、あそこが落ち着かないのが一番のウィークポイントだったりする。

リーグ戦を戦う上では、失点の多い少ないだけではなくて、安定して戦えるかどうかが重要になる。浦和はフィンケさんが就任し、ディフェンスラインを3バックから4バックに変えたことで、そこがチームの不安材料となってしまった。ディフェンスラインが安定しないから、良い試合をしたと思えば、危うい試合をしたりする。

山形戦では、後半に入ってから落ち着いてプレー出来るようにはなったと思うけど、前半のスピラノビッチは不安定な部分があった。ディフェンスラインに不安定な部分があるから、今のままだとシーズンを通して安定感のある戦いをするには厳しいなと感じた。永田を補強したけれども、安定感という意味では、まだ埋め切れていないかな。

これはGKの山岸も含めての話で、あいつにはまっすぐな性格の良さがあるけれども、その分、相手に対して駆け引きをしながら対応するとか、細かな部分を応用していくという柔軟性にかける部分がある。ばたばたした感じを受けるから、山岸を含めて、後ろがどっしりとした安定感を作り出していかないといけないと思う。センターバックが安定してくればチームは落ち着ついて戦うことができるようになると思う」

編集部

「スピラノビッチは試合に出続けることで去年もプレーがよくなってきていましたから、試合に出続けることで改善されますか?」

福田

「スピラノビッチの能力が高いのは事実だと思う。彼は外国籍選手だから余り実感がわかないけど、実は彼はまだ若くて、オリンピック世代なんだよね。センターバックは、若い選手には難しいポジション。経験のある選手と組ませ、若い選手が経験を積んで成長していくことが重要になる。彼に多くの責任を負わせることはリスクが高いし、それが彼を潰してしまうことにも繋がりかねないので、GKや永田が彼をうまくサポートしていく必要があると思う。

島崎は、ペトロのサッカーをコンパクトにして運動量が多いというんだけど、コンパクトさを保つ方が、運動量の面では楽なんだよね。これが間延びしていくと中盤の選手が死んでしまう。コンパクトな陣形を作っていれば、その中で動いていればいいからね。そういう意味では、山形戦はコンパクトさを保てなかったから、中盤の選手に大きな負担が掛かったと思う」

島崎

「オランダ式では攻撃の時はワイドにならないといけない。守備の時は狭めないといけない。この切り替えの運動量を高めないとこのサッカーは機能しないと思います」

福田

「守備はコンパクトに、攻撃はワイドに。これはサッカーの原則ではあるけどね」

島崎

「オランダでは特にその傾向が強いんです。サイドプレーヤーをすごく開いたポジションに置いて相手を攻め立てるから、戻ったときはすごく締めないといけなくなります。ワイドに開くことで相手は守りにくいけれども、逆襲したときに対応が出来ないので、守備組織、戦術をしっかり統一しないと対応ができません。レッズもウイングポジションで1対1を作りたいわけだから、攻撃でリスクを犯す分、守備で体力面を含めて連動しないといけないと思います」

福田

「それは前提として1対1に勝つことでやっているから、リスクではないんだよ。攻撃していて、取られても1対1だから、なんの問題もないんだよ。変な取られ方はしない。変な取られ方をしたら、どんなサッカーをしてもコンパクトさは作れない。守備は狭く、攻撃は広くという原則的は、どのサッカーでも一緒なんだ」

島崎

「オランダのやり方をしているチームと、局面を狭めるチームが試合をすると分かりやすい構図が生まれます。オランダサッカーのバイエルンと狭めるドルトムントがやると、ロッベンに対して3人、4人が行く。そこをロッベンの個人能力でブレイクされるとバイエルンの勝ちだけど、そこで押さえ込めるとドルトムントの勝ち。今のやり方だと、組織的なチームの方が勝率は高いんだけど、Jリーグでは分からないですね」

