慎重過ぎた横浜FMに対し、疲労の色濃い浦和が応戦 【島崎英純】2016J1リーグファーストステージ第6節・横浜F・マリノス戦レビュー

■広州恒大戦、激闘の代償

浦和レッズは満身創痍だった。パススピードがいつもより緩かったし、各選手のフリーランニングも少なかった。チームの拠り所であるはずのパスを受ける前の判断が遅れ、プレーが連動しない場面も散見された。心身の疲労が蓄積されると当然身体の動きは鈍り、思考スピードも減退する。本来豊富に生まれるアイディア、修練で身に付けたパターンも身体の中で音信が途絶えてしまう。

おそらくチーム内で最も疲労を抱えていたのは柏木陽介だろう。他のチームメイトが一旦リーグ中断期間を過ごす中で、柏木はGK西川周作、DF槙野智章とともに日本代表へ招集され、ロシアW杯・アジア2次予選を戦った。もちろん西川と槙野も同じくらい身体面の負担があったはずだ。しかし昨季終盤に膝を痛めてリハビリを続けて今季初頭はリカバリーに追われた柏木からすれば、今シーズン序盤はエンジンを吹かし過ぎた印象がある。西川も同じく左膝遊離体除去の手術を受けてリハビリからスタートしたが、ピッチを動き回るフィールドプレーヤーとゴールマウスに鎮座するGKとで疲労の差異が生まれているのかもしれない。

疲労のピークにある筆頭が柏木として、他の選手も総じてダメージを負っていたのは間違いない。4月5日のAFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第4節の広州恒大戦は激闘で、ハイレベルを誇る広州恒大の選手と真っ向勝負して勝利した成果は大きな代償をも負った。キャプテンの阿部勇樹、リベロで奮闘する遠藤航、激しく上下動するサイドアタッカーの宇賀神友弥、関根貴大、最前線で身体を張り続けるストライカーのズラタンなどは全体練習に加われずに別メニュー調整を強いられていた。シーズン序盤にこれほど多くの選手が全体練習をこなせないのは過去を振り返っても稀だ。Jリーグでは5試合を終えて4勝1敗の勝ち点12で首位に立ち、ACLでは広州恒大を破って首位シドニーFCと勝ち点2差の2位に付ける浦和は今、その反動に晒されている。

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