【島崎英純】2023Jリーグ第1節/FC東京vs浦和レッズ・試合レビュー『スタイル構築の途上で突きつけられた一敗』

©Yuichiro Okinaga

攻勢の前半

マチェイ・スコルジャ監督率いる2023シーズンの浦和レッズは公式戦初戦で厳しい現実を突きつけられた。

アウェーの味の素スタジアムでアルベル・プッチ・オルトネダ監督体制2シーズン目のFC東京と対峙した浦和は、試合開始から果敢にハイプレスを仕掛けた。相手ボールホルダーへ強烈にアプローチする姿勢は沖縄キャンプで一貫して求められてきた新チームのコンセプトであり、ボールを奪ったら手数をかけずに相手ゴールを強襲する意識も、ここまでの期間で各選手たちに植え付けられてきた今季のチームフィロソフィだった。

その意味において、前半の浦和はスコルジャ監督が求めるチームスタイルを選手たちが忠実に実行していたと言える。実際にFC東京の面々は浦和の迫力に気圧されていた感があり、局面での争いで劣り、パス精度を落とし、ボールを前へ運ぶのに苦労していた。

浦和のシステムは4-2-3-1で、これはスコルジャ監督が母国ポーランドで様々なクラブを指揮していた時代から一貫して用いてきた形だ。沖縄キャンプでもこの型は一切崩しておらず、試合中の可変も極力控えられてきた。システムが可変しないメリットとしては各選手の立ち位置が明確になる点が挙げられる。これによって各ポジションの役割を明快にするとともに、チーム全体の状況を把握しやすくなる。一方で、各局面の受け持ち選手を定めることで、個人能力を求められる比重が高まる傾向も生まれる。この『個人能力』とはパーソナルスキルやフィジカルの高さだけを指すわけではなく、連係・連動の質や数ミリ単位のポジショニングの把握や戦況を見極めたうえでの判断力など、その種類は多岐にわたる。また、ベーシックシステムが確立されている場合、相手システムやそのプレーメカニズムとの相性次第では、その効力が格段に増す要素もある。筆者は沖縄キャンプの初日からスコルジャ監督が求めるチームスタイルをつぶさに観察してきたが、この指揮官が掲げる指針は良い意味で単純明快で、小手先ではなく真っ向勝負を求める、いわゆる“王者”のサッカーを目指しているように感じている。

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