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【無料公開】惜しまれる前半3失点。しかし選手たちはチャレンジし続けた【天皇杯2回戦G大阪戦レビュー】

天皇杯JFA第104回全日本サッカー選手権大会2回戦

ガンバ大阪3-0(前半3-0/後半0-0)福島ユナイテッドFC
得点者
(G大阪)
19分ダワン
25分山下諒也
35分イッサム・ジェバリ

6月12日、福島ユナイテッドFCは天皇杯JFA第104回全日本サッカー選手権大会2回戦ガンバ大阪戦に臨んだ。

序盤は積極性を持ち、いつも通りのサッカーを展開しようと試みたが、セットプレーのピンチが続いてしまい、19分MF鈴木徳真の直接フリーキックからMFダワンにヘディングシュートを決められ、先制を許してしまう。その後はピンチが続き、25分にはDFラインの背後にMF山下諒也に走り込まれ、GK山本海人が飛び出すも止められずゴールを許した。35分にはGKから中盤へのビルドアップの起点となるパスのこぼれを相手のダワンにインターセプトされ、FWイッサム・ジェバリにシュートを決められてしまった。前半は0-3で終えた。

後半は途中交代でリーグ戦に先発出場していた選手が入り、推進力を持ったプレーが見られるようになり、いくつか決定的なチャンスをつくるが、今季初先発のGK東口順昭がファインセーブを見せ、ゴールを許さない。最後まで懸命にゴールを目指したが、0-3の敗戦に終わった。

1.前半の消極性響く

福島は直近の明治安田J3リーグ第16節ヴァンラーレ八戸戦から先発メンバー9人を入れ替え。ここへ来ても連戦はターンオーバーという方向性を貫いた。

一方のG大阪は何人か主力を温存したり、DF半田陸のようにU-23日本代表招集で不在だったりする選手はいたが、ほぼベストメンバーで臨んできた。

前半で勝負をつけられてしまう展開となった。「J1のチームということでいろんな局面のところでかなり劣勢になって、力負けというところが正直な感想です。序盤から少し構えてしまったところがあって、もっと選手のチャレンジを促すように僕ができれば、もっと緊迫した良いゲームができたと思いますが、少しチャレンジという意味では攻守で物足りなかった」と寺田周平監督が語る通り、前半相手の圧をもろに受けてしまい、思い切って前へ出て行くことができなかった。「構えるのでなく攻守でアグレッシブにチャレンジしていこうと選手を送り出しました。その中でガンバさんの強さ、うまさで外されてしまい、メンタル的に後ろ向きになったかなと感じました」と寺田監督は振り返ったが、これまでの公式戦では感じることのできない強度、精度に苦しんだ。

ただ、その中でも何とか今までやってきたことを出そうという意欲は見せていた。「チャレンジしようという意思はすごく見えて、そこにトライはしてくれた」と寺田監督が語った通り、選手は意欲を失ってはいなかった。

後半はそれを良い形で出すことができ、前向きなプレーが出て、福島らしい中央を突く攻撃も再三見せられた。「前半は積極的に前に出ていく守備ができれば良かったかなと思います。後半は攻められる部分もありましたが、前に思い切って出て行くところで、あまり(G大阪を)前進させなかったところもあったと思うので、そういうところは引き続きやっていければ良いと思います」とキャプテンDF堂鼻起暉が振り返ったが、後半のような前向きなプレーを序盤から増やしたかった。

2.ターンオーバーの効果が今後のリーグ戦で出るか

とはいえ、G大阪は代表ウィークで休養十分だったのに対し、福島は中2日、しかもMF大関友翔はフランスから帰ってきたばかりで起用できなかったことで、ターンオーバーで臨まざるを得なかったことを考えると、出場した選手たちでできることはやれていたと思う。

GK山本海人は3失点したものの、ファインセーブも見せていた。MF秋山陽介も左サイドから良い仕掛けがあった。などなど、出場した選手それぞれ良いところは見せていた。「今日のメンバー選考のところから、この間の八戸戦がかなりタフなゲームになっていたので、コンディションだったりいろんなバランスを考えた上で、僕の中では自信を持って送り出せるメンバーでしたし、十分戦えるメンバーだと思いました。実際それぞれが良いパフォーマンスを存分に出してくれました」と出場した選手の頑張りは寺田監督も評価していた。

とりわけ目を引いたのはMF吉永大志だった。シーズンに入ってからこれまで、中盤の競争になかなか割って入れず、なかなか出場機会が無かったが、6月9日の明治安田J3リーグ第16節ヴァンラーレ八戸戦で今季Jリーグ初出場し、左サイドの守備を安定させる重要な役割を全うした。この日もウィング、インサイドハーフ両方でプレーしたが、前からの守備に加え、攻撃につながるパスなど、ハードワークしながら決定機をつくっていた。「キャンプからずっとやってきて、自分の持ち味の運動量も織り交ぜながら、(寺田)周平さんの攻撃的なスタイルに自分も順応できているのかな、と思います」と吉永自身も手応えを感じている様子だった。

寺田監督はここまで連戦は必ずターンオーバーして、多くの選手に出場機会を与えてきた。その効果は着実に出ていて、試合に出して効果的なプレーができる選手は増えている。今後はさらにレベルの高い競争が生まれるであろうと考えると、この試合で負けたことは残念だが、今後の戦いへの布石はしっかり打てており、悲観すべきことはない。

G大阪はさすがJ1リーグ3位のチームであり、ポジショニング、パス、シュートの精度、プレー強度全て一流だった。そんな中、何とか食らいつこうと90分間戦い続けられたことには価値がある。守って守って、耐えきれず失点して、という形よりは次につながるものがありそうだ。この激闘を経験した選手がJ3の舞台で経験を生かすことを期待したい。

(6月14日は明治安田J3リーグ第17節FC琉球戦に向けての監督、選手のコメントをお送りいたします)

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