湘南の猛攻を浴び、潜在能力を呼び覚ます。鮮やかな逆転で今季初勝利。【島崎英純】2015Jリーグ・ファーストステージ第1節・湘南戦レビュー(2015/3/8)

感銘を受けた湘南スタイル

凄まじい激闘だった。満身創痍の浦和レッズは湘南ベルマーレの猛威に晒されながらも怯まず、興梠慎三、宇賀神友弥、那須大亮のゴールで逆転勝利を収めた。今季公式戦で3連敗を喫して周囲に不穏な空気が流れる中、浦和は自らの力を誇示して今季のチャンピオンを狙う立場であることを証明した。この日彼らが見せた意地、魂を高く評価する。

ただ、ゲームは非常にスリリングで、両チームともに勝者に相応しい内容を披露した。

前半は圧倒的に湘南のペースだった。曺貴裁監督が作り上げたチームは強烈な光を放つスーパーアグレッシブな集団だった。前線から猛プレスを敢行し、ボールを奪ったら高速で攻守転換する。24分のプレーでは自陣でボール奪取した瞬間に6人の選手が浦和ゴールに殺到し、最後は三竿雄斗の左クロスを大槻周平がフィニッシュした。浦和は槙野智章がゴールライン付近でボールを足に当てたことで失点を免れたが、鮮やかかつパワフルな湘南のカウンターアタックに浦和は崩壊寸前に陥った。今、ヨーロッパではディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコ・マドリーの破壊的な高速攻守転換が猛威を振るっているが、湘南はそれと相似した凄まじいスーパーカウンターを繰り出した。圧巻のプレーだった。湘南は守備から攻撃に移った時だけでなく、攻撃から守備へ移行する時のスピードも速い。湘南の選手には相当な運動量が要求され、実際に後半はスタミナを消耗して勢いが削がれたものの、迷いなきチームコンセプト、全力を尽くすスタイルは率直に賞賛したい。

当然浦和は湘南のチームスタイルを熟知していた。それは浦和の前半のプレー傾向を観察すれば明らかだ。本来の浦和は後方で丁寧にパスワークしてビルドアップし、敵陣中央エリアに陣取る前線トライアングル(1トップ+2シャドー)に縦パスを送るのが常套手段だ。だが相手バイタルエリア付近は監視が厳しく、安易なパスはインターセプトから相手カウンターを誘発させる危険を伴う。そこで浦和は今回、後方でボール保持すると潔く湘南バックライン裏のスペースへロングボールを蹴り込む戦法を用いていた。浦和としてはまず、中盤での攻守転換から湘南の攻撃を浴びるリスクを回避するために敵陣へのロングボール供給でしのぎ、様子を伺おうとしたのだろう。

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