鍵となるポイントと紅白戦で見えた不安材料【島崎英純】2016ACLラウンド16第1戦・FCソウル戦プレビュー

■第1戦ホームがどう出るか

Jリーグ1stステージ第11節・大宮アルディージャ戦は1─0の辛勝。続く同第12節・アルビレックス新潟戦は0─0のスコアレスドロー。また、両ゲームは試合内容的にも相手と拮抗していて、最近の浦和レッズはコンディションが停滞、もしくは下降しているように見える。もちろん長いシーズンでは好不調のチーム全体のバイオリズムが変化し、その中で、厳しい戦いで手堅く勝ち点を積み上げられるチームがタイトルに近づく。

Jリーグの上位チームは国内リーグに加え、AFCアジア・チャンピオンズリーグ、ヤマザキナビスコカップ、天皇杯、FIFAクラブワールドカップなどの各種大会での戴冠も目指している。今季の浦和は2008シーズン以来、8年ぶりとなるACLノックアウトステージへの進出を決め、着実な成長とタイトル奪取への道程を突き進んでおり、その力を試されている。

しかし、現状の浦和は厳しい頂に辿り着くための試練に直面している。今季のACLは夏にリオデジャネイロ・オリンピックが開催される影響などもあり、グループステージ後にすぐさまノックアウトステージが実施されるスケジュールが組まれている。浦和のラウンド16の相手は昨季の韓国Kリーグ2位のFCソウルで、今季の同リーグで首位を走り、グループステージを勝ち上がったチームの中で最も手強いと目される強敵である。選手層、チームレベル共にアジア屈指の相手に対し、今の浦和が結果を残せるか。

浦和はグループステージをシドニーFCに続く2位で突破したため、今回のラウンド16では第1戦をホーム、第2戦をアウェーで戦う。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は前日の記者会見で「個人的にはどちらを先に戦おうとも、関係ないと思っている」と述べていた。厳密には第1戦の結果によって第2戦での勝ち上がり条件が大きく変わるため、確かにホームで先勝を果たせれば続くアウェーで落ち着いたゲーム運びができる可能性もある。一方、ホーム&アウェー方式にはアウェーゴールというレギュレーションがあり、敵地でのゴールが勝ち上がりの条件として大きな重みを持つ。それを加味すれば、明日の埼玉スタジアムでの第1戦で浦和がソウルFCを完封できれば、それだけで相手に多大なプレッシャーを与えられる。

ただ、今の浦和は戦術が明確に固められており、良い意味でも悪い意味でもプレーバリエーションが定まっている。ホームで畳み掛け、アウェーで慎重に戦うために多岐に渡る戦術を駆使できれば良いが、ペトロヴィッチ監督率いる浦和に引き出しの多さを求めるのは難しい。むしろホームでもアウェーでも持ち味を発揮した時のみ、このチームは結果を得られてきた前例がある。だからこそ今回も、レギュレーションや対戦相手のレベルに囚われることなく一途に戦い抜くしか方策はない。

例えば浦和は、グループステージのアウェー・広州恒大戦では萎縮した前半に2点を先行されるも、前半終了間際に相手GKのミスから追撃点を奪い、後半は本来のコンビネーションプレーを発動して同点ゴールをもぎ取り、中国スーパーリーグ王者に冷水を浴びせた。そして広州にとってリベンジマッチとなった埼玉スタジアムのゲームでは、ジャクソン・マルティネス、リカルド・グラール、パウリーニョらの猛者を相手に一歩も引かずに真っ向勝負を仕掛け、武藤雄樹の決勝ゴールで2013シーズンのACLに続き、広州をホームで下した。

今季の浦和はアジア最強と謳われていた広州恒大との連戦で1勝1分の成績を収めたことで自信を付け、その後のリーグ戦でも高質な試合内容で相手を圧倒するゲームを続けた。その流れはしばらく継続されたのだが、シーズン開幕直後から続いた過密スケジュール、オーストラリア・シドニーへの長距離遠征などによる疲労が蓄積されたのか、ここに来て一気にペースダウンしている。

最近の練習では主力選手の何人かが別メニューでコンディション調整する姿が見られる。先日の新潟戦前日の練習では阿部勇樹と森脇良太がミニゲームに参加せずに翌日の本番へ臨んでいた。そもそもリーグ戦で全試合フル出場を続けている阿部は大半の試合前日に別メニュー調整となっており、体調維持に努めていることがうかがえる。また、リオ・オリンピック本大会への出場を決めるために年初からアジア最終予選を戦い、オフ期間をあまり取れなかった遠藤航の体調も留意されていて、年齢の差異ではなく、あくまでも主力選手のコンディション管理に主眼が置かれているように思われる。

■相性が気になるFCソウルのシステム

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