【無料公開】【10,000人応援プロジェクトへの道】vol.1 ブラウブリッツ秋田 集客・チケット課リーダー 熊谷穂高さん「サッカーを通して毎週のように楽しめる場所が秋田にある。それを1人でも多く、サッカーを知らない人にも知ってもらいたい」
ブラウブリッツ秋田がホーム開幕2連戦で実施する「10000人応援プロジェクト」。
このインタビュー記事では、プロジェクトの達成に向けて日夜奮闘しているフロントスタッフの思いを聞きました。
事業・マーケティンググループ
toC事業部 ファンクラブ課課長
集客・チケット課リーダー
熊谷 穂高さん
●プロフィール
2002年生まれ。由利本荘市出身。3歳頃からサッカーを始める。西目高校を卒業後、県外で就職。2021年夏、ブラウブリッツ秋田に入社。
—サッカーとの関わりを教えてください。
3歳頃からサッカーを始めて、高校までやっていました。西目高校のサッカー部で、選手権秋田大会の決勝で負けて引退しました。小さい頃はサッカー選手になりたかったのですが、高校生の頃からはブラウブリッツ秋田で働きたいと思うようになっていました。
—入社までの経緯を教えてください。
入社したのは2021年の夏です。
小さい頃からブラウブリッツ秋田の試合を観ていて、岩瀬浩介社長とはもともと知り合いでした。高校時代にはブラウブリッツ秋田で働きたいという話をしていたのですが、結果的には高校卒業後に一度県外で就職することになります。
その1年後、秋田に戻ってきたときにスタジアムで岩瀬社長と話して、入社する運びになりました。秋田をスポーツで盛り上げたいという思いがあり、そのスポーツが、自分自身が一番やってきたサッカーであってほしいと思っています。
—願いがかなって、充実した日々を送っていますか。
いまの仕事は自分がやりたかった仕事です。秋田県の発展とブラウブリッツ秋田の成長、それと一緒に自分も成長していけるなという実感があります。
–業務内容を教えてください。
主に集客やチケット販売に関する業務です。チケットの管理や販売に向けた準備のほか、データを踏まえてより効果的なメールマガジンを発行したり、ファンクラブもやっています。
入社直後はできることをなんでもやるところからスタートして、去年のはじめからいまの業務が自分の役割になりました。
—集客はもっとも大きな役割のひとつだと思います。やりがいもあるでしょうね。
そうですね。ブラウブリッツ秋田のサポーターとしてスタジアムに来ているときも、周囲の来場者を気にしたりしていたので、人を集める仕事には関心がありました。
来場者数の数字がそのまま出てくるので。良くも悪くも自分の責任というか、やってきたことが現れるという意味で責任を感じますね。
—ホームゲームで熊谷さんはどんなことをしているのですか。
チケット販売ブースでお客さんの対応をしています。
—いまの業務でチーム(選手たち)との交流はありますか。
チケット販売を担当するようになって、昨季「選手シート」を始めました。そこで選手個人との関わりはできるようになりました。
—「選手シート」は熊谷さんが企画されたんですね。
そうです。選手シートの対象試合と選手との紐付け要素は、その選手の古巣クラブとの対戦する試合や誕生日などが多いです。
自分もサッカーをやってきて、観てきてもいるので。いまは「こういうのがあったらいいな」というものをできているのかなと思います。
—新たな企画はありますか。
今季でいうと「ピッチサイドシート」と「背もたれつきSS指定席」をやりたいなと思って提案しました。
—ピッチサイドシートはいいですよね。バックスタンド側に設置している事例を観ますが、秋田の場合はメインスタンド側です。
それも事情があります。ソユースタジアムのバックスタンド側にピッチサイドシートを置くと、バックスタンドに高さがなくて、手前の数段の列をつぶさなければいけなくなるんです。なのでメインスタンド側でやらざるを得ない状況がありました。
—メインスタンド側は通路があって高くなっていますからね。いずれにしても、選手たちがいるベンチと近い位置になるのがとても楽しいだろうなと思っていました。秋田の試合運びだとコーナーキックやロングスローも多くなります。
そうですね。秋田のセットプレー、魂ぎわの迫力はもちろん試合中に監督がどんなことを選手に話しているのかなど、貴重な体験ができるのではないかなと思います。
また、ブラウブリッツ秋田はロングスローを投げる選手が多いのでそちらにも注目して見ていただきたいですね。
—屋根付きの「背もたれつきSS指定席」の特長を教えてください。
ソユースタジアムにはもともと屋根がある席が少ないので、それだけでも観戦環境が改善します。さらに付加価値を高めようと考えました。
—試行錯誤の連続ですね。もし費用などを自由に使えるならやってみたいという企画はありますか。
配布企画はやってみたいです。たとえばTシャツでも、ふつうのものはあまり効果がありません。フラッグはどうかなとか、選手が身につけているものはどうかなとか、より皆さんに刺さるものを考えています。
昨季はコンフィットTシャツやブランケットの配布がすごく人気で、こうした企画が毎試合できたら集客的にはぜったいに効果があると実感しました。今季も来場者への配布企画を行う予定です。
—いまの業務のほかに、社内でやってみたい業務はありますか。
1試合1試合、結果が出る今の業務にやりがいを感じています。なので自分はそれを極めたいというか、完璧にできるようになりたいと思っています。
—現在ホーム開幕2連戦に向けた1万人応援プロジェクトを実施していますが、集客はチームの調子が関係しているでしょうか。
