【無料公開】【10,000人応援プロジェクトへの道】vol.3 ブラウブリッツ秋田 イベント企画課課長 小笠原聡美さん「スタジアム外のイベントはチームやクラブを知る機会。BBパーク来場だけでも大歓迎」
ブラウブリッツ秋田がホーム開幕2連戦で実施する「10,000人応援プロジェクト」。
このインタビュー記事では、プロジェクトの達成に向けて日夜奮闘しているフロントスタッフの思いを聞きました。
事業・マーケティンググループ
to C事業部 イベント企画課 課長
小笠原 聡美さん
●プロフィール
秋田県出身。1990年生まれ。テーマパークに勤務して接客やコミュニケーションの経験を積み、2022年にブラウブリッツ秋田に入社。
—主な業務内容を教えてください。
私はイベント企画を担当しています。ホームゲームでは主にキッズパークの運営やトラックステージに出ていただく出演者の方の決定、ハーフタイムのイベントの誘導、スタジアムグルメなど。ホームゲーム以外ではパブリックビューイングやファン感謝祭も担当しております。
—幅広いですね。いまの仕事はいつ頃から担当しているのでしょうか。
2022年8月の入社時は営業部にいたのですが、その後すぐに岩瀬社長から「聡美はイベント企画をやったほうがいい!」ということで、入社して半年経たないぐらいで、いまのtoC事業部に異動しました。そこで1年半ぐらいになります。
—ブラウブリッツ秋田に入社するまでの経歴を教えてください。
東京ディズニーランドやサンリオピューロランドなどのテーマパークで働いていました。生まれは秋田なのですが、育ちが東京で、ブラウブリッツ秋田に入るまではずっと首都圏で生活していました。
—入社のきっかけを教えてください。
コロナ禍の影響で、転職先の採用が白紙になってしまったんです。結果的に時間も生まれて、自分の人生を考えるタイミングになりました。そこで、自分がテーマパーク勤務で培ったサービスやおもてなしの精神を、サッカーを通して秋田の方々に届けたいと思い、いまに至っています。
—もともと秋田で働く考えはあったのですか。
いいえ。そこはまったくの偶然でした。ネットを見ていたら、ブラウブリッツ秋田の求人が出てきて、吸い込まれるように応募していました。
—応募してからの経緯について。
当初の募集職種は営業でした。私のコミュニケーション能力が、サッカー業界という面でも地域という面でも、まったく知り合いのいない違う世界でどれだけ通じるものなのか試してみたかったんです。その挑戦を通じてステップアップしたいなと思っていました。
ただすでに私の前に採用が決まっていました。ですが外山常務が「話だけでも」と対話の時間を作ってくれたんです。そこからたびたび自分に矢印を向けてくれて、最終的に「ぜひ」ということで入社が決まりました。
—これまでサッカーとの接点はありましたか。
個人的にサッカーを観るのが大好きでした。父が明桜高校の前身、秋田経法大附属高校でサッカーをやっていた影響です。自分では「けっこういいところまで行った」と言っています。(笑)
父の影響で妹もずっとサッカーをやっていて、家族の日常にサッカーがありました。
—ご自身にとっては、秋田に戻るというより来るという表現のほうが近いでしょうか。
父母ともに秋田出身で、ゆくゆくは秋田に戻りたいと言っています。それで親の仕事が落ち着いて秋田に戻るときに、長女の自分がいずれは秋田に拠点を移すのかもと、なんとなく思っていました。
ブラウブリッツ秋田での仕事はそうしためぐり合わせというか、私が先行して秋田に行くのもありかなと考えるようになりました。
—なぜテーマパークに惹かれたのでしょうか。
親が好きだったのが大きいと思います。平日休みだった父の休みに合わせて、学校を休ませてくれて、家族でディズニーランドに行くのは特別感がありました。
そういった特別な体験から、自分がその内側に入って働くことが自然に感じられたのがひとつ。もしかしたら自分は接客が得意で、働けるんじゃないかという謎の自信もありました。
