「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

☆無料記事☆【プレイヤーズファイル】DF3昌子源「一体感のある応援、迫力のある応援があると選手にはすごい届く」(2016.11.11)

 カシマスタジアムへチームバスが入るとき、昌子源は必ず目に入る横断幕があるという。

「“共闘”という言葉が出てるじゃないですか。最近、疑問に思う」

 選手にすれば自身やチームのプレー以外はタブーなのかもしれない。だが、昌子は敢えてそこに踏み込んでいった。

「川崎戦で僕が感じたのは、アウェイの川崎さんのサポーターの方が声が大きかった。むこうは年間優勝がかかっとったし、うちは消化試合。応援のし甲斐には差があったし、その期待に応えられない僕らは情けない。だけど、川崎戦の応援は残念だった」

 

 確かに、記者席からもそれは感じた。試合開始当初から、もっと言えば試合開始前から声量では相手に圧倒されていた。

「それに見合う結果を出せているのかと言われれば、そうでないのは本当に情けない。でも、一体感のある応援、迫力のある応援があると選手にはすごい届く。応援なんて意味ないと思ってる人もいるかもしれないけれど、普段は届かない一歩が届いたり、サポーターの応援にはなかなかの力がある。鹿島は数々のタイトルを獲ってきたクラブ。それは選手もすごかったし、フロントもすごかったからだと思うけど、サポーターもすごかったからだったと思う。それをまずサポーターに伝えたい」

 結果を残せていない情けなさは重々承知している。しかし、だからこそ手を携え一体となって戦う必要があると訴える。

「いまの僕らには運もない。2試合連続でバーに当てたり個人的にも運が無い。僕はサッカーの神様はほんまにおると思っているけど、そのサッカーの神様が勝たせてくれる運をどうしたら持ってこれるのかとすれば、それこそ“共闘”だと思う」

 選手はピッチで闘い、サポーターはスタンドから後押しする。その一体感が、これまで入らなかったゴールを入るようにさせると、昌子は本気で信じていた。

「ここ何試合かは、内容はよくても負けてる。そこに結果を持って来る、強引にでも持って来るためには、『俺が点を取ってやる』という気持ちも大事やし、誰かがミスをしたらカバーする、チームを助ける気持ちも大事になってくる。消化試合に2万人も入ってくれたことは嬉しいけれど、それを踏まえて共闘しないと勝てない。選手だけの力で勝てたらいいけれど、結果に結びついていない。いまはサポーターの力が必要だと思う」

 

 悲痛な叫びに聞こえるかもしれないが、しかし、昌子は子どものように目をキラキラさせていた。リーグタイトルを獲る意味もそうだが、それを獲得したあとに待っているさらなる戦いに思いを馳せる。

「目の前に大きなチャンスが転がっている。優勝したらトヨタカップ(現:クラブワールドカップカップ)に出られる。下手したらレアルとやるんすよ。勝点で1213も離された不甲斐ない成績を残したのに、それをもぎ取るチャンスがある。1シーズン制だったらそんなチャンスもない。燃えない訳にはいかんやろ。よく考えたらエグイと思う。勝ったらトヨタカップやで」

「クリロナとかベンゼマとか、オレがバリ止めたら、レアルからオファーが来るかもしれない。無いとは思うけど(笑)、他の国のクラブから声がかかるかもしれない。自分の実力・名声をあげるためにも、そのチャンスが目の前にある。拾えるものはすべて拾って、獲れるものはすべて獲りたい。目の前のことも大事だけど、大きな目標を持つことも大事だと思う」

 

 鹿島だから勝てるわけでない。勝ったから鹿島であり続けられる。昌子は、ゴールだけでなく、その伝統も守りたいのだろう。

「鹿島のエンブレムはそんなに軽いもんじゃない。それを付けて軽いプレーはできない。最後は、気合いですね」

 “気合”とは、互いの間の気分。呼吸。それがピタリと合ったとき、負ける気はしないはずだ。

 

 

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