【コラム】『浦和を背負う責任』はクラブが教育するもの? 新強化体制の決意と、拭い去れない懸念
新体制が目指すものとは…
2019年12月12日。浦和レッズは『2020シーズン 浦和レッズ 新強化体制記者会見』を行い、会見には立花洋一代表、戸苅淳フットボール本部本部長(以下、戸苅本部長)、土田尚史スポーツダイレクター(SD)、西野努テクニカルダイレクター(TD)が出席した。
戸苅氏、土田氏、西野氏はいずれも新任で、会見では各氏が各々の役割について自ら説明している。
まず戸苅本部長についてはクラブ内で営業部門などの職務に従事してきたことを踏まえ、「フットボール本部全体のマネジメントということになります。特にトップチームの投資効率は適切か、入場者数とリンクしているか、グッズの売り上げ、パートナー、そしてホームタウン活動とのリンクはしっかりされているか、そういった経営面からの視点で見ていく、という立場になります」と話した。
一方、土田SDと西野TDは既報通り、トップチームに特化した役職に就く。両氏を任命した理由については戸苅本部長が説明している。
「土田さんは長くピッチの上で選手として、コーチとしてもご活躍いただきました。トップチームの状況が、芝の上に立てば匂いで分かるような人、そういった方だと思っています。今年は1年間、フロントで浦和レッズの中のことも知っていただきました。そういった浦和レッズのことをよく知っている方ということ、そして強いリーダーシップが、この体からみなぎるようなリーダーシップがストロングポイントだと思っています。
西野さんは選手としての実績、そしてフロントでも一緒に働いていた期間があります。そういったことで、レッズのこともよく知っています。一方で長くレッズから離れていて客観的に浦和レッズを見てきた、ここの部分が西野さんのストロングポイントであると思っています。スポーツビジネスを学び、知見があって、情報、そして人脈もたくさん持っている、そして何より、常に学び続けるという姿勢、こういったところが西野さんのストロングポイントだと思っています」
そして戸苅本部長は二人に共通した素養として「二人の共通点は、チームを強くしたいというギラギラした強烈な意志と覚悟、そういったものを感じたというのが、一番の経緯でございます。この二人から、浦和レッズの経営者の幹部が集まる会で、二人から候補者としてプレゼンテーションをしていただきました。そして浦和レッズの方向性、考え方をお互いに話し合って一致した結果、この二人に来てもらうという経緯でございます」と話した。
言葉に決意はみなぎるが…
ここからは戸苅本部長、土田SD、そして西野TDが語った内容について私見を述べたいと思う。両氏のコメント詳細は別項のレポートを参照していただきたい(中・長期的ビジョンは「浦和レッズが覇権をとる2020年代へ」【2020シーズン浦和レッズ新強化体制記者会見レポート】/https://www1.targma.jp/urakenplus/2019/12/12/post28507/)。
戸苅氏が就くフットボール本部長はトップ、育成部門、レディース部門を掌握する任務を負う。その中で土田SD、西野TDがトップチームに特化した役割を負うのは先述した通り。そして戸苅本部長は育成部門に特化した任務としてアカデミーダイレクターという役職を設けることを公言している。その人材は後にクラブから発表されると思うが、土田SD、西野TDと同じく元浦和の選手で、現役引退後は浦和のアカデミー組織に所属し、現在は今季まで他クラブで重要な職務を負っていた人物が就くことになるだろう。
戸苅本部長はJリーグが開幕する前の1992年に浦和レッズへ加入し、同年で現役を引退。そして土田SDは1992年から2000年まで、西野TDは1993年から2001年までプロとしてプレー、そしてアカデミーダイレクターを務める人材も元選手。すなわち新たな強化体制は全て浦和でかつて実際にプレーした人物が務めることになる。
土田SDは『浦和レッズの方針』として、『浦和を背負う責任』というキーコンセプトを掲げ、「浦和の街を理解し、伝えていく。サッカーの歴史があり、文化があり、熱いサポーターの方々がいる。選手は埼スタでプレーできる責任を感じることを再認識してピッチで表現していく」と言った。そのうえで『個の能力を最大限に発揮すること』、『前向き、攻撃的、情熱的なプレーをすること』、『攻守に切れ目のない相手を休ませないプレーをする』という3点をトップチームのプレー指針にすると明言した。それぞれの指針は抽象的。また、具体的な説明として挙げたラインコントロールやチーム全体のコンパクトネス遵守などの戦術面についても現在サッカーの基本的な概念であり、それ自体に独自性は感じられない。ただし、そのベーシックなプレー思想が現状のチームに欠けているという思いが土田SD以下、新強化体制にはあるのだろう。したがって、その理念が今のところ具体性に欠けても、それが来季のトップチームのプレー傾向としてピッチ上に如実に表れるようになれば何の問題もない。
土田SDの発言で注目に値するのは『3年計画』を打ち出した点にある。
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