—テーマパークで働く喜びや楽しさを教えてください。
家族で来場できるすべての場所に共通していることとして、子どもが喜んでいる顔を見て両親が笑顔になるシーン。それに勝るものはないと思っています。
—ホームゲームはBBパークが主な居場所になるでしょうか。
そうですね。スタジアムの外で仕事をしています。
—スタジアムグルメ(スタグル)は年々充実していると思います。クラブとしての取り組みに対する評価を聞かせてください。
お客さま目線でいうと、100%ではないですが、それに近い数字は出ているのかなと思います。出店業者さん目線では60%くらいですね。
昨年の平均出店数が22店舗でした。それに対する集客が比例していたかというと、比例していない試合のほうが多かったかもしれません。出店が多いほうが観戦に来られたお客さまは喜ばれます。出店業者さんとしてはより稼ぎたいというのがリアルな声だと思います。
—スタグルの出店方法について教えてください。
年間契約とスポット契約があります。スポット契約については、たとえばあるチームを応援していて、そのチームがアウェイで来る試合だけというケースや、アウェイチームの地域の食材を使っているからというケースなどがあります。
—小笠原さんから店側にアプローチすることもあるのでしょうか。
そうですね。昨季のスポット出店は、半分くらいは私がお声がけしました。とあるスイーツ系の出店業者さんは試合当日の天候に恵まれなかったのですが、店長さんは「めちゃくちゃおもしろい。リベンジしがいがあるから、またぜひ呼んで」と言ってくださいました。ほんとうにありがたいです。
今季の募集については、ありがたいことに約50店舗が手を挙げていただきました。そのなかで初出店が半分ほど。1年間19試合のスケジュールが出ていて、スポットで3~4試合出たいというお店もあります。
—出店数が増えたのはなぜでしょうか。
昨季1年間やりとりをさせてもらっていて、出店業者さんの声は決してポジティブなものばかりではなかったので、いろいろな想定をしていました。でも蓋を開けてみたら、出店を希望する方がたくさんいらっしゃいました。ありがたいです。
—小笠原さんがコミュニケーションを積み重ねてきたのも要因でしょうか。
昨季出店いただいたお店の方から「出店したがっている知り合いがいるので小笠原さんの電話番号教えていいですか?」という問い合わせをいただいたりします。
出店業者さんとしては、数字面でどうしてもドライにならざるを得ないと思います。それに、丹精込めて作っていただいた食品を無駄にするわけにはいきません。
ブラウブリッツ秋田で出店するということにある程度のステータスを感じていただいているので、そこを壊さないように頑張りつつ、お店側のモチベーションも上げられるようにお声がけをしています。
—キッズパークでの取り組みについて。
昨季初めて、キッズパークでワークショップを実施しました。三角形の布に絵を描いていただいて、それを次の試合からキッズパークの装飾として1年間使用しました。それがとても好評だったんです。
キッズパークは天候によって運営できない場合もありますが、ただ遊ぶだけではなく、学んだり作ったりできて楽しいと、親子で喜ばれています。そうしたワークショップ形式のイベントは今季も展開したいと思っています。
—ワークショップなどのアイデアはどのように生まれるのですか。
フロントスタッフとの雑談や、ほかのクラブの取り組みを見本にさせてもらうこともあります。あとはキッズパークにいる子ども連れの方に「これどう思いますか」とご意見をいただくこともあります。
–BBパークやホームゲームイベントの実施について。
まずはテーマを決めて、それに当てはまるゲストの方をお声がけしています。対戦チームに合わせる場合もあります。
—スタグルやイベントも集客に関連する重要な要素だと思います。小笠原さんはどのように受け止めていますか。
