秋田サッカーレポート

【無料公開】【10,000人応援プロジェクトへの道】vol.2 ブラウブリッツ秋田 広報・プロモーション課 田口楓香さん「自分たちが秋田にもっともっとサッカーの熱を注いでいけば、サッカーで盛り上がる街になる」

 

ブラウブリッツ秋田がホーム開幕2連戦で実施する「10,000人応援プロジェクト」。

このインタビュー記事では、プロジェクトの達成に向けて日夜奮闘しているフロントスタッフの思いを聞きました。

 

事業・マーケティンググループ
to C事業部 広報・プロモーション課
田口 楓香さん

 

●プロフィール

長野県安曇野市出身。1999年生まれ。中学時代に松本山雅FCと出会ったことをきっかけにスポーツ業界に進む。専門学校のJAPANサッカーカレッジ卒業後、Jリーグクラブ、Bリーグクラブを経てブラウブリッツ秋田に入社。

 

ブラウブリッツ秋田に入社したのはいつでしょうか。

20233月です。

 

入社までの経緯を教えてください。

長野県安曇野市で生まれて、中学生の頃に松本山雅FCと出会ったことが、この業界に入るきっかけです。スポーツ業界に進みたいと思い、JAPANサッカーカレッジ(新潟県聖籠町)に進学しました。

卒業後は松本山雅FC、一般企業などを経験したのち、昨年2月までB1リーグ所属の信州ブレイブウォリアーズで勤務し、昨年3月にブラウブリッツ秋田に入社しました。

 

松本山雅FCに所属されていたときは、今季からブラウブリッツ秋田に所属している小松蓮選手や賜正憲アシスタントコーチとも同僚でしたか。

いいえ。ただ、お二人は自分より1つ年上で、それぞれ通っていた高校も近かったので小松選手や賜アシスタントコーチのことはよく知っていました。共通の知人もいるのでその話題で盛り上がることもあります。

私が松本山雅FCのサポーターとして応援していた当時は、中村亮太選手や飯尾竜太朗選手(現 V・ファーレン長崎)が松本山雅FCに所属していたので、自分がスタジアムで応援していた選手と同じクラブで働くような環境がいまだに不思議な感覚です。

 

経歴としては、BリーグからJリーグのブラウブリッツ秋田に戻ってきた形になるのですね。

もともとスポーツを通じてその土地を盛り上げたいという気持ちがありました。ただBリーグで働いてみて、そのスポーツがなんでもいいわけじゃないと気づきました。自分がサッカーを観て育ったこともあり、『サッカー』で人に影響を与えたいと思うようになりました。

それで「これからどうしようか」と考えたときに、ブラウブリッツ秋田で主務として勤務している松田太智さんに相談しました。松田主務はJAPANサッカーカレッジの1学年上の先輩で、学生時代から仲よくしてもらっていました。すると「秋田でちょうど人を探しているから応募してみたら」と提案してもらい、そこから面接をして約2週間後には入社が決まっていました。

また、私が松本山雅FCのサポーターをしていた頃から応援している谷奥健四郎選手(現 ヴィアティン三重)が、かつてブラウブリッツ秋田に所属していたことも、この会社を選んだ大きな理由のひとつです。(笑)

 

松本はサッカーに対する熱量がJリーグの中でも非常に高いと思います。その地域で過ごしてきて、秋田のサッカーの現状をどのように感じていますか。

秋田と比べて自分が育った松本は特殊な街だと感じます。

松本という地はサッカーの盛り上がりをすごく感じる場所で、その盛り上がりに自分が取り込まれたからこそ、ここまでサッカーが好きになって、仕事にしたいと思いました。

秋田はまだそこまでサッカーの熱は達していないかもしれないですが、そのぶん自分たちが熱を上げていける伸びしろがあると思います。

そして自分が地元で感じてきたその熱を秋田でも生み出すことが、自分に与えられた使命なのだと思っています。秋田にもっともっとサッカーの熱を自分たちが注いでいけば、サッカーで盛り上がる街になっていくのかなと思います。

 