福田

「基本的にヨーロッパのサッカーは1対1がベースんだよ。1対1の能力が高いことを前提としてサッカーを構築している。日本は1対1じゃないということを前提にして、どうやって数的優位を作るのという話になってくる。日本人の特性を活かす意味では重要なこと。そうなると、より活動量を増やす、という話になってくる。ロッベンの所に3人いっても、1対1の能力が高いと突破されてしまう。原則的には、その1対1が強い選手を揃えているチームが強いわけで、そういう選手を高いお金で買ってくる。上位にいるクラブは、そういう選手をたくさん揃えるという大前提があり、その上でどういうサッカーをするのか、という問題になってくる」

島崎

「そういう意味では、今の浦和は次元が変わってきているのかもしれないですね。1対1で勝つのが大前提で、強い選手が2人で攻めて、相手を一人にしてしまう。そうなると一人は絶対に勝てないわけですからね。日本代表の選手も海外で活躍して1対1の強さを見せているから、それを前提としながら、日本的な組織だったサッカーをする分には未来がありますね」

福田

「数的優位というと人数だけのことを言うんだけど、1対1で勝てば全て数的優位だから、考え方をしっかりと持たなければならない。日本だと人数を増やすことが数的優位だと言うことが多い。たくさん人数をかけていると攻撃的で、守備に人数を割いていると守備的だという言い方をするけれども、必ずしもそうではない。そんな簡単な問題ではない。見方としてはあるかもしれないけど、僕はその考え方は間違っていると思う」

島崎

「ドイツは局面の重要性を感じている気がします。オランダは逆で、1対1に勝つことで、他の局面を有利にする、という考え方をしていると思います」

福田

「フィンケさんが言っていたボールオリエンテッドはそういうことなんじゃないの。ボールを中心に数的有利を作る、攻撃に関しても守備に関しても。一番わかりやすい例ではバルセロナがそういうことだけども、バルセロナのサッカーは簡単に真似できるものではなく、個人の能力が高くないと出来ないことが前提になる。非常に狭い局面でも、自由にパスをつなげる技術がないと、実現出来ないサッカー。どれだけプレッシャーを回避することが難しいかということを念頭に置かないと、おかしなことになる」

島崎

「考え方ですが、ドルトムントはサイドに人数をかけるけども、最終的にゴール前で1対1の局面を作ろうとしているのかも知れません。バリオスという、絶対的な強さを持つセンターフォワードが居ますから。彼を活かす局面を作るために、サイドに人を寄せているのかも知れないですね」

福田

「フィンケさんの考え方は、ゴール前で、3人、4人と待っているなら、相手のDFを引っ張るために一人ボールに寄りなさいという指導をしていた。“ゴール前にスペースを作るために、ボールサイドに寄れ”ということだね。逆にボールサイドに寄るということは、ボールサイドにスペースがなくなる。つまり、スペースをどこに作ろうとするか、ということだね。

オフトは、コーナーキックの時に、ボールへ競るのは3人でいいんだという言い方をする。僕は、これはオランダ的だと思っているんだけど、1対1の時はスペースがたくさんあった方がいいと思っている。人数が多いとなんとなく上がってきた時にクロスが当たる可能性が高いんじゃないかという考え方もあるけれども、オフトの場合は、大きなスペースの局面を作った方が1対1で勝ちやすいでしょという考え方をするんだ」

島崎

「スペインは異質過ぎますが、同サイドサッカーで、スペースがないところでやりきってしまう。それだけの技術とパス回しと個人能力がないと出来ないんですよね」

福田

「一番分かりやすいのは、オフトが代表監督になった時に、ラモスさんとそこで対立したんだ。“ボールに寄るな”という考えと“なぜ寄ってはいけないんだ”というブラジル的な考え方の違い。狭いスペースで抜いた方がいいじゃないかという考え方と寄ると相手が守りやすくなるという考え方。どちらも正解で、やり方の違いなんだよね。

