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【山形vs熊本】レポート:ニューフェイスの活躍は反撃の狼煙となるか。

■2016明治安田生命J2リーグ 第10節
7月6日(水)山形 4-1 熊本(19:04KICK OFF/NDスタ/3,303人)
得点者:21’栗山直樹(山形)29’鈴木雄斗(山形)30’ディエゴ ローザ(山形)34’ディエゴ(山形)63’アンデルソン(熊本)
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この日のNDスタは降りしきる雨。水を含んだ芝の上でパスをつなぐサッカーを強行するよりも、割り切って長いボールを使おう。それは一見、当たり前の判断のようだが、この試合のモンテディオの成功の要因の一つは、それを徹底できたことにある。

中二日でのイレギュラー開催であり「できるだけ元気な選手を使いたい」という石﨑監督が組んだ布陣には、今季初先発の鈴木、14試合ぶり先発のディエゴ・ローザが名を連ねた。そして4バックにシステム変更して以来出番を減らしていた栗山もスタメン入りし、久々の3バックが実現した。

ロッカールームのホワイトボードには、ピッチのどこに水が溜まっているかが図示され、アウェイ側、つまり前半の攻撃方向により水が溜まっていることは選手間に共有されていたようだ。「シンプルに相手の裏を突いていく。そうすればキーパーまで転がらなくてボールが止まる」と監督も説明したように、止まるボールを前提にゲームプランは立てられていた。

両チームのピッチ状況への認識の深さの差が出たのが先制点につながるコーナーキックを得た場面だ。熊本の選手がタッチラインに向けクリアしたボールがバウンドせずにゆっくりと転がる。すぐに反応した山田が収めようとするのを見た片山が慌てて対応に来たのだが、山田が先にコントロールし、最終的には片山に当ててコーナーキックを得る。そのコーナーキックから、栗山の記念すべきプロ入り初ゴールが生まれた。

その栗山が「雄斗の2点目が早かったから、(自分のゴールは)忘れ去られてるんじゃないかな」と苦笑するように、追加点は8分後。山田のパスを受けた鈴木が切り返しで一人かわしてシュート。栗山と同じく今季新加入、しかも怪我で苦しんできた選手のゴールだけに、選手・スタッフも、雨をものともせず駆けつけたスタンドのファンも大いに湧いた。

さらにその直後、3点目が入る。「今日ローザが入ったのは前半のボールを活かしたいというのもありましたし、相手のディフェンスラインも裏が不得意な感じがしたのが今日はハマリました」という渡辺の言葉どおり、高木のロングボールにスピードのあるディエゴ・ローザが反応。飛び出したキーパーの前で減速したボールに詰め、ループでJ初ゴールを決めた。浮き足立つ熊本に畳み掛けるモンテディオ。34分にはペナルティエリア内で田代が園田のファウルを受けて得たPKをディエゴが蹴り込み、4点目をマークした。この後、ディエゴ・ローザがこの日2枚目のイエローカードを受けて退場したが、10人の戦いになった後半も熊本の反撃を1点に抑え、雨の一戦を完勝で終えた。

この試合は4月に発生した熊本地震により延期されていた第10節。これでモンテディオは前半戦の21試合を消化し、7勝7敗7分と全くの五分で折り返す。昇格を狙う以上、後半戦はかなりのペースで勝点を積み上げていかなければならないが、反撃に向け、固定されつつあったレギュラーメンバー以外の選手が結果を残したこの試合の意味は、想像以上に大きいかもしれない。

文/頼野亜唯子

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