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【頼コラム】あの将棋質問は私ではないのですぅ。

7月24日に行われたホーム岡山戦。内容的にはかなり優位に進めていながら得点機を活かせず、逆に82分に1発を決められて敗れた。あまり思い出したくない結末の試合だったのでどれくらいの方が読んだかはわからないが、岡山の監督・選手のコメントの中に、なんと「将棋」が登場している。まず長澤徹監督の会見の最後にこんなやりとりがあった。

Q:ここ天童市は将棋の駒の街ということで、(決勝点をあげた)豊川選手は将棋の駒で言うならどの駒だったでしょう。
「うーん。なんですかね。僕もあまり将棋は詳しくないのであれですけど、まあ歩が成って『と金』ですか。イレギュラーシュートがそれに近いもので。ただ、あそこで抜け目なく狙うということが素晴らしいことで、華麗なシュートもありますけど、彼が毎日努力を積み重ねている結果だと思います。まだまだ大きな仕事をやってもらわないといけないですし、それぐらいにしておきます」

岡山からはるばる取材に駆けつけた放送局の記者さんが、「勝ったので少し砕けた質問をさせてください」という前置きをして、アウェイの地の「地元ネタ」を振ってきたのである。

リオ五輪の代表選考から漏れてチームに残った豊川雄太選手の活躍とあって、あちらの番記者さんも嬉しかったのだろう。さらにこの監督コメントを、ミックスゾーンに出て来た豊川選手本人に投げかけた。

Q:監督に、「今日の豊川選手を将棋の駒で言ったら何ですか」と聞いたんですが、何と言ったと思います?
「なんだろ、たぶんあれ。斜めにビヨーンって動くやつでしょ?」

Q:角? いや。歩が成って「と金」らしいですよ。
「ああ。徹さんらしいですね(笑)。と金って、最後のアタッキングサードで変わるやつでしょ? よかったです」

私は岡山の記者さんの後ろで話を聞きながら、(アタッキングサードって……うまいこと言うなあ)と感心しながら、上機嫌の豊川選手をうらやましく眺めていた。勝った試合の後では「少し砕けた質問」も受け入れられやすいし、選手の舌も滑らかで、口数が多いのはもちろん、自然と表現も豊かになる。勝つことは何よりの妙薬だなと思う。

先週8月27日(土)の天皇杯一回戦は、関西1部リーグのアルテリーヴォ和歌山を延長の末に下すという薄氷の勝利だった。試合後の選手たちの口からは「ふがいない試合をしてしまった」など反省の言葉が聞かれたが、それでも、ミックスゾーンの空気がこのところのリーグ戦後のそれよりも少し柔らかかったように感じたのは気のせいではないだろう。大会が違っても、相手がどこでも、どんな形であれ「勝ち」はいい。次戦の天皇杯も勝利して、リーグ戦再開に弾みをつけたいものだ。

そして、そのリーグ戦再開後初のホームゲーム、9月18日(日)の徳島戦では、今季2度目の将棋×サッカーコラボイベントが行われる

5月に行われた、将棋×サッカーコラボイベントの様子。写真は指導対局を行う渡辺竜王。

5月の渡辺明竜王、村山慈明NHK杯選手権者に続き、今回のゲスト棋士も凄い。郷田真隆王将と深浦康市九段と言えば、将棋ファンの間ではキャーキャーレベルの大スターである。郷田王将は1971年生まれ、深浦九段は1972年生まれで、1970年生まれの羽生善治三冠とほぼ同世代の四十代半ば。でもずっと未だに強い。サッカー界の黄金世代(石川竜也選手とか、遠藤保仁選手とか、小笠原満男選手の世代ですね)のごとく、そろそろ世代交代の年齢では……と言われ始めてからもう随分経つけどまだ第一線にいるじゃん!という方々である。さらに今回は貞升南女流初段も参加。女流棋士の先生がいらっしゃるのは初めてなので楽しみだ。そしてJ2優勝への道をひた走るコンサドーレ札幌サポの野月浩貴七段はきっとそんな嬉しさを隠してモンテを激励してくれるだろう。トークショーでは僭越ながら頼野がMCを務める予定です。たくさんの方のご来場をお待ちしています。

ところで、件の一連の「将棋質疑」を読み、これを頼野によるものだと思った人もいたようなのですが、前述のとおりこれは岡山側の記者さんの仕業です。いくら将棋贔屓でも、負けた後に、面識もない相手チームの監督や選手にこんな質問ができるほど能天気ではない。さすがに。

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