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【頼コラム】高橋駿太の8年。

山形が3−1で群馬を下し、今季ホーム初勝利に湧いたNDスタのミックスゾーンで、敗れた側の彼は厳しい表情で、記者の求めに応じて試合を振り返っていた。だが、試合に関する質問が一段落したところで「山形に帰ってきましたね」と声をかけると、ふっと表情を和らげた。

「8年かかったけど、帰って来られた。続けてよかったなと思います」

今季群馬に加入し、開幕から12試合先発出場を続けている高橋駿太。2007年に富山第一高校を卒業して山形でプロ生活をスタートし、2年後、戦力外となって山形を離れた。あれから8年目のシーズン。その間にあるのは「這い上がってきた」としか言いようのない道のりだ。

高橋は、高校時代にU-17日本代表にも選出された俊足フォワードで、将来を嘱望されて山形入りした。当時の彼に抱負などを聞く短いインタビューをしたことがあるが、内容よりも表情の方が記憶に残っている。訥々とした口調で話しながら時折見せる、はにかむような笑顔にはまだ幼さも残っていたが、それとは不似合いなほどに、瞳には鋭い光が宿っていた。狩りを覚えたての猛禽類の幼鳥みたいだな、という印象だった。

けれども、プロの舞台での活躍を夢見た彼の情熱は、2年で行き場を失うことになる。高卒の選手を2年で見限ってしまうのかーーそれが当時の率直な感想だ。しかし、クラブが下した戦力外の判断の背景には、2008年に山形がクラブ初のJ1昇格を決めたこともあったようだ。J1残留のためのチーム編成が優先される中、実績のない若手を抱えておく体力は当時の山形にはなかったし、このまま燻らせるより、新天地で鍛え直した方が本人のためにも良いという親心もあった。結局、ベンチ入りこそあったものの1分の出場記録も残せないまま、高橋は山形を退団する。

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