仙蹴塵記

天皇杯3回戦 名古屋戦・第一報 蘇ったビルドアップ、延長戦の粘り。出場機会を得た選手たちが奮闘し菅原龍之助がプロ初ゴールで1-1に。しかしPK戦で力尽きる

直前の公式戦である9日の明治安田生命J2第25節・栃木戦から中2日。ベガルタ仙台は天皇杯3回戦から先発メンバーを全員入れ替えた。林彰洋はJ2第20節・磐田戦以来の復帰戦。ゲームキャプテンは小出悠太が務めた。会場はCSアセット港スタジアム。この日の名古屋市では日中に激しい雨が降ったため、ピッチは水含みだった。

立ち上がりに右サイドから攻めこんだ仙台は、1分に加藤千尋がゴール近くの密集でボールを受け、左足でシュート。これはゴール右に外れた。7分には右から左へ展開、相良竜之介がドリブルからクロスを送ったが、相手に当たって跳ね上がり、ランゲラックにキャッチされた。10分には右スローインから繫いで中山仁斗が左足で遠目からシュート。これはランゲラックの正面だった。

仙台は18分に左サイドを破られ、林がカバーに入ったところをクロスでかわされたが、稲垣祥のボレーシュートは枠を外れた。20分にも左から右に振られて藤井陽也のシュートを許したが、これは林がおさえた。

24分、仙台は梁勇基が左から上げたクロスに加藤がダイビングヘッド。しかしこれはゴールできなかった。29分には鎌田大夢のダイナミックなスルーパスを受けて加藤がシュートを狙ったが、DFにブロックされCKとなった。32分には自陣からビルドアップし、秋山陽介のサイドチェンジを受けたオナイウ情滋が右サイド角度のないところからシュート。だがこれは打ち上げてしまった。

35分に仙台は自陣左サイドでFKを与えると、そこから繫がれて野上裕貴に決定的なシュートを打たれたが、これはクロスバーに助けられた。44分には相手に左右へ振られ、右サイドから永井謙佑にシュート性のクロスを上げられたが、これは林がファインセーブ。前半は両チームが見せ場を作る中で、仙台は縦横のビルドアップで相手を崩す場面もありながら無得点。守備は集中して前半終盤のピンチをしのぎ、0-0で試合を折り返した。

ハーフタイムでの仙台の選手交代はなし。仙台は後半立ち上がりは途中出場のマテウス・カストロのパワフルなキックに振り回されたが、相手のシュートミスもあって耐える。押されていた56分、仙台は梁から松下佳貴に交代した。

60分、仙台は縦パスを受けた中山がターンして、遠目からシュート。これはランゲラックにキャッチされた。62分に仙台にアクシデント。秋山が負傷退場した。64分にその秋山が中島元彦に交代し、同時に鎌田に代わってホ・ヨンジュンがピッチに入った。仙台はこれで3-4-2-1にフォーメーションを変えた。

71分、加藤が足を攣ってプレー続行不可能となる。74分、加藤から工藤蒼生、中山から菅田真啓に交代した。工藤はプロ入り後公式戦初出場。78分、仙台は右CKからのこぼれ球を相良がシュートしたが、これは相手にブロックされた。攻める名古屋、カウンターで返す仙台、という構図で進むが、両チームとも決め手を欠く。90分頃には、観客席に急病人が出てその対応のため、5分間試合が中断した。再開後、後半アディショナルタイムに相良が個人技で左サイドを崩し、そこからのクロスにホ・ヨンジュンが飛びこんだが、これは相手にクリアされた。最終的に0-0で90分が終わり、勝負は延長戦に持ちこまれた。

延長戦も激しい攻防が繰り広げられる。95分、仙台は右サイド遠目での中島のFKからチャンスを作るも、ランゲラックらに守られた。97分には逆に名古屋のマテウスにゴール正面でのシュートに持ちこまれたが、林に止められた。

98分、相良が足を攣り、延長戦の追加交代により菅原龍之助に交代した。その直後に相手陣内に攻め入ったが、カウンターで薄くなった守りを突かれる。キャスパー・ユンカーに最終ラインを抜かれ、ラストパスをマテウスによって無人のゴールに押しこまれた。

ついに試合を動かされ、0-1とされた仙台。その後も相手の攻勢を受けたが、諦めずゴールに迫る。105分、右サイドをオナイウが抜けると、クロスに菅原が飛びこみ、嬉しいプロ初ゴール。仙台が延長戦前半のうちに1-1に追いついた。

延長戦後半は互いに疲労の色が濃く、なかなかシュートシーンが生まれない。114分、名古屋の右CKでマテウスのキックがカーブして仙台ゴールを襲ったが、これは林が弾き飛ばした。115分には仙台は左右に振られてピンチになったが、相手のシュートミスに助けられた。116分の相手クロスからのシュートも、ゴール右に外れた。120分にはオナイウが足を攣ってしまった。一人少ない状態となった120+3分に仙台は名古屋CKの場面でピンチになったが、相手のシュートがわずかにゴール左へ外れて命拾いする。1-1で延長戦が終わり、PK戦に突入した。

PK戦は、仙台サポーター側のゴールで行われることとなった。両チーム4人ずつが決め、先行の名古屋が5人目も決める。仙台の最後のキッカーは蜂須賀孝治。だがランゲラックに止められ、1-1、PK戦4-5で敗れた。仙台は機会をつかんだ選手たちが内容面含め健闘したが、最後の最後にPK戦で力尽きた。

伊藤彰監督はPK戦で敗れたものの、ショートカウンターでもビルドアップでもチャンスを作れたこと、背後のスペースを狙う相手への守備対応ができたことなど、その内容面での手応えを多く口にした。「これをしっかり次の(明治安田生命J2)リーグ戦の金沢戦につなげていきたい」と、週末の試合に向けてまた気を引き締めた。

reported by 板垣晴朗

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