秋田サッカーレポート

【無料公開】ブラウブリッツ秋田「J1クラブライセンス申請に関する記者会見」における質疑応答全文

 

ブラウブリッツ秋田が6月30日、ソユースタジアムで会見を開き、J1クラブライセンスの申請状況を説明しました。岩瀬浩介代表の説明はクラブ公式サイトに掲載しているので、この記事ではメディアによる質疑応答を掲載します。質問に対する回答者はすべて岩瀬代表です。

 

 

–秋田市の書状に令和8年に着工したいとありますが、例外規定の期限を意識したものでしょうか。

いや、特にそれはまったくないと思います。今回われわれはこの例外適用申請ではない形の、旧ルールのほうで2018年にすでに申請をしておりますので、この例外適用申請というのは、2019シーズン以降の申請という形になりますので、われわれは対象には正直なってないです。ただ緩和されたルールにのっとったとしても、というところで、参考にお話をさせていただいた次第です。

 

–J2昇格からスタートする例外規定とは異なる申請ということでしょうか。

そうですね。

 

–Jリーグのスタジアム整備の状況確認で屋根に関する記載がありましたが、トイレに関する指摘もあったでしょうか。

2018年の6月末に申請をした際に、基本的にはここ(ソユースタジアム)を改修するのではなくて、新スタジアムを進めていくということで進んでます。ただ旧ルールに合わせますと、まずはここの施設設計上といった部分では、大きく屋根とトイレがないことになっております。特にそこに対してリーグのほうから、トイレはどうなってるんですかであったり、屋根はというよりも、新スタジアムの構想がどのように進んでるかに対して話し合いをいただいております。

実はこの2つの制裁(トイレと屋根)を受けていたクラブはもうひとつツエーゲン金沢がございました。ある意味われわれが目立ってしまっているのは、ツエーゲン金沢は、実は昨日私も見に行ってきたんですけども、9月にすでに1万人収容の屋根付きのサッカー専用スタジアムが出来上がる形になっておりまして、2つの制裁を受けているクラブは、日本全国で秋田だけになっている状態です。

トイレ・屋根カバー率不足スタジアム公表…名古屋、C大阪、町田は制裁対象なくなる

https://web.gekisaka.jp/news/jleague/detail/?342103-342103-fl

 

–Jリーグとしては、2つの制裁を受けているのが秋田だけだからではなく、当初のライセンス申請からの超過期間を問題視しているのでしょうか。

そうですね。

 

–ライセンスがなければJ3降格になると思いますが、その危機感について。

先ほどチーム、選手たちにも説明をしてきました。不交付という可能性もゼロではないことを認識してもらいたいということ。と同時に今日(メディアの)皆さんからのいろんな報道を通して、たぶんいろんな表現をされて(情報が)出ていくかなと思うので、その不安というか心配といったものを(なくすために)、先にこういった状況の対応をしていると説明しました。

 

–万が一J3降格になった場合のホームスタジアムについて。

ASPスタジアムでもJ3では可能だと思いますけど、申請の内容はまた変わってくると思います。ただ2018年に申請をしたもの、という点を踏まえると嘘ということにたぶんなってくると思うんですね。(そう判断された場合は)果たしてJ3にもいられるのかという状況になってくるので、そうなってくると、最悪の事態になってくるかなと思います。

 

–秋田県と秋田市の意向表明書は今日中にリーグ側に送って先方が確認するのでしょうか。

一旦はメールで出して、その後、ある程度ヒアリングなどがあったなかで最終的な結論に至ると思います。

 

–意向表明書を受けてのJリーグの判断について。

受理はすべてされるかなと思っています。「いや、これじゃダメだよ」というようなことは、もう事前にある程度お互いでやり取りで消化している部分でありますので。今回、今日をもって正式に提出して、それを含めたなかで判断していただく形になります。

 

–判断の結果がわかるのはいつになるでしょうか。

結果がわかるのは、9月末に(ライセンスの)判定が行われますので、それまでの間に審査が行われて進んでいくところです。

 

–今回の意見表明書は少しでも判断のプラスになるような内容でしょうか。

私たちは前回の2018年6月末に出された意向の表明書も確認をさせていただいております。5年間という時を経て、より具体的な年月といったものもここの記載に落とされて、そして整備費の負担という言葉もいただいておりますので、より具体的なものにはなっていますけれども、この5年間という間をリーグ、そしてFIBがどう審査をしていくか。そしてこの後の計画がどのように進んでいくかが非常に注視されている部分ではないかと思っております。

正直、この意向表明書がパッと出たものであればいいんですけど、過去5年前に出たものとの比較をしたときに、その5年間の時を照らし合わせたらどういうふうな審査結果が出るかといったものは、われわれにはちょっと想定はできないかなと思ってます。

 