仙台など秋田から近いチームは(たくさんの方が来てくれるものの、)結果も来場に左右されると感じています。一方で遠方のチームは日程がすべてだと思います。平日開催はもちろん、日曜も少なくなります。次の日が休みになる土曜の試合は比較的集客が見込めますね。
とは言いながら、逆もあって、秋田サポーターは土曜の昼だと少なくて、土曜の夜や日曜の昼だと多くなる印象です。
—集客の面で、J3優勝・J2昇格がコロナ禍とかぶってしまったのは不運だったと思っています。その影響はあると思いますか。
当時自分は働いていなかったのですが、仕方がないとはいえ、もったいないと思っています。というのも、昨季からしっかり来場者のデータを取ってきました。その積み上げという面で考えると、ホームで連勝するだとか、なにかきっかけがあればぜったいに(多くの)データが集まると思うので。それがJ2昇格のときにできていれば、大きかっただろうなと思います。
—来場者データの集め方はどのようにしているのでしょうか。
JリーグIDの活用です。紙チケットのばらまきをできる限りなくして、たとえ招待券であってもJリーグチケットを通じてJリーグID付きのチケットを発行する。選手シートの申し込みなども、JリーグIDが必要なやり方に徹底していくとデータが集まります。そのデータからメールを送ったりできます。
—ブラウブリッツ秋田はホームの平均入場者数がJ2の中では少ないと思います。入場者数を上げていくにはどんなことが必要でしょうか。
まずはぜったい勝つこと。ホームゲームでのイベントも集客においては大事なことですが、やはりチームの結果が一番の集客要素になります。メディアの報道も「勝つ」か「負ける」かで、内容がよくても負ければ負けたと言われてしまいます。
今年、秋田ノーザンハピネッツの試合を5~6回観戦してみて、やはりチームが勝つことが次また観に行きたいと思ってもらえる最大の理由になるのだと実感しました。
(サッカー観戦においては)天気も重要です。チケットは持っていても、天気が悪いと行かなくてもいいという人が増える傾向があります。
—(秋田ノーザンハピネッツの試合観戦をしてみて)マーケティングの面で参考になったことはありますか。
秋田ノーザンハピネッツの運営面で、うらやましいことがあります。ソユースタジアムの収容人数は約2万人です。秋田ノーザンハピネッツのホームアリーナ(秋田市立体育館)の収容人数は約5000人で、毎試合それが満員になるくらい集客できます。
そうすると、1枚のチケットの価値がぜんぜん違ってきます。「早めに買ってください」「このチケットは貴重です」という売り方ができるのは、すごくいいなと思います。
5,000人収容の場所に4,000人が来場するのと、2万人収容の場所に3,000人が来場するとして、後者ではなかなかチケットの価値を上げられないのが課題です。
—ソユースタジアムの料金は比較的安価だと思っていましたが、そうした難しさもあるんですね。1枚のチケットの価値が上がって料金が上げられればクラブの収益にもつながりますね。
そうですね。
—ホーム開幕戦で展開している「誘い誘われプロジェクト」について。
まずほかのチームでどうやって人を集めているのかを調べました。チケットを渡したり送ったりして「来てください」と呼び掛けても、対象がどんな人かわからないし、いつもスタジアムに来てくれている人かもしれません。
そこでどうすればいいかとJリーグの方と話したり調べたりしているなかで、誘う側にも誘われる側にも特典があれば来てもらえるんじゃないかということで、今季から始めた「誘い誘われプロジェクト」が作られていきました。
—他チームのマーケティング担当との交流はあるんですか。
2ヶ月に1回くらいの頻度で、Jクラブのマーケティング担当者全体のオンライン会議をしています。このチームがこういった集客をしているというような事例共有もあるので参考にしたりしています。
—「誘い誘われプロジェクト」で実現したいことを教えてください。
秋田の人は誘う文化というか、「これが楽しいから行ってみようよ」というやりとりが少ないと感じています。そういう文化が秋田にも根付いてほしいです。
スポーツを通して、サッカーを通して、毎週のように楽しめる場所が秋田にあるということを、1人でも多く、サッカーを知らない人にも知ってもらいたい。それを家族や友だちに知ってもらうために、スタジアムに連れてきてもらいたい。それが「誘い誘われプロジェクト」です。
スタジアムに来てもらって、秋田のサッカーはこんなに面白いんだ、というのをより多くの人に見てもらうことができれば、地元はもっと盛り上がるし、その盛り上がりから県外の人も観戦したくなると思っています。
—これから身につけたいスキルはありますか。
スキルというか、まだ自分はまだまだだと思うことばかりなので、一つひとつのことをレベルアップさせていかないといけないです。やっと去年、1年を通して自分がやりたいことをやれたので、その質を上げていくところをやらないといけないですね。
—ブラウブリッツ秋田の魅力を教えてください。
自分がやっている仕事を通じて人が集まったり、秋田県全体を盛り上げられる企業はなかなかないと思います。「自分がこれをやったんだよ」と言える仕事はすごくいいなと思っています。
高校のときにライフプランを書く機会があって、「スポーツを通して、ブラウブリッツ秋田を通して秋田を盛り上げたい」と書きました。その思いはいまも変わっていません。しっかり実現していきたいです。
取材・構成:竹内松裕