スペインのサッカーやラモスさんが言っていたやり方は、技術が高くないと出来ませんよというのが前提。オフトが言っていたのは、自分達でサッカーを難しくしてはいけないよということを意味している。さっき話したサッカーの大原則“守備はコンパクトに”ということを考えた時、攻撃の時に味方が近づいてくれば、それは相手にコンパクトさを与えてしまうことなる。逆にコンパクトにしておいて、どこかのスペースを作っておこうという考え方もあるということなんだ」

編集部

「ペトロさんも今の選手を見て、どちらかと言えばドリブルで仕掛ける選手が多いというチーム状況も鑑みて、現在のサッカーを選択しているという考え方もあるのでしょうか」

福田

「ただ、この間の山形戦に関しては、サイドチェンジがほとんどなかったね。長い斜めのボールがなかった。どちらかというと前半の最初はショートパスが多かったと思う」

島崎

「それも極端でしたね。あれだけサイドチェンジをやれと言っていたのに、今度はなくなってしまったのは分からないですね。それが意図的なのか意図的ではないのか分からないですね。山形戦に限ってはトライアングルが作れていなかったから、受けてリターンをパスということもできなかった」

福田

「ディフェンスラインに4人がいて、横パスが繋がっているうちは相手を打開できない。そこにボランチが間に入ってくることで、トライアングルが出来るんだけど、そこをうまく使えてなかった。ボランチにボールが入ることで局面は変わるんだけど、そこを使うのはリスクが高い。ビルドアップの時に、ボランチを使うか使わないかは、やっているチームのサッカーの戦術を大きく左右する。

去年はボランチをうまく使おうとしていたから、ボランチが動いてボールを引き出したり、そこでボールを奪われて、決定的なピンチをまねいていたりもしていた。代表を見ていても明らかだけど、ボランチに何を求めるかで、表現するサッカーが変わる。監督の色がそこで出やすい。その意味で、啓太が重宝されているというのは、繋ぐことよりも潰すことに長けている選手だから、どちらかというと、相手にもたせてハイプレッシャーでボールを奪うサッカーの志向が強いのかなと思う」

島崎

「ペトロさんは、あそこで繋ぐ形を求めていないのかも知れないですね。サイドバックのポジションも横並びにいたままだから、最終ラインで横に繋ぐことが多くなって、最後は左サイドバック、左のウインガーに向けての縦・縦のパスになる。宇賀神とか野田が何度も縦に出していて、その度に、縦縦のパスが嫌いな福さんは絶叫していましたからね(笑)」

福田

「縦の関係の縦パスが一番よくないんだよ。達也や原口が縦の関係でパスをもらっても守備陣形は崩れないから、その後の選択肢が広がらないんだ」

島崎

「ビルドアップする時に、ボールを持っているボランチの選手よりサイドバックの選手が高い位置にいないと、前を向いてボールを受けられずに展開がしにくくなります。真横、もしくは後ろにサイドバックが居ると、ボランチは視野を確保できないですし、相手を背負ってからパスを出すことになります。今の浦和は、そうしたケースが多いです」

福田

「まあ、ビルドアップしていくという感じはあまり受けない。ボランチの選手がどうやってボールを受けるかというアイディアがあまりないので、後ろからビルドアップは危険だし、難しいから、逆に蹴れということなのかもしれない。現状では、後ろからは蹴るしかないサッカーになっているのかもしれない」

島崎

「現状は、フィンケさんが就任した直後の頃に似ていると感じます。選手達もビルドアップのやり方が分からなかったから、サイドバックが横並びになってして、出しところがないから最終ラインに戻すしかなかった。フィンケさんから指導を受けて、サイドバックがどちらかが上がったり、両翼が上がったり、ボランチが下がることのバリエーションが出来てきてビルドアップ出来るようになったけど、またその頃に戻ってしまっている感じですね」

福田

「フィンケさんの時と違って縦の意識は強い。それは相手にとっては危険なんだけど、そればかりになってしまうと一本調子になり、攻撃が単調になってしまう。あの試合を見る限りでは、ビルドアップをチャレンジしようとしている感じではない。どちらかというと、それをすることでのリスクが高いから、それはしないで、リスクを犯さずに長いボールを入れておこうかなという風にしか見えない。綺麗にポジションについているから、そこからアクションを起こさないとボールが動かない。このシステムでは、特にサイドの選手が要求をされてくる。細かい動きなおしを繰り返していかないと、ボールを引き出すことはできない。ただ引いてきて受けたり、ただ前にでてパスを受けたりという場面が多い気がする」

