【島崎英純】2023Jリーグ第8節/浦和レッズvs北海道コンサドーレ札幌・試合レビュー『オールコートマンマークを逆手に取る。有事にも動じずに大勝!』

©Yuichiro Okinaga

アイソレーション勝負

浦和レッズ、マチェイ・スコルジャ監督の狙いは明確だった。北海道コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は自軍の選手たちにオールコートマンマークを課している。この守備戦術はその名の通り、各選手がマンツーマンで相手にベタ付きするものだ。この守備の肝は敵陣でボール奪取を目論む概念にあり、敵のビルドアップコースに全ての選手を配備する意味合いを持つ。敵陣奥深くでボール奪取できれば札幌自慢のコンビネーションアタックが炸裂する。各選手が不規則にポジションを動かしつつ近接する味方とショートパスコンビネーション、そして返す刀のサイドチェンジ&アタックが発動するのだ。札幌の定形システムは3-4-2-1だが、彼らは相手の挙動に合わせてその陣形が著しく崩れる。札幌はこのアンバランスさを逆に利用し、攻撃時に予測不能なポジション取りから相手ゴールを襲うのだ。

浦和としては、この札幌のストロングアタックを封じなければならない。採るべき手段は相手の弱点を突くこと。札幌が浦和陣内でのボール奪取を目論むならば、その局面を回避すればいい。そして、札幌のオールコートマンマークには盲点がある。全ての局面で1対1を創出する。それはすなわち、札幌陣内でも各局面で1対1が発生していることを指す。

浦和はGK西川周作、DFマリウス・ホイブラーテン、MF岩尾憲らのフィード能力の高い選手たちが次々に前線へロングパスを入れ込んだ。その到達地点ではたいてい、浦和の攻撃者と札幌の守備者とで1対1が繰り広げられている。興梠慎三vs岡村大八、関根貴大vs田中駿汰、大久保智明vs中村桐耶らはその典型例で、浦和とすれば札幌ゴールに近いこのマッチアップで個人勝負して打ち勝てば相応のチャンスを得られる。自陣での1対1と敵陣での1対1では真逆の様相を呈する。浦和は自陣での相手の”挑発”には乗らず、逆に敵陣では相手が撒いた種を刈り取りに来たのである。

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