秋田サッカーレポート

【無料公開】【10,000人応援プロジェクトへの道】vol.5 ブラウブリッツ秋田 集客・チケット課課長 伊東佑多さん「秋田県の生活や文化を重んじたクラブ・チームのコンセプト『AKITA STYLE』は、県民の方々が共感できる」

 

ブラウブリッツ秋田がホーム開幕2連戦で実施する「10,000人応援プロジェクト」。

プロジェクトの達成に向けて日夜奮闘しているフロントスタッフの思いを聞きました。

 

事業・マーケティンググループ
toC事業部部長補佐
集客・チケット課課長
伊東佑多さん

 

●プロフィール

福島県福島市出身。1998年生まれ。中央大学のFLP小林勉ゼミ「福+(ふくたす)プロジェクト」でブラウブリッツ秋田と関わり、高齢化など地域の課題解決に取り組む。大学卒業後、ブラウブリッツ秋田に入社。

 

–大学時代までは秋田県との関わりはありましたか。

なにもなかったですね。大学に入って初めて秋田に来ました。FLP小林勉ゼミがなかったら秋田で働いていないと思います。

 

–サッカーとの接点を教えてください。

小・中・高とずっとサッカーをやっていました。その面では関わりは強いです。ポジションは真ん中、ボランチやサイドバックをやっていました。自分は3兄弟のいちばん下で、兄がやっていたことがきっかけでサッカーを始めました。

 

–ご兄弟もJリーグクラブで働いていると聞きました。

兄が福島ユナイテッドFCのフロントスタッフで、自分と同じような仕事をしています。

 

–そうなんですね。どちらが先にフロントとして働き始めたのですか。

自分が先です。

自分もそうですが、中学時代に福島ユナイテッドFCの下部組織でサッカーをしていました。そのつながりもあり、「福島のためになにかやりたい」という思いから転職をしたそうです。

J2とJ3でカテゴリーは違えど、地方においてサッカーの集客をするのはまったく同じです。そこの手法や考え方などの話もしています。

 

–福島県でいうと、福島ユナイテッドFCといわきFCという2つのJリーグクラブがあります。サッカーへの熱は感じますか。

まだまだです。いわきFCがJ2に上がって、ちょっとずつ変わっているなと感じていますが、自分が子どものときなどはあまり感じなかったですね。

 

–いまの主な業務を教えてください。

集客を担当しています。ほんとうに幅広い業務をさせてもらっていますが、まずは人をスタジアムに集めることが最大のミッションです。

 

–クラブのさまざまなイベントを取材させてもらっていますが、伊東さんが代表して趣旨を説明するようなシーンも増えていますね。

去年1年間集客に取り組んでみて、ある程度見えてきた部分もあります。その面ではもしかしたら、自分が先頭を切ってやることも増えているのかなと思います。

 

–伊東さんご自身の成長もあるということですね。去年はホーム戦の平均入場者数が過去最高になりました。その結果はうれしかったですか。

そうですね。当初の目標だった2,800人を超えたこと。かつクラブ史上最多の平均入場者数だったことは、すごい達成感がありました。

 

–より多くの集客に向けて、今年やっていきたいことはありますか。

たくさんあります。

ひとつ挙げるとすると、秋田県民の中でブラウブリッツ秋田を知っており興味を持っていただいているけど、一度もスタジアムに来たことがないという方や、一昨年は来ていたけれども去年は1回も来ていないという方。そういった「認知未利用層」と「離反層」と言われるこのふたつの層は、マーケット的にはすごく重要な要素です。

ここにCMなどさまざまなプロモーションをすることで、来場者を1人でも増やしていく。顧客をどんどん増やして、拡大していくことがとても重要だなと思っています。そこは一昨年まではできていませんでした。

いまはJリーグIDを活用したIDマーケティングをしていて、そのデータ分析をしっかりとやりながら取り組んでいきたいと思います。

スタジアムの雰囲気を作っていただくのはゴール裏の方々だと思っています。ゴール裏の方々が増えることで、初めて来場された方々が「スタジアムってこんなに楽しいんだ」「サッカーの応援って楽しいよね」と感じられる。そうした場面を作るのはクラブだけではなくサポーターの皆さんと一緒につくっていくものだと思うので、いわゆるコアの方々も、初めての方々も、両方増えていくことが理想です。

 

–集客の前はどのような業務を担当していましたか。

社会連携事業です。地域貢献、SDGsなどをメインで担当していました。そこでは大学時代の経験も間違いなく生きていると思います。

 

–社会連携事業でどんな達成感を得られましたか。

地域課題の解決は、自分がこのクラブに入った大きな目的です。

全国的にも地域課題の先進地域である秋田だからこそ、ブラウブリッツ秋田が関わることで課題を解決できるのではないか。そこが自分にとっての魅力であり、非常に大きな可能性があるなと思って入社しました。

会社として「ブラウブリッツ秋田があったから○○を街中に溢れさせる」というフレーズを掲げています。

そのひとつとして健康という分野で「ブラウブリッツ秋田があったから健康になる」を実現すべく、にかほ市さんと健幸プロジェクトを取り組ませていただいています。この活動は行政と連携して市民の健康にアプローチするという意味で、すごく可能性を感じました。

 