島崎

「ひょっとすると。アタッキングサードに入らないとアクションを起こさないのかもしれないですね。アタッキングサードに入ると、同サイドの選手はオーバラップするし、急に活性化します。アタッキングサードに手数をかけずにボールを入れて、そこから攻めたいんじゃないかな。自分達からチャンスを生みだそうとせず、偶発性と相手の動きによってチャンスを生む形なのかな」

福田

「そういう意味では整理をされているよ。ただ、繋ぐことがリスクではなくなって欲しいよね。ボールを保持して自分達が主導権を握っていく、というサッカーを現状では目指してはいないことは確かじゃないかなど」

島崎

「そうなると下手なチームとやると良い試合になって、ボール回しの良い形のチームとやるとかなり苦戦する形になるんでしょうかね」

福田

「うまくハマる可能性もある。去年までは、ガンバと志向が近いサッカーを展開していたから、真っ向勝負で力負けしていた。チームとしては目指す形が近いから、また練習をして彼らより上にいきましょうという考え方で進んでいた。逆に今年は、“ガンバに勝つためにこういうサッカーをしよう”ということだから、去年までと比較すると、勝つ可能性は高くなるかも知れない」

編集部

「セットプレイから得点が生まれました。永田、スピラ、エジと180センチを越える選手がいて、去年よりは可能性が高くなったのかと思うんですが」

福田

「フィンケさんは、スペインのようなサッカーを好む人で、ドイツのサッカーが持つ長所をそれほど好まない人だった。ドイツにはあまりいないような、小さい選手を好んでいたよね。セットプレイの練習は、当然していたけど、あまり迫力がなかった。良いキッカーがいなかったのも事実。今年はキッカーはいるけれど、まだまだ迫力不足かな。セットプレイはポジション争いで負けてしまうと話にならない。

判りやすく言うと、ポジション争いでの揉め事がほとんど起きてこない。去年もほとんどなかった。揉め事がないということは、逆に言うとそのポジションを死にものぐるいで取ろうとしていないということなんだ。FKやCKの時に、ボールがないところの選手が倒れたりすることは、ほとんど無かったと思う。実はそういうプレーが、相手に対して脅威になるし、見ている人がセットプレーに対して“入りそう”と思わせ、ワクワクさせることに繋がっていく。これはファールしろと言っているわけではなくて、細かなポジション争いをしていかないと、セットプレイからの得点が生まれてこないということなんだ。

スピラも背が高いけど、どちらかというとファイターというよりはスマートな選手なので、もう少し激しさという部分が必要だよね。永田も露骨に激しさを全面に出す選手ではない。チームを鼓舞して闘っているんだということを全面に出していくことが、あのポジションでは重要になってくる。チームに試合巧者という側面を与えるのは、そうした意識が重要になるから、その辺りは物足りないかな。

リーグを制した2006年は、外国籍選手や帰化選手達がその役割を担っていて、他の選手はそういう役割をしていなかった。だから、その選手たちが抜けてしまってから、実は出来る選手がいないということが判ってしまった。頼っていたと言えるだろう」

島崎

「FKの部分では、サイドからの仕掛けが多い分、ゴール前の良い位置でFKを取れていないですね。まだマルシオのFKの見せ場がないですね」

福田

「サイドアタッカーが中へ切れ込んできた時に、もっとチャンスを作って欲しい。山形戦の原口に関しては、縦の突破がなかった。当ててワンツーでもらって中に中に、というあまり良くないときの形になっていたかな」

島崎

「原口は相手と駆け引きをしていない。自分の型にはめるだけしか考えてないから、相手も分かりきってしまっているのではないでしょうか。相手がバランスも崩していないのに型にはめようとしてしまっているように感じます」