松本山雅FC2023年のホームスタジアム平均入場者数は8,181人で、ブラウブリッツ秋田は3,139人でした。年度によって差があるとしても秋田の倍以上。それほど多くの人が集まるスタジアムで長く過ごしたことで「スタジアムにおける日常」の感覚の違いは生まれていますか。

自分のなかでは松本のような光景が見られるのが理想だと思っています。でもまだまだそこには達していないという現実もあります。ただ一人ひとりを見れば、ブラウブリッツ秋田サポーターの皆さんもとても熱を持っています。いつか熱気あふれる景色が秋田でも見られるように、自分ができることをやっていきたいです。

あとは大切なこととして、秋田の現状の3,139人という平均入場者数に、いい意味でも悪い意味でも慣れてはいけないと思っています。

今季のJ1開幕戦のサンフレッチェ広島vs浦和レッズの試合で、ゴールが決まるたびにスタジアムを埋め尽くす広島のサポーターが一斉に喜ぶ姿に感動しました。「ああいう景色を秋田でも作りたい」と、あらためて思い描いて新シーズンを迎えました。去年からホームゲームの前にはそういった映像を見て、自分のモチベーションにして「秋田でもこの光景を絶対に作るぞ」と思いながらホームゲームの運営をしています。選手が試合前にゴールシーンの映像を見たりするのと一緒ですね。

 

–ブラウブリッツ秋田の平均入場者数はJ2でも少ないという現状があります。

そうですね。伸びてはいますけど、J2では少ないほうで、J3でも多くの人が集まるクラブもあって、そこに負けてられないという思いがあります。

チームが一生懸命J2で戦っているなかで、その後押しとしてフロントスタッフができることは1人でも多くのお客さんを集めることだと思います。「10,000人応援プロジェクト」も含めて、長く秋田を離れて高知でキャンプ生活をしてきた選手たちを迎えるために、ホーム開幕戦はいい景色を用意しておかなければと思っています。

 

サッカーチームを応援する文化がある街の様子を教えてください。

自分が松本山雅FCを応援し始めたのが2012年で、ちょうどJリーグに上がった年でした。その前から自分のまわりには松本山雅FCの熱狂的なサポーターがいて、自分の親族やクラスメイトにもいました。クラブのことを知らない人がほとんどいない、「山雅っていったらサッカーね」という感じです。老若男女関係なく、町が緑に染まっていました。その環境が当たり前で、観戦には行かなくても、みんなが気に掛けていて試合結果も知っている人がほとんど。その要素を秋田にも取り込めば、スポーツで盛り上げていくのはたやすいことなのだと思います。

秋田でいえば秋田ノーザンハピネッツは毎試合あれだけの人が集まっています。野球が好きな人も多いです。根底にはみんな「スポーツが好き」という共通点があると思うので、それぞれのお客さんを取り合うというわけではなく、お互いにどの試合も観に来てくれたらもっといい関係にもなると思います。その働き掛けをしていかないと、と感じています。

 

開幕戦のチームの戦いぶりを見て、どのように感じましたか。

新しいシーズンが始まるのは、いちサッカーファンとしても、いちクラブスタッフとしてもすごくワクワクします。(秋田テルサで行われた)パブリックビューイングの会場にあれだけの人が集まって、アウェイにも多くの方駆けつけてくれたのも今季のチームに対する期待の表れだと思います。

 

チームの取材をしていて、新加入の選手や以前所属していた選手から、ブラウブリッツ秋田は仲がいいとか、人柄がいい選手が集まっていると選手と聞きます。その印象はありますか。

そうですね。今季も新加入の選手が入って、チームがどういう雰囲気になるのかと見ていましたが、高知キャンプ中から、ベテラン選手を筆頭に、和気あいあいとやっていました。毎年メンバーが変わっても、そういう雰囲気が継承されているところが、仲がいいといわれるひとつなのかなと思います。

 

田口さんはもともと広報を希望していたのでしょうか。

前職はチケット担当をしていたので、秋田でもそういった部分で関わっていくつもりでした。広報をやると聞いたのは秋田に来てからです。

 

