【島崎英純】2023Jリーグ第7節/名古屋グランパスvs浦和レッズ・試合レビュー『互いに魅せた持ち味。タイト&ハードな試合展開で一歩も引かず

©Yuichiro Okinaga

タイトな展開

アウェー戦に臨む浦和レッズは盤石の布陣を組んだ。システムは定形の4-2-3-1。GKは西川周作。バックラインは右から酒井宏樹、アレクサンダー・ショルツ、マリウス・ホイブラーテン、明本考浩のセット。ダブルボランチは岩尾憲と伊藤敦樹で、2列目は大久保智明、小泉佳穂、関根貴大のユニット。そして1トップは興梠慎三で、おそらく今月末に控えるAFCチャンピオンズリーグ決勝・アル・ヒラルとの決戦までは現メンバーが純然たる主力になるのだろう。また、マチェイ・スコルジャ監督はベンチ入りメンバーを若干リニューアルした。セカンドGKの鈴木彩艶は不動で、DF岩波拓也、DF荻原拓也、MF安居海渡といった面々のメンバー入りもこれまで通りだが、ブライアン・リンセンとアレックス・シャルクの両外国人選手が帯同せず、代わりにMF松崎快、MF柴戸海、そして前戦のYBCルヴァンカップ・グループステージ第3節・川崎フロンターレ戦で途中出場から浦和デビューを飾ったFWホセ・カンテがベンチ入りした。件のACL決勝はレギュレーションにより当該試合に登録できる外国人選手が3人+1人(アジア人枠)になる。守備陣の大黒柱であるショルツとホイブラーテンの試合出場が確実視される中で、残り一枠に誰を据えるのかは注目すべき点だ。その意味において、リーグ戦の上位対決となった今節のゲームでカンテがベンチ入りしたことは非常に興味深い。

一方でホームの名古屋グランパスもサイドアタッカーの和泉竜司がベンチ入りメンバーからも外れた以外は不動の陣容が並んだ。長谷川健太監督は今季、3-4-2-1を主戦システムとし、タイトでスピーディな試合展開を目論んでいる。バックラインの守備強度が高いのは当然だが、ダブルボランチの稲垣祥と米本拓司が強烈なプレーインテンシティで中盤に君臨しているのが特徴的だ。彼らは広範囲を動き回れるスタミナを有しているうえで、ボール奪取からの挙動が速く、味方前線ユニットへシンプルにボールを付ける傾向が強い。ボール回収役を2枚置く名古屋はその前にキャスパー・ユンカー、永井謙佑、マテウス・カストロという飛び道具が構えているため、スピーディなアタックを繰り出せる態勢を常に取れている。

永井とマテウスがウイングではなくシャドー的なポジション取りをしている点も興味深い。昨季までの名古屋はふたりをライン際に張らせ、そこからのプレーアクションを求めていたように思う。しかし今季の彼らのポジションは明確に中央に設定されていて、先述した稲垣や米本のボール回収をきっかけに相手ゴールへ一直線で向かう挙動を示している。相手ゴールを強襲する最短距離は中央からのアタックだ。通常ならば防御壁を築かれやすいこのエリアを、永井とマテウスは自慢のスピードで打破する目論見がうかがえる。できるだけ敵陣側でボール奪取してショートカウンターを繰り出せればその威力も一層高まる。その狙いを兼ね備えたうえでの稲垣&米本のダブルボランチ+ユンカー、永井、マテウスの高速前線ユニット。長谷川監督のチーム戦略はシンプルにして実に有機的だ。

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