【浦研プラス】Q&A特別版(2012/1/6)

島崎英純への質問

リーグ戦のファウル数ワースト1について

【Q1】

リーグ戦のデータでチームのファウル数がワーストだったとのことです。確かに相手の突破をファウルで止め、しかたない状況が多かったと思いますが、選手の不用意なファウルも目立ったように思えます。このような状況はディフェンスシステム、戦術の熟成度、選手のクオリティー、など、何が問題だったのでしょうか?

【A1】

様々な問題があります。まず負けているチームにファールが多いのは、必然的な面もあります。また戦術的な面で言うと、マンマークにしたことで責任の所在をペトロさんははっきりさせたかったところがあると思います。正直、守備に関してはフィンケさんの時のほうが緩かったですし、当たりも弱くマークのルーズさがありました。それが失点に繋がっていたのも事実です。2011年に関してはマークを厳格化して責任の所在を明らかにし、失点は減ったと思いますがそれがファールの増加に繋がったと思います。技術的な不足もあるし、連携も足りなかった。それが表れたと思います。

なぜ足下パスが多いのか?

【Q2】

レッズは足下でもらいたがる選手が多いって良く聞くフレーズなんですが、それは単に裏に抜ける動きをサボってるだけなんでしょうか??それとも足下でもらわなきゃならない理由があるのでしょうか‥?

【A2】

足下へのパスというのは世界のトレンドで、ヨーロッパの強豪はどこも足下でしかパスを回しません。スペースへのパスというのは前時代的で、今はスペースに入り込んだ選手の足下へ如何にスピードと精度のあるパスを入れていくか、という一つレベルが高まっているところだと思います。レッズもそこを目指してはいますが、レベルが高まっていかないので各駅停車のパスに見えるということだと思います。何故選手たちが止まって考えながらプレーしているように見えるのかというと、連携が大きく不足していますし、チームとしての戦術が成り立っていないからです。選手がそれぞれ、その場その場で考えなければならない状況が多々あります。2手先、3手先を読んだプレーは、個人の能力だけでは不可能ですし、チームとしての連動が不可欠です。2011シーズンのレッズは、チーム力を高めることができなかったために、月日が経っても足下への各駅停車のパスが目立ったのだと思います。裏へ抜け出す動きはありますが、それを他の選手が感じ取ることができずパスが出ないため、連動していかない部分はあると思います。決して止まっているわけじゃないですし、ただそれが効果的に使えていないということだと思います。

島崎英純&福田正博への質問

本当の地域密着って何なのか?

【Q3】

「地域密着」という理念をどう考えてますか?

それと、クラブ・チーム、そしてクラブ職員・選手一人ひとりはこの理念をどう考えているのでしょうか?

どうも、クラブから地域へ、地域からクラブへという相互の関係が成り立ってないような感じがします。

表向き、子供たちや公共団体的な部分と交流はしてますが、それだけでいいとは思いません。

むしろ、本当の地域密着って何なのか?

クラブ・チームからのアプローチだけでなく、地域のサポからのアプローチにもこたえるべきじゃないでしょうか?

チームの事情第一で、そこに応えて切れて来なかった事が観客減の一因にもなっている気がします。

浦和は選手に甘いと言われてますが、こういう部分でも甘やかしすぎだと思います。

プロとしての人気商売という以前に、地域密着の理念をクラブ・チームとしても、選手・職員一人一人も、もちろん、サポも…。今一度、相互確認が必要だと思います。

お二人は地域密着についてどうお考えですか?

個人的には、これ以外にも教育という面で地域の学校とユース選手の交流や、チーム強化という部分で県内のサッカー界との繋がりを強化すべきかと。

横山さんが頑張っていられるようですが、いまいち成果が見られない気がします。

横山さんが協会に行ったなら、スカウティング強化も含めて、県協会からなど、県内の外部の血の流入も必要かと思うのですが…

【A3】

島崎「まず言えることは、クラブと地域双方の利害が一致しなければならないと思います。例えば、レッズが地域のためだけにやることは本末転倒ですし、クラブが何を目指しているのか、そしてそれが地域にとってどんなメリットになるかを考えないといけないと思います。以前浦研の対談で小澤一郎氏とも話をしましたが、スペインでは地域にある数百のアマチュアクラブと連携をとっていて、スカウティングに関しても相互関係があると。また、選手の交流があり、良い選手がアマチュアクラブにいればすぐにトップへ引き上げるし、その逆もまた然り。それを、地域のクラブの人たちも認識をしています。レッズの場合は様々な問題があり、そうした流動性を持ててはいませんし、地域を活性化させるだけではいけないと思います。クラブにとってのメリットがあることも重要です。お互いに、相互のメリットを感じられていないのではないと感じます」