取り組んでみて、広報の楽しさを感じますか。

いま広報担当をやっていて、楽しさを一番に感じて仕事ができていると思います。

自分が「こんな投稿をしたい」という希望を柔軟に受け入れてくれているほかの広報スタッフにも感謝しています。

 

主な業務を教えてください。

去年はさまざまな業務を教えてもらいながら慣れることに時間を費やしました。今年はある程度ひとりでできる部分が増えてきて、情報発信で選手と関わったり、メディアの皆さんの対応をしたりと業務量は増えています。

 

–SNSも含めた情報発信力は重要性が高まっていると思います。広報担当のスタッフが増えたのはクラブにとっても大きな意味があるのはないでしょうか。

ほかのクラブを見ると、広報担当は複数人体制が当たり前です。たとえば、あるJ1クラブではキャンプに広報が4人帯同していると聞きます。それに比べるとまだまだ規模は小さいですが、自分が広報に入ることによって分業ができて、それぞれの広報スタッフのできる幅が広がったと思います。いまはSNSの更新をほとんど任せてもらっています。

 

–SNSの公式アカウントのチェックについて。

ブラウブリッツ秋田に関するハッシュタグなどは日頃からチェックしています。さまざまな内容の投稿があって、いい内容も、厳しいご意見も、すべて含めてクラブやチームに関心を持ってくれている証拠だと思うので有り難いです。その意味では、そうした方々をもっと取り込んでいくのも私たちの仕事です。

 

無反応や無関心ではなく、つかみ所があるということですね。SNSでのレスポンスで感じることはありますか。

秋田の皆さんは反応が控えめだと感じています。X(旧TwitterInstagramもフォロワーやいいねが増えている一方で、各投稿へのコメントはなかなかいただけません。

「こういうのが見たい」とコメントしていただければ、できるかどうかは別として、私たちとしては参考になるご意見はなるべく実現していきたいと思っています。サポーターの皆さんが求めていることを踏まえて、自分たちのやっていることを見つめ直す機会にもなります。もっと皆さんの意見をどんどん送っていただけたらうれしいです。

 

広報業務に関して、チームに提案や依頼はするのでしょうか。

選手が関わるさまざまなイベントには協力の依頼をすることがあります。今季であれば中村亮太選手や蜂須賀孝治選手を中心に、ベテラン選手がクラブの活動にとても協力的でいてくださるので助かります。

現在実施中のクラブハウス建設に向けたクラウドファンディングについては、キャンプ中のキャプテン・副キャプテンや選手会長などと、秋田にいるフロントスタッフと返礼品等についてのオンライン会議を開きました。いい関係を築けていると思います。

 

栗本広輝選手はSNSで毎回試合の告知活動をしていますよね。

栗本選手は「大宮アルディージャに所属していた頃から試合前日に告知をしていて、秋田でもやりたいと思っています」と直接相談をいただきました。個人のことだけでなく、チームやクラブのことを考えて動いてくれるのがすごく有り難いです。

選手の力も借りながら、もっと広報活動を大きくしていきたいと思います。

 

–「10,000人応援プロジェクト」成功に向けて。

ホーム開幕戦のベガルタ仙台戦と、中3日の栃木SC戦で合計して1万人集まれば、その後のホームゲームの盛り上がりにもつながります。

いろんな盛り上がりをホーム開幕2連戦に持っていくというひとつの柱ができて、そこに向けて社員全体で動いています。とてもいい取り組みだと思います。

「10,000人応援プロジェクト」で作成したハッシュタグを毎日見ていて「何人誘いました」とか、「今回は何人で行きます」という投稿を見掛けます。私たちが日々しつこいくらいに発信をしていけば、皆さんもそれを頭に置いて動いてくれて、その結果がそうした投稿につながっていると思います。

多すぎるというくらいさまざまな情報を発信していくこと、それが自分たちにできる仕事です。手ごたえはありつつも、まだまだ数字には表れていないので、引き続きもっと確実に来てくれる人を増やすためのアプローチを続けていきます。

 

取材・撮影・構成:竹内松裕

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