–この件の説明をしたときの選手たちの様子などについて。

選手たちは本当にひたむきに、目の前の試合に向けて、自分たちが来場者の方々であったり、(スタジアムに)来られないファン・サポーター、県民の皆さまに対して何を伝えられるかということを、ある意味本当にそれだけを考えてやっておりますので。寝耳に水というか、ちょっとネガティブな話ではあったものの、とにかく今週のいわき戦に集中して。何か動揺するだとかそういった様子は特になかったです。

 

–J3ライセンスの要件は満たせるのでしょうか。

2018年6月末にJ2ライセンスの取得に向けてある意味特例措置をJリーグからいただいております。それは新スタジアムを整備するという大前提のなかで進んでいたものが、いまの時点ではそれと捉えられないという判断がされたときに、ここにも書いてある疑義が生じているという形ですね。それでJ3のライセンスを満たしているか、付与するかという判断は、私たちにはまったく想像はできないなと思っております。

 

–ライセンス取得のやり直しはできないのでしょうか。

できないですね。

 

–いまの状況を岩瀬社長はどのように受け止めていますか。

非常に危機感を抱いております。いままでにない不安もありますし、これまで支えていただいておりますファン・サポーターの皆さまであったり、クライアントの皆さまであったり、もしくは市民県民の皆さんであったり、何とか期待に応えたいという思いで上を目指してやってきましたので。上を目指せない状況になってしまうと、特に先ほどご質問にあった通り、われわれは本当に最悪の事態が起こりかねない状況も(可能性は)ゼロではないのかなと思っております。

一方こういった危機感のある状況で、秋田県さま、そして秋田市さまからはより具体的な内容の意向書をいただけたのかなと思っておりますので。本当にまずは感謝をしたいと思います。一緒にこの危機的状況を何とか乗り越えていきたいなと思っております。

 

–この状況になった要因について。

難しい質問ですね。相手あることですから。僕らの意向だけで進められるべきものでもないですし、それ相応の税金の費用的な負担もありますので。そういった民意形成であったり協議においては、そのスピード感といったものはもしかしたら、この例外規定に照らし合わせても、若干なりとも遅れている部分もあるのかなと思っております。

 

–進めていく上でのネックは税金の投入についてでしょうか。

(スタジアムの)仕様的なことだけではないのかなと思ってます。場所の選定、その場所でどのようにやっていくか、端的にお金だけというわけではないですけども、複合的要素が絡んでいるのかなと思っております。

 

–特別目的会社の事業主体として検討されていると思います。知事からは無理ではないかという話もあるなかで、現時点でのスタジアムの構想について。

知事がおっしゃってることも十分に理解をしております。昨日金沢に行ったという理由も、その辺も含めて。まずは金沢スペックをベースに考えながらも、これは民間の資金も導入されて進んでまいりますので、県と市の一定の負担が、金沢市スペックであったらどれぐらい果たして出していただけるのか。そして国のいろんな補助なども、金沢スペックであればどれぐらい持ってこられるのか。そしてその上で民間の資金調達がどれぐらい可能になっていくのかを、しっかりと示していきたいと思っております。

実際の具体例で申し上げますと、群馬県の太田市ですね。Bリーグのバスケットチームのアリーナ建設が始まっていると思います。そこに対して、オープンハウスさんが40億の企業版ふるさと納税をしております。そういった事例もございますし、サッカー界ではザスパクサツ群馬の練習場、クラブハウスを前橋市に、メインスポンサーのカインズホームさんが3年間で18億円の企業版ふるさと納税の寄付を入れているという事例もございますので、決してわれわれが最初に提案した金額というものが不可能な数字かというとそれはゼロではないのかなと思ってます。

資金調達力にかかってくるのかなとも思いますので、そこはわれわれも努力をしながら、その上で市と県としっかりと話をさせていただきながら。例えばですけども(県や市が)「金沢スペックでこれぐらい(の金額を)出します」といったものを、(ブラウブリッツ秋田が)「資金調達がある程度できたんで、大きなものを作りたいんです。なのでもうちょっと頑張ってくれませんか」と(県や市に対して)言うのは、われわれとしても違うのかなと思ってます。まずは金沢スペックといったものをベースに考えた上で、われわれの資金調達能力がカギを握ってくるかなと思っているところです。

 

–屋根付きを作るのは大前提でしょうか。

どこの屋根でしょうか。観客席ですから全天候型ですね。もちろん基準を満たさないと意味がないので。まずは金沢スペックの、観客席の屋根が覆っているスタジアムをベースに、スタートに考えていきたいなと思っています。

 

–5年というタイミングでJから通達が来たことについて、最初の申請時に決められていたのでしょうか。

いや、特にそういうわけではないです。以前からこの整備状況、われわれもこの新スタジアムに対する活動の報告という形で、県と市、われわれがどういった動きをしてきているのかは随時報告をさせていただいておりました。そういったなかでも、やはり懸念は示されていたなという感覚は、これまでももちろんございました。なので私たちとしては、いち早く具体的な整備計画を進めていくためにもといったところで、これまでも県と市の皆さまと協議を重ねながらやってきたつもりではありますけれども、それを見かねて、今回こうしたタイミングで通達をクラブにいただいている次第です。

