浦和、上海で貴重なアウェーゴール! アドバンテージを得て第2戦へ【島崎英純】AFCチャンピオンズリーグ準決勝第1戦・上海上港戦レビュー

周到に準備された戦略

 浦和レッズは、上海上港用の対策が入念に施されていた。

 堀孝史監督が採用したのはこれまで通りの4-1-4-1だったが、今回の戦略で鍵を握ったのはインサイドハーフの長澤和輝だった。フィジカルコンタクトに秀で、ボールキープ能力も高い彼に課せられた役割は中盤でのバランサー。攻撃時は柏木陽介とともに敵陣へ入り込んで1トップ・興梠慎三や左サイドハーフの武藤雄樹らと近接するが、攻撃から守備へ移り変わったときはアンカーの青木拓矢と並列になってスペースを埋めた。

 長澤は局地戦で相手に対して一歩も引かなかった。フッキ、オスカル、オディル・アフメドフといった猛者にも体を張り、味方選手へパス供給する役目を十全にこなした。彼の存在無くして今回の浦和の戦術は成り立たない。当初はアフメドフ、そして上海上港のキャプテンであるツァイ・フイカンに対して浦和のインサイドハーフがどれだけ持ちこたえられるか懸念したが、それは杞憂に終わった。もちろん値千金のアウェーゴールを奪い、マン・オブ・ザ・マッチにも選出された柏木の存在感は際立っていたが、それも全ては長澤がチーム全体のバランスを適切に保ったからだ。

 また、それに付随してアンカーの青木も素晴らしい働きを見せた。彼もまた長澤と同じく中盤で辛抱を重ね、オスカルだけでなく、バイタルエリアへ入ってくる1トップのエウケソンや両翼のフッキ、ウー・レイ、そしてボランチ・アフメドフらの侵入を許さなかった。また青木は柏木の得点に繋がるフィードを供給してもいる。青木と長澤の共通点はアジアの舞台でも一切物怖じしないこと。アウェー・上海体育場は相手サポーターが多数詰めかけて異様な熱気に包まれていたが、彼らのプレーには揺らぎがなく、その落ち着いた所作が周囲の味方にも伝播して時間が経過する毎に中盤が安定化した。

 また、堀監督は4バックの守備を明確に修正している。横幅は自陣ペナルティエリア内で保ち、中央を固めることで相手強力攻撃陣を封殺しようとしていた。ただし、左サイドバックに入った槙野智章は異なるタスクを与えられていて、彼はフッキをマンマークする役目を担い、時にはハーフウェーライン付近まで追いかけてプレス&チャージを仕掛けた。フッキに前を向かせて突撃されると厳しい局面を迎えることはグループステージ第1戦を踏まえて承知済だった。それを見越して、堀監督は槙野にシンプルなタスクを与えたのだろう。

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