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情熱は伝染する…状況はまだ「自分たちの手の中」【#明治安田生命J2リーグ】第37節 1●2 V・ファーレン長崎|#ジェフユナイテッド千葉 #vvaren

●雰囲気はすでにJ1

フクアリへ歩きながら思いました。

「あ、もうJ1になってる?」

沿道は黄色い人、人、人。スタジアムでは選手入場の際にイエロー一色となり、ゴール裏には巨大なエンブレムがするすると登場。犬の後脚と前脚、鼻がエンブレムの枠からはみ出ていて、文字は一切ない。こうして改めて見ると、かなり奇妙かつ斬新。主張が全然ないのか、すごくあるのか、よく分からない不思議な魅力のエンブレムです。

ホーム最終戦、残念ながら勝利できませんでしたが、最終節を勝てばよいだけ。それよりスタジアムに1万6740人を集めたことで、すでに今季は成功しています。勝てなかったのは残念至極ではありますが、プロスポーツのゴールは勝つことではないと思っています。

小林慶行監督はよく「サポーターの力」について言及していますが、実際のところ選手はどう感じているのだろうと思い、試合後に聞いてみました。

「(満員のスタジアムでプレーするのは)単純に楽しい。選手冥利です。勝手にモチベーションも上がりますし、選手はもともと自己肯定感の高い人しかいないので(笑)、自分の存在価値をより多くの人に示せるのは喜びですね。フクアリだと、歌ってくれている人の表情もけっこう見えるんです。ただ歌っているだけではなくて、本当に魂込めて歌ってくれているのが分かるので、『やらなきゃ!』と思います。(ホームでファンが多いと何割増しかになる?)いや、2倍3倍になりますよ」(横山暁之)

「いいプレーすれば湧くので、『もっとやってやろう』という気持ちになる。自分の実力がより発揮できます」(山越康平)

「幸せです。普段生活していて、1万数千人に応援してもらうことはないじゃないですか。それは普段は出ない力が出てきます。これだけ多くの人が僕たちのプレーを楽しみにしてくれるのは幸せです」(髙橋壱晟)

正直、経験がないのでファンに応援されることがどれだけ力になるのか実感できないのですが、確かに1万人に応援してもらえることなんて普通に生活していてありえないですもんね。そりゃ、頑張るわ。

力一杯選手に声援を送り、励まし、選手たちに幸福感を与える。一方、応援している側も選手たちの全力のプレーに感動し、勇気をもらい、幸福感を得る。この循環こそがクラブフットボールの神髄。言ってしまえばそれ以外は全部オマケです。

スタジアムだけでなくDAZNで観戦している人、都合で観戦できない人も含め、クラブを支えている人たちと、クラブの間に交わされるエネルギーの交換。スタジアムを満杯にするのは分かりやすい目安で、それを毎試合のように達成するクラブはもうそれだけで偉大なのです。勝利と観客動員はタマゴとニワトリみたいなものですが、どっちが先かと言えば巨大なエネルギーの交換にある。そう思っています。

●情熱は伝染する

フクアリの最初の試合では1万7000人をオーバーしています。その後も何度か満員になっているのですが、今回ほど熱を感じた記憶はないです。久々なのでそう思うのかもしれませんが、これまでとはちょっと違う感じがしました。

情熱は伝染します。どちらのチームもとても集中したプレーぶりでした。選手だけがゲームを作っているのではなく、観衆も大きな存在だと実感させる試合でした。むしろ観衆こそ試合を作るのだと言っていいかもしれません。

2024明治安田生命J2リーグ第37節 ジェフユナイテッド千葉フォーメーション

佐々木翔悟は左SBでスタート。開始1分、その効果が表れます。佐々木のフィールドを横断するサイドチェンジから田中和樹のクロス、小森飛絢がフリックして横山がシュート。

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