 

–5年の間にJリーグからスタジアムの計画がどうなっているかの質問はあったでしょうか。

基本的に、ライセンス申請時にクラブを通して新スタジアムについての活動報告、そして今後の計画というものは随時提出をさせていただいていた次第ですので、具体的にそういった内容を求められたのは初めてかというとそうではないですけども、意向表明を改めて行ったもの(の理由)は、こういった強い口調の通達をいただいたのは初めて(のケースであるから)になります。

 

–最悪の状況とはクラブが消滅することでしょうか。

消滅という言葉がどうなのかといったところはあるんですけども。選手たちはJ2だからこそこのブラウブリッツ秋田に来てくれている。それがJリーグにいられないとなると、ここにいる意義や意味、価値、そういったものはたぶんなくなってしまうのかなと思いますので。消滅はしないですよ。(現在のチームが)解散ということはもしかしたら一旦はありうる話なのかなとは思います。

 

–9月末までにクラブとしてやらなければいけないことについて。

いや、もう今日の今日なので、これまでこの文書をいただいてからずっと、どういった意向の表明をいただけるのか、市としても県としても協議して、そしてこういった温かい、熱い言葉をいただいたと思っているので。やれることはすべてやってきたかなと思いますし、あとはこの後が大事になってくるかなと思ってます。

交付されたとしても、先ほど申し上げたようにもしかしたら何かしらの条件などがつく可能性も大いにあると思いますので、われわれとしては、何度も申し上げます通り、1年でも半年でも早く着工にこぎつけられるように進めてまいりたいと思ってます。

 

–新スタジアムの事業主体となる民間企業について。

基本的にはわれわれが主となってやってまいりたいなと思ってます。ここに関しては非常にセンシティブな、少し神経をとがらせなければいけないところかなと思っております。今の段階でどういった形というのは内容を伏せさせていただきますけども、例えばFC今治さんは民設民営という形でやられました。母体となる今治のサッカークラブの傘下に、ある意味グループ会社みたいな形で株式会社を設けて進めておりましたので。いろんなケースが考えられるとは思いますけども、基本設計だったり技術、建築を進めていけるような会社をしっかり作っていきたいなと思います。

他の民間の資金調達も大きなカギになってまいりますので。そこに関して申し上げられるのは、われわれの実績ある企業版ふるさと納税のスキームであったり、関東でもやらせていただいておりますけどもクラブファンドであったり、よくあるスタジアムの名前のプレートですね。ああいった個人の寄付であったり。または個人版のふるさと納税の窓口を開いていただくであったり。いろんな手法をいま準備しておりますので。例えばどこに行っても、レジの横には「みんなでつくるスタジアム募金」みたいな箱があるですとか、そういったものも準備は着々とできております。どこの段階で一気に広げていくかといったものは、その目的会社ができたタイミングにはなってくるのかなと思っております。

 

–ブラウブリッツ秋田として新たな事業計画を作ることはあるでしょうか。

今回の意向がなくても、われわれは県と市と一緒になって事業計画を作ると。資料の2-1の2枚目にあります通り、経緯の②ですね。2024年、令和6年3月スタジアムを盛り込んだ秋田市外旭川地区まちづくり基本計画の策定が予定をされております。スタジアムに関しては県と市、クラブが基本計画を協議し、ここに盛り込む形になってまいりますので、ここに向けて一緒になっていきたいと思います。

 

–現状で県民・市民はなにかできることはあるでしょうか。

よく県民機運という言葉が知事、市長からも聞かれます。県民の皆さんには(スタジアムに関する)資金(協力)というよりも、まず試合に足を運んでいただいて、一緒になってこの大事業を成し遂げる。まずはひとつ行動を起こして、ぜひ選手たちにエールを送ってほしいなと。

ご存知の通り、(チームは)一昨日の試合で、大金星という形で、清水エスパルスに対してしっかりと自分たちのスタイルを貫いた勝利をやり遂げてくれました。例えばホームゲームで、専用のスタジアムで勝利を県民の皆さんに見せられたら、より多くの方々が勇気や希望、そして日々の活力といったものに生かしていただけたのではないかなというふうに思います。そういった意味でも、県民の皆さんと一緒になって、この事業を何とか成し遂げていきたいという思いでおります。

* *

現時点で明確になっているのは、少なくともライセンスの判定が出る9月末まで、ブラウブリッツ秋田に関わるすべての人が宙ぶらりんになること。この不安定な状況に抗う術があるとすれば、岩瀬代表が言っているように、腹を据えて、顔を上げて、筆者も含めた一人でも多くの人がスタジアムに足を運んでチームを後押しし、「なんか楽しそうだな」「盛り上がってるな」という県全体の機運を高めていくことなのでしょう。

取材:竹内松裕

 

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