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【ランダムフォーカス】乗り越えて~梅鉢貴秀選手

梅鉢
出場機会を求めて山形にやってきた梅鉢選手ですが、ここまでの6試合で出場は愛媛戦で途中出場した15分のみ。内心は非常に悔しい、苦しい状況なのではないかと思います。しかし話を聞くと、「ここまで苦しむとは想定していなかったですけど、今の状況を乗り越えるには自分がやるしかない。今やっていることをやめてしまっては、たとえチャンスが回ってきたとしても何もできないですし、いつになるかわからないですけどやり続けるしかないと思っています