福田

「もっと経験を積まないといけないと思うけど、シーズンの最初の時はもう少し縦にいっていていた。山形戦では、ゴールラインからクロスをあげるシーンがほとんどなかったね。全部中に入ってしまっていた。どちらか一つになってしまうと、相手に対しての怖さがなくなってしまう。もしかすると相手に対応をされていて、縦にいけなかったのかもしれないけど、それでも縦に行く意識が必要。原口がワンツーする時は、中へカットインし、右足でシュートをするイメージしかない。叩いて縦へ行く、というイメージが出てくると、もう少し全体的なプレーが良くなると思う。

達也に関していうと怪我上がりなのでもう少し時間がかかるかなという印象。最初は彼らしいプレーが見られたけど、それ以外は見られなかった。ただ、あと2、3週間あるから、彼はコンディションさえ整えば、問題はないと思う」

島崎

「メッシはワンツーで突破するのが大得意で、それでカットインが得意だから、抑えようがないですね」

福田

「僕が言っているのは、相手の裏を取るということなんだよね。原口の場合は、エジに当てた後、ディフェンスラインの前でシュートを打とうとする。そうではなく、前に当ててから、ラインを突破する動きをして欲しい。メッシは、ワンツーでラインを突破する動きをする。原口はラインを突破する動きがないんだよね。ドリブルで縦に行け、ということはラインを突破しろということなんだよね。

ランニングで突破するのか、ドリブルで突破するのか、叩いて突破するのか、色々な形があると思う。ラインを突破することによって、ラインをひいているディフェンスラインは混乱する。1点目はエジがラインの裏を取った。ランニングによってラインを突破したから、相手のディフェンスを混乱させ、崩すことが出来た。ラインの前で動いていると、良い形でシュートを打ったように見えても、実際はディフェンダーにコースを切られていたりしていることが多い。

ラインの前でプレーをしていると、ディフェンスが前向きで守備が出来ているから、守りやすくてコントロールがしやすいし、怖さがない。だからシュートが決まりにくいんだ。あとFWの心理からいうと、コンディションが良くないと縦で勝負が出来ない。身体が切れていないと、縦に行っても獲れられるような感覚になる。縦に行くのが分かると当然コースを切ってくるから、そこでいかに縦を取るかという駆け引きになってくる。そこは色々な経験をしながら成長をしていかないといけない。

彼は1年目、2年目で苦労をして、今年の最初は今までの経験が生きて成長が見られたんだけど、山形戦では見えなかった。前にも言ったけど、人の成長は右肩上がりではいかないものだから、出来たことができなくなったり、また出来る様になったりと、繰り返していく。それをクリアしながら成長をしていくと思う」

編集部

「後半に、高崎、マゾーラ、セルヒオ、濱田、青山が入りましたが、交代で入ってきた選手達はどんな印象を受けましたか」

福田

「セルについては、今のやり方で活きると思っている。右サイドのアウトサイドに限定したポジションで、彼の1対1の強さ、フィジカルの強さが出しやすいと思う。3点目のシーンでも彼の良さが出ていたと思う。彼については一定の評価ができると思う。ただ、経験をしてきているので変わってきてはいると思うけど、戦術的理解度は高くはないので、使い方は難しい。例えば、負けていて1点を追うシーンでは使いやすいけど、1-0で勝っている試合の残り10分で使うのは難しい。そこのポジションで思いっきりプレーをさせると良いプレーをしてくれると思う。

達也のコンディションを考えても、セルの存在は、戦力的にはプラスだと思う。峻希も前目のポジションであれば、この前の試合でもアタッキングサードに入ると躍動をしているので、十分戦力になると思う。逆にサイドバックのポジションだと、シーズンを通して戦うにはどうかな、と思う。

