鬼門・ユアテックでエースの宝刀が炸裂【島崎英純】2016Jリーグ2ndステージ第3節・ベガルタ仙台戦レビュー

前半は仙台の想定通りか

ベガルタ仙台は直近の3戦連続で3失点しており、守備の整備が必須だった。また、ホーム・ユアテックスタジアム仙台での浦和レッズ戦はJ1で一度も負けたことがなく、今一戦を契機に再び浮上を目論んだはずである。

仙台のシステムは定型の4─4─2で、2トップは185センチのハモン・ロペスに182センチの藤村慶太を並べた。近年の仙台は浦和に対してシンプルなクロスから、またはセットプレーから数多くの得点をマークしており、その前例に沿って各選手の役割が明確に決められていた。

MFの梁勇基、奥埜博亮、富田晋伍、三田啓貴は浦和バックライン裏のスペースへフィードボールを蹴り込んだ。ストッパーの森脇良太と槙野智章の背後スペースは狙い目と認識されていて、仙台がこれまで何度も攻略の糸口にしてきたエリアである。ハモン・ロペスや藤村がそのスペースは走り込むと、後方から間髪入れずにボールが供給される。ここからFWが溜めを作り、フォローしてきた梁や奥埜にボールを預け、最終的にはゴール前へ飛び込んでいく。

また、仙台は4バックの利点を生かしたサイドバックのオーバーラップを頻繁に繰り出した。これも浦和攻略の常套手段だ。石川直樹と大岩一貴はタイミング良く縦へ突破してクロスを送り、少なからず好機を生んだ。仙台には得点は果たせずとも、スムーズなパスワークと連動したフリーランニングで攻撃パターンを順守し、アウェーの浦和に主導権を与えない姿勢が顕著に見られた。

一方の浦和は当然3─4─2─1で、先発に名を連ねたメンバーはミハイロ・ペトロヴィッチ監督がベストと自負する布陣だった。相手が2トップを採用することで、後方でのビルドアップはリベロ・遠藤航、ストッパー・森脇&槙野の計3人が務める。一方でダブルボランチの阿部勇樹と柏木陽介はできるだけ最後尾まで下がらずに前線トライアングルとの距離を縮め、コンパクトネスを保つ努力を重ねた。

ただ、今回の浦和はパス精度が悪く、縦パス、ロングフィードなど、いずれの攻撃も閉塞してしまった。5トップは相手のボランチひとりがバックラインに吸収される形でマンマークされたために身動きが取れなかったし、サイドエリアもスペースが無く、宇賀神友弥や関根貴大が1対1で仕掛けるタイミングを掴めなかった。またGK西川周作のキックも精度を欠き、攻守転換から味方選手が鋭く前へ飛び出しても、それを生かすボール供給を成せなかった。

前半に関しては仙台の意図通りにゲームが推移した感が強い。6分に相手DFのクリアを拾った関根が強シュート。27分にはゴール左から槙野のヒールパスを受けた武藤が鋭いシュート。武藤は37分にも柏木のロングフィードをダイレクトで叩くも、いずれもGK関憲太郎の牙城に阻まれた。仙台もさしたる好機は生めなかったが、それは想定内だっただろう。彼らの依る術はセットプレーで、山本雄大主審がインプレー前の競り合いで度々仙台のファウルを宣告したために前半は浦和ゴールを襲えなかったが、後半に向けて虎視眈々と準備を整えている所作がありありとうかがえた。

(残り 3616文字/全文: 4894文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3 4 5
« 次の記事
前の記事 »