スタジアムの外のイベントだと、そこから来場に直結するのは難しいかもしれません。でも弊社を知っていただく機会として、外でやるときはよりていねいに対応していく必要があります。ファーストインプレッションがサッカー観戦ではないからこそ、受ける印象がまったく違ってくると思います。
スタグルは集客に直結するものです。どちらも真剣に、身を削る思いでやっています。
—スタグルの運営について、どんなことを心がけていますか。
試合当日の出店業者さんの配置は1cm、2cmで毎回やりとりをしています。商品の写真や情報をいただくのはもちろん、全店舗のメニューの管理・調整をしなければなりません。
1店舗あたりたくさんのメニューがあって、それがいくらになるのか。たとえば商品が丸かぶりになったり、同じ商品だけどどちらかのほうが安いとなった場合にどのようにお伝えして調整するか。
お店ごとにやり方がぜんぜん違うなかで、ある程度ブラウブリッツ秋田の型にはまっていただくというか、スタグルのルールにのっとって出店していただく。そのことにどれだけ価値があるのかを感じていただけるように心を砕いています。
というのも、アウェイチームのサポーターが多く来場した場合、出店業者さんの対応が、そのまま秋田県の印象になります。「ブラウブリッツ秋田のスタジアムで食べた料理がおいしかった」「ブラウブリッツ秋田のスタグルの店員さんがよかった」というように。それはブラウブリッツ秋田の試合にしかない価値だと思っています。
これは大事なことなので、出店業者さんにずっと言い続けています。もちろんお店側もプロで、すばらしい方々ばかりなので、ここまでしなくてもというくらいサービス精神を出していただいています。
以前お客さんに「お店の人にめっちゃ『け』って言われました。食事のたびに言われるんですが、どういう意味ですか?」という話をされたことがありました。私は「秋田弁で『いっぱい食べて』っていう意味ですよ」と答えました。こうしたところも秋田を楽しんでいただくひとつの要因になるのかなと思います。
—これまでの話に何度か出てきましたが、来場者の顔はとても重要でしょうか。
そうですね。お客さまの顔がすべてなのかなと思います。
ただ最近はお客さまの顔が見られていないと感じています。それを岩瀬社長からも見抜かれて「もっとお客さんの顔を見たらいいよ」と言われました。
—仕事をうまく回そうとしてお客を見られていなかったということですか。
トラブル対応もあったりして、そこで一生懸命やっていてまわりが見えなくなることがありました。
そうした反省も踏まえて、試合が終わったあとに毎回お見送りをして、お客さまがどんな顔をして帰られるのかを見ています。「きょうは負けちゃったけど、楽しかったからまた来よう」という顔が読み取れれば、それがほんとうに幸せですね。
–試合観戦とはまったく無関係の人がBBパークに来場するのは歓迎ですか。
大歓迎です!
まずスタジアムに来ていただくのが第一の関門だと思います。そこでキャッチできるかどうかの責任は私たちにあります。
ただ来てみただけなのにスタジアムでわーっと大声がしたら、「あの中でなにがあったんだろう」と気になると思うんですよね。「みんなはなにに夢中になっているんだろう」と、後ろ髪を引かれながら帰っていただけたらと思います。
—「10,000応援プロジェクト」成功に向けて。
ブラウブリッツ秋田は15年の歴史があります。それでもご挨拶にいくと、J2に昇格してから認知されたのかなという反応がまだまだけっこうあるので、情報発信が重要だと思います。
少子高齢化が進む秋田で、自分と同世代の人たちが、何に夢中になっているのかを積極的に発信していく。選手が一生懸命やっている姿はもちろん、私たちフロントスタッフがどんな取り組みをしているのか、ブラウブリッツ秋田があることで秋田の未来がどうなっていくのかを伝えて、全世代の方にクラブの魅力を感じていただきたい。
「10,000人応援プロジェクト」を通じて夢中になる事のすばらしさを発信していきたいです。
取材・撮影・構成:竹内松裕