マゾーラは早くフィットして欲しいな。素晴らしいポテンシャルを持っていることは証明しているけど、それを活かして切れてないよね。その原因がなんだか分からないけど、日本のサッカーのリズムに慣れていないのは事実だと思うから、早く慣れることは重要。彼のプレー、パーソナリティはサポーターには評価されると思う。もう少し時間がかかるかもしれないけども、彼のもっている本当の力を早く出して欲しい」

島崎

「山岸に聞きましたが、彼のシュートのパワーは凄まじいと。セーブしようとしても弾かれてしまうと。そのくらいパワーがあるということでした。ただ、如何せんウルトラマンですからね。3分しか持たない気がする。これをなんとか20分くらい保ってくれるようになると、チームとしても凄い戦力になると思います」

福田

「エメもそうだけど、足の振りが速いんだ。だからGKが思ったよりタイミングが早くボールが来てしまう。だから余計に、ボールが早く感じるんだよね。コンディションの部分では、ブラジル人の場合は試合で使い続けないとコンディションが上がらないことが多い。オフトはそういうことを理解していた。エメルソンはいつも遅れて合流してきたけど、表面上使わないと言っても、試合では使う。ブラジル人は練習では手を抜いてしまう選手が多いから、公式戦に出ないとコンディションが上がらないんだよね。これはブラジル人の特性だと思っている。彼らは楽しくないとやらないから、普通の練習をやっても動かないし、試合形式の練習が多くなる。

逆に試合で使っていくとドンドン上がっていくから、マゾーラのコンディションを上げるには使い続けるしかないとは思っているんだけどね……。彼の場合は、チャンスはそんなにもらえないし、それだとコンディションが上がらないし、というジレンマがあるかもしれない。彼がブレイクしてくると駒として、浦和もだいぶ変わってくるのかなと思う」

島崎

「個人的には、山田直輝と岡本拓也が良い働きをしてくれたら嬉しいんですが、彼らも経験が少ないから今年は難しいかも知れないですね。福さんも言っていましたが、今年のクラブ目標からすると、若い選手を積極的に使うというチャレンジは、なかなかしにくいかもしれないですね」

福田

「チャレンジをするのは難しいクラブ目標になってしまっているね。サッカーのスタイルもリスクをかけない。選手選考も経験がある方がリスクがないから、そういう方向に仕向けてしまっているのは事実だよね。現場としては、クラブの描く方向性に沿う必要があるから、そうせざるをえない」

島崎

「啓太をキャプテンにして、平川を副キャプテンにしたのは、まさにペトロさんの気持ちが現れているんじゃないかなと思います。まず結果を残さないと自分の責任を果たせない、という考えだと思います。そうなると伸びシロがあると評価をしている選手でも、すぐには使えないのかもしれない」

福田

「若い選手は経験がないから、ミスもあるし安定感はない。安定していないと結果は出ないから、“若い選手にチャンスを与える”という環境をクラブは作っていないと思う。今の形やメンバー選考を見れば、クラブの意向が反映されていると言える。勝ち星が重なっていけばチャンスを与えられるだろうし、結果がでなければなかなかチャンスは与えられないだろうね」

島崎

「ブッフバルトの時に、素晴らしい結果を残して主力選手が活躍をしたけど、その分、若手選手が伸びず、世代的に中間層が空いてしまいました。また同じことになるのは避けたいです。今後どういう形で今後彼らに経験を積ませるのか、福さんが言っていたレンタルに出すことも含めて、新しいアプローチがないと、結果と育成を追い求めることは出来ないと思います」

編集部

「今を見ていると、小島は試合に出られないでしょうから、レンタルに出す方向も考えた方が良いかもしれないですね。

島崎

「彼は非常に良い選手で、テクニックはJ1で通用すると思う。まだ体力がついてきておらず、J1のプレッシャーに順応出来ていないから、どこかで修行をしてくるのもアリかもしれないですね」

福田

「試合に出ないことの経験を積んでも、何の意味もないということを理解すべきだよ。試合に出続けて活躍することの経験、シーズンをどう乗り越えるかという経験を積まないといけない。試合を出ないことには何の経験も生まれない。試合に出ないために練習をしているわけではないからね」

 

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