【トピックス】高卒ルーキー meets 中学3年生 夢クラス・鶴岡市立櫛引中学校

生徒との「パス交換」。最初は言葉のパス交換はなかったが、しだいに硬さもほぐれていった。
6月28日、県内の小中学校6校で一斉に開催された「日新製薬PRESENTS モンテディオ山形『夢クラス』」。この日唯一の中学校を訪れたのは、高卒ルーキー、背番号28、荒川永遠選手。参加したのは中学3年生で、学年差で言えば4つ違い。年の差が近いゲストと、進学のための準備が本格化する中学3年生で、どんな化学反応があったのだろうか。
軽く自己紹介を終えたあと、早速始まったのが「パス交換」。生徒代表数名が荒川選手とパスをするものだが、聞こえてくるのはボールを蹴る音と、ボールが転がる音ばかり。荒川選手も生徒たちも黙々とボールを蹴り合う時間が流れていた。まだ会場があたたまっていなかったようだ。
しかし、荒川選手から徐々に「うまい、うまい」、「めっちゃうまい」と声がかかるようになってから会場の一体感が増す。いち早く覚えた名前を呼んだり、イジりの強度をほんの少し上げたりと、このあたりはさすが大阪人といったところ。

自分の体験をもとにしながら、4歳違いの生徒たちの質問に答えていく荒川選手。
続いて行われた「質疑応答」では、事前に集められた生徒たちの質問に荒川選手が答えていく形式で進められた。最初に荒川選手がそのなかから2、3問選んで質問に答え、その後は生徒代表が選んだ質問に答えていったが、「現在のネガティブな状況をどう克服すればよいか?」といった質問も多かった。
「将来の夢が見つからないときはどうすればいいですか?」
「メンタルがマイナスになったとき、どうしますか?」
「モチベーションはどうやって保っていますか?」

生徒たちの手にはペンとメモ。荒川選手から何かを学び取ろうという集中力と真剣みが感じられた。
大人でも解答に困るような質問だが、しかし、そこは並の18歳ではなかった。うわべの言葉ではなく、実体験から導き出された自分なりの回答で、生徒たちが抱いている不安に的確にアドバイスしていった。
「試合中にミスが続いたときに、どうやって修正していますか?」との質問には、こんなふうに回答していた。
「僕も中学校とか高校のときとか、ひとつのミスでネガティブになることも多かったんですけど、ミスしてもどんどんチャレンジしていくと自分のなかで心に決めとって、ミスは絶対に誰でもあるから、ミスをどう改善していくかで自分の成長が決まっていくと思うので、ミスしても凹まず、どんどんチャレンジしていって、ミスしまくって、ミスから学ぶこともいっぱいあるから、いっぱいミスしてください。そして成長していきましょう!」
また、「夢を持つとどのくらい人生が変わりますか?」という質問もあった。
「プロになるときに声をかけていただいたときには、むちゃくちゃうれしくて、全然、現実が受け止められんかったというのが第一で、人生というか、周りの人に応援してもらえるので、いままでは自分のためにやってたけど、プロに入って、『周りの人のために頑張らんとアカン』とか、『サポーターのために頑張らんとアカン』というのもあるので、自分だけじゃなく、いまは周りの人のためにも頑張ろうという気持ちになってサッカーをやってます」
- クラブからのプレゼントを生徒代表に手渡す荒川選手。身長もそれほど変わらない。
- 最後はみんなで記念撮影。表情はまだまだ硬めだが、この日を憶えておくと、この先きっといいことあるぞ。
- 偶然ではあるが、「夢クラス」は荒川選手の背番号と同じ28日に行われた。
- 名残惜しそうに校舎を写真に収める荒川選手。右手の校舎の中からは、参加した生徒たちだろうか、「荒川選手ぅ〜〜〜!」と大きな声が聞こえた。
生徒たちに見送られて会場を後にし、控室に戻ってきた荒川選手に、短い時間だったが囲み取材が行われた。
Q:「夢クラス」の率直な感想は?
「自分が中学生だった頃に、こういうのがあったらいいなあと思いました。自分も中学校のときからずっとプロの選手をめざしてたので、そういった人の話を聴きたいなと。自分の話はどうかわからないですけど(笑)、そういうのがあってもよったかなあと思います」
Q:中学校の頃はどのように過ごされてましたか?
「ずっとサッカーで和歌山に通ってたので、ほとんど家に帰って、すぐに着替えて、すぐ電車乗ってという日々を過ごしてました。サッカーばかりでした」
Q:いまは子どもたちに夢を与えるような立場になったわけですが、これからのサッカー人生に向けて意気込みを聞かせてください。
「これからもっと試合に絡んでいきたいし、山形でスタメンを勝ち取って、早く結果を残したいというのがいまの率直な気持ちです。あとはみんな、僕のことをあまり知らんと思ってたんですけど、僕が有名になって、みんなに『あの選手、来たんやで』と言われるような選手になりたいなと思います」
Q:話のなかでも何度かありましたが、年が近いというところでは接しやすさ、接しにくさはありましたか?
「逆の立場だったら、あまり知らない選手だったらやっぱりああいう反応になると思うので、もっと僕が有名やったらよかったなあと思います。まあ、中学校3年生は思春期じゃないですか。だから、僕もこうやってんやなあと。僕もそういう講演とかあったら、『ちょっと長いなあ』と思っちゃったりしてたので、逆の立場になったら、しっかり聴いたりしないとアカンなと思います」
Q:車でここに来るまではなり長い時間かかったと思いますが、外の景色はご覧になりましたか?
「すごく山が多くて、緑がたくさんある街やなあと思いました」
Q:もう運転免許は取ったんでしたっけ?
「取りました」
Q:じゃあ、一人でも来れそうですね。
「そうですね。やっぱり運転おもろいと、いまは思います。(坂本)稀吏也は次、3回目っす。僕、1ヶ月ぐらい怪我してるじゃないですか。その期間もアイツ(教習に)行ってて、『早く免許取れる』とか言ってたのに、僕一発で、アイツ次3回目っす。それ書いといてください」
(文・写真=佐藤円)