福田「何をもって地域密着なのかわからないし、この質問だと何を求めているのかが今ひとつ伝わってこない」

編集部「質問の中に『選手を甘やかしている』という表現がありますから、もしかするともっと選手たちには地域に下りて何かをすべき、という意見かも知れませんね」

福田「ちょっと判りづらい部分もあるけど、島崎が話した内容を踏まえて考えると、浦和レッズはもともと地域にとって必要とされてできあがったクラブではない。これがまず大前提としてある。サッカーに関して言うと、学校や少年団がある中に、プロのクラブが途中から半ば無理矢理に入ってきているし、日本サッカー界の中でも実は大きな問題点となっているんだ。お互いに、お互いを上手く使っていく必要があるとは思う」

島崎「成り立ちがFC浦和だったら、問題なくスムーズに事が運んでいた部分は大きいと思います。いきなり三菱が浦和にやってきて、地元の人たちは何だお前らは? という意識を持った人も多く居たと思います」

福田「それで地域と根付いて、というのがね。ヨーロッパのクラブは、もともと地域にあったクラブが少しずつ大きくなって、結果的にプロのクラブになっている。日本の場合は、プロのクラブがないところに“地域密着”というお題目を掲げてチームを作った経緯があるから、色んなところに無理や歪みがある。すり合わせるためには相当な努力と、時間が必要だと思う。ヨーロッパの場合、もともと地域のコミュニティとして必要なものとして存在しているし、無理がない。かなり無理をして作っている日本の場合、組織自体が弱いし、表向き地域密着と言っているだけの部分がかなりあると思う。順番が逆で、愛されるようなクラブを“目指す”という中でのメッセージだから、チームは一生懸命考えて色んなことをやっているとは思うけど、ハードルは非常に高いと思う」

島崎「質問のような意見が出てくるということは、今までクラブがやってきたことがあまり響いていないということになりますね」

福田「本当の意味で地域密着を進めていくためには、行政や政治など、より多くのことをクリアしていかなければならない。例えば学校に教えに行くだけでも教育委員会を通さなければならないとか、細かなハードルが実はたくさん存在している。地域のコミュニティへ後から入っていった存在だから、浸透させるためにはもっと積極的なアプローチが必要なのかも知れない。しかし、そこで考えなくてはならないのが、大宮というチームの存在だ」

島崎「日本の場合、行政でひとくくりになりますからね」

福田「大宮アルディージャの存在が、浦和にとっても思い切った施策を打てない一つの要因になっている。合併してさいたま市になっているから、一つの行政区画に二つのチームがある、難しい状況になっているのも事実だ」

編集部「一口に地域貢献といっても、様々な要素がありますから簡単に論ずることができるような題目ではないですね。ただ、地域のコミュニティで中心的な役割を果たす必要性はあるのかも知れません」

福田「スポーツクラブはそうした役割を持つべきだとは思うけど、日本には学校があるからね。ヨーロッパでは多くの人がスポーツクラブに登録するような文化があるけど、日本の場合、特に若い世代は学校の部活がその役割を担っている」

島崎「アメリカは日本と似ていますね。部活でのスポーツ活動が盛んですし、大学まで組織だった運営がなされてます」

福田「地域に貢献、密着していくのは本当に難しい問題で、質問者はできていないと感じているわけだ」

島崎「もっと言うと、する必要性があるのか、という部分を議論する必要もありますね。どうプロサッカークラブを捉えるか、というところにも関わってきます」

福田「地域性もあると思うよ。もし地域がそれを望んでなかったとして、そこに土足でズカズカと入り込んでいくことが果たして良いことなのか、という判断もある。浦和がジュニアチームを持たないことにもそれなりに理由があるのだろうし、もしかしたら“持てない”のかも知れない。途中から入ってきて、Jクラブはたかだか20年弱の歴史しかない。街の歴史は、それこそ何百年とあるのだから、Jクラブが影響力を持ってダイナミックに変化を与えるには、もっと時間が必要になってくると思う。横山さん、森さん、そして犬飼さんのような人脈も力もある人たちが力を注いでも、変えられなかった部分。これは、そう簡単に変えられるものではないよね。相当なハードルが、どこかに横たわっているんだと思う」

島崎「個人的にはレッズが何もやっていないとは考えていませんし、FC浦和がなくなってからは、レッズを地域のトップクラブにしよう、というアプローチを続けています。ただ、実現には時間が掛かるし、まだまだハードルはたくさんあるような印象がありますね」

編集部「質問者の意図に対して正確な答えになっているかはわかりませんが、地域密着というのは簡単な言葉ではないということは確かですね」

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