冷静なゲーム運びで準決勝へ!【島崎英純】2015天皇杯準々決勝・ヴィッセル神戸戦レビュー(2015/12/27)

鍵を握った前線3人

浦和レッズの選手たちの動きは鋭く、パワフルだった。チャンピオンシップ準決勝のガンバ大阪戦から約1か月のインターバル。その間に1週間のオフ期間もあり、チームはリフレッシュされた状態で試合に臨めたようだ。試合間隔が空けばゲーム感が鈍る懸念もあったが、今回の浦和にその素振りはなかった。Jリーグ2ndステージ第17節で5─2と大勝したヴィッセル神戸に対して、今回も試合開始から猛攻を仕掛けて圧倒し、秀逸なアタックで相手の腰を引かせた。

武藤雄樹曰く、今回はこれまでの反省を加味して前線トライアングルの動き出しに若干の自由度を与え、巧みなムービングで相手守備網を打開する意図があったという。確かに浦和攻撃陣は1トップ、シャドーが特定のエリアに留まることなく動き続けて相手マーカーを幻惑することに成功した。

普段ならば1トップが最前線に張り、右シャドー、左シャドーの位置が変わることはほとんどない。しかし今回は1トップの興梠慎三が下がってシャドーの武藤や李忠成が前へ出たり、武藤と李の位置が左右入れ替わったりするなど、これまでと異なるポジショニングで攻撃を構築していた。ネルシーニョ監督率いるヴィッセル神戸は浦和と同システムの3─4─2─1で対峙してミラーゲームを仕掛けるため、各選手の受け持ちマーカーが明確に決まっている。その中で浦和攻撃陣はあえてポジションを逸脱して攻撃構築を図った。その結果、神戸守備網は浦和の選手を捕まえきれず、試合開始からマークを頻繁に外してピンチシーンを迎えていた。

22分の浦和の先制点は前線トライアングルの巧みなパスコンビネーションから生まれたものだ。武藤から興梠へパス、そこから興梠と李のワンツーパスが発動し、容易く神戸バックライン裏へ抜け出した興梠が鮮やかにフィニッシュした。1,2、3と連続してワンタッチパスが繋がっていく中で、神戸守備陣は浦和の選手をまったく捕まえられなかった。ミラーゲームの鉄則である局面バトルすら実行できず、浦和攻撃陣にズタズタにされた感がある。

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