浦レポ by 浦和フットボール通信

対症療法と根本治療、ビルドアップとシールオフ(封じ込め)を修正したゲーム【轡田哲朗レッズレビュー/J15節神戸戦】

(Report by 轡田哲朗)

替えが利かないと嘆くより、まずは彼らの成長を喜びましょう

浦和レッズは22日のリーグ第15節、ヴィッセル神戸戦に2-0で勝利した。前半は神戸の良い準備もあってビルドアップをかなり制限されたものの、リカルド・ロドリゲス監督を初めとしたベンチは飲水タイムあたりから徐々に修正。前線の追い込みも合わせてハーフタイムに選手交代を交えた修正を施すと、そのまま試合の流れをものにして勝利を収めた。

前半は格の違いがあったらしいけど、リカさんと試合後に話したように「そういう中でも簡単に崩れない最終ラインができてきたのは良いことですよね」という面があって、ちょっとうまくいかない時間があっても我慢していれば修正の一手があることは選手にも心強いだろう。確かに前半30分くらいまでは、山口蛍とアンドレス・イニエスタに上手くやられた部分もあり、ちょっと球際で寄せきれないところも目立っていて、難しい状況にはあった。ただ、あまり非科学的なことは言いたくないけれども、その30分過ぎにキャスパー・ユンカーが菊池とタイトに競り合いながらマイボールにしたところ、田中達也が酒井に競り勝って相手のハンドによるフリーキックを得たところ、阿部勇樹がルーズボールを勇気のあるスライディングでつないで明本考浩のミドルにつながったところと、3つ連続して局面に勝ったプレーが続いたところで、メンタル的な回復もあったように感じた。

この試合は16日のリーグ第14節ガンバ大阪戦、19日のルヴァン杯グループステージ最終節、横浜FC戦(2-0)から中2日の連チャンだったので、そこで長い時間プレーした柴戸海と小泉佳穂がスタメンから外れた。この2人が替えの利かない選手になってきている問題については、7月の中断期間に入ってからの方がテーマとしても良いだろう。大きく選手も入れ替わった新監督の1年目かつ、五輪の存在で過密日程になっているシーズンなのだから、まだ5月の時点で「あれも、これも」と要求しすぎるのもどうかと思うので、今は彼らが素晴らしく選手としての価値を高めていることを認識しつつ、成長を喜べばいいと思っている。

良い準備をして浦和対策をしてきた神戸

試合の立ち上がりで、神戸が良い準備をしてきたなと感じた部分と、少しバレ始めたなと感じたのは、浦和のストロングサイドは右の低い位置から左の高い位置にかけての斜めのラインにあること。右から質の高い前進をして、中央経由で左に持っていった時の攻撃に迫力があるチームなのが傾向になってきているので、その右の低い位置を消してボールを奪う準備をしてきた。浦和はその準備によってかなり苦しむことになった。

神戸のシステムは4-3-3でも4-4-2でも4-2-3-1でも良くて、基本的に浦和ボールでは4-4-2で組みつつ、(前半は)イニエスタが2トップの位置に出てくる。浦和は西大伍を右の低い位置に置いて3枚での前進を試みるが、そこには古橋がポジションを上げて人数を合わせる動きに担った。

この時に古橋は内側から追うので、西は多くの場合にサイドで幅を取る田中を見ることになる。しかし、ここにはかなり早い段階で、それこそ後ろが3バックに見えるくらいのタイミングで酒井が押し上げてくる。田中は「予定通り」に内側にボールを持っていくのだけど、そこで受け手になる武藤雄樹は阿部の背後から潰しにくる山口にガツンと寄せられる結果になった。

西は古橋が目の前にいるので、田中の頭を越えて流れていくユンカーに長いボールを蹴ることも難しい。こうやって、時間とスペースをコントロールされて、ボールの前進をかなり制限されることになった。その後の神戸のボール保持もかなり質が高かったが、長くなりすぎるので今回は削りたい。6月のルヴァン杯で同じやり方なら、その時にみてみよう。

飲水タイムでの対症療法、味方を離すことでボールホルダーを解放

(残り 2791文字/全文: 4398文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