–新卒でブラウブリッツ秋田に入社したんですね。就職活動の一環でしたか。

そうです。東京で就職活動をしていて、ある程度早い時期に就職先が決まり、考える時間ができました。そのとき「福+(ふくたす)プロジェクト」でのほんとうに何気ない会話のなかで、外山常務から「ウチに来ないか?」と声を掛けられたのを、なぜかふと思い出しました。

そうして、新卒だからこそチャレンジできる環境でもあるのかなと考え、就職活動を再開してブラウブリッツ秋田にアプローチした経緯があります。

 

–秋田での就職に抵抗はありませんでしたか。

そこまで大きな抵抗はなかったです。むしろ自分自身、新しいことへのチャレンジがすごく好きな性分で、その意味ではワクワク感のほうが強かったと思います。

 

–新卒で入社してから、どんな社会勉強を積んできましたか。

新卒でこの会社に入って、一番は岩瀬社長から学ぶことがものすごくあるなと思っています。

 

–集客業務について、もう少し教えてください。

集客というと漠然としていますが、自分のなかではいくつかの領域があると思っています。チケット業務。IDマーケティング。スタジアムに来た方々に楽しんでいただくイベント設計。イベントを告知するプロモーション。いまはこの4つの領域を自分がある程度コントロールさせてもらっている状況です。

 

–社内での連係が重要になりそうですね。コミュニケーションで心掛けていることはありますか。

コミュニケーションは一番重要だと思っています。コミュニケーションを多く取った上で、やっと会社内での心理的安全性ができるというか。相談ができるような関係性を作っていかなくちゃいけないなと思います。

いま同じチームで働いている者だけじゃなく、上司に対しても伝えられる関係性を構築していく必要があると思います。

 

–ホームゲームのときにはどんな業務をしているのですか。

基本的にはイベントに関する業務です。ステージイベントの出演者の対応などに加えて、営業領域のサポートもさせてもらっているので、冠マッチのスポンサー対応もしています。

 

–集客について。秋田県の県北・県南地域へのアプローチは課題でしょうか。

そうですね。間違いなくアプローチしていきたいです。秋田県は自動車文化なので、移動距離30分圏内や1時間圏内といった移動時間の地域から、まずはしっかりとアプローチをしていきたいです。

 

–集客以外でやってみたい業務はありますか。

スポンサー営業を含めて、営業領域ですね。クラブ全体の収益構造を見たときに、スポンサー収益が6~7割を占めています。スポンサー収益が上がることでチーム強化費が上がっていくのが現実です。もしかすると、そこが取り組まなくちゃいけないクラブの課題かなとも思っています。

 

–集客担当になったときはどのようなことを考えましたか。

いまの集客の手法はほぼゼロからのスタートでした。なにをしなくちゃいけないのか、どのようにやっていかなくちゃいけないのか、そこから考える必要があり、そうした壁への危機感とワクワク感がありました。

 

–いまの集客の手法とは、JリーグIDを活用して顧客データを蓄積していくことでしょうか。

そうですね。

 

–顧客データの蓄積でどんな恩恵がありましたか。

ひとつは来場された方々も、来場されていない方々にも、しっかり情報を届けられることです。メール配信はもちろん、配信先の人を知ることができるのはJリーグIDがあるからこそです。クラブのSNSで発信したとしても、コアなファンしかフォローしていないということもありえますから。

もうひとつは、年齢層や居住地域、年齢層などを限定して情報を配信できます。そうした特定の層へのアプローチができるのはJリーグIDの恩恵です。

紙チケットのみだった時代は、販売状況の進捗も出ず、「これくらい売れているな」という雰囲気でしかわからない状況でした。そこがある程度わかるようになり、施策がすごく打ちやすくなったのも大きいです。

 

–集客業務とチームの連係について。

「選手シート」などのチケット企画はもちろん、イベント時の連係やSNSの発信の依頼などで関わります。ほかのクラブの話を聞くと、ここまで選手とコミュニケーションを取れる関係は意外とないようです。その面ではフロントとチームの一体感があると思います。

 

–ブラウブリッツ秋田の企業としての魅力を教えてください。

自分は「AKITA STYLE」だと思います。それを初めて聞いたとき、衝撃を受けたというか、ものすごく共感しました。

秋田県の生活や文化を重んじたクラブ・チームのコンセプト「AKITA STYLE」は、秋田県民の方々が共感できると思います。

ブラウブリッツ秋田のサッカーを観戦する時に、「AKITA STYLE」を聞くのと聞いていないのとでは、一つひとつのプレーの見え方がまったく変わるはずです。そこはこのクラブだからこその魅力だと思います。

 

–「10,000人応援プロジェクト」成功に向けて。

中3日の連戦。2試合で10,000人を集めるところがポイントです。そこに全力を注いでいます。

 

–伊東さんの話しぶりは冷静で落ち着いている印象を受けますが、芯は熱いですね。

どうなんでしょうか。熱いのかもしれません。

人の心を動かすのは、人の熱量だと思っています。仕事をする上で、そこに対する思いと熱量がないと、ぜったいに物事はうまく進まないと思っています。

冷静でありたいですけど、熱量のほうが大事だなと思います。

 

取材・撮影・構成:竹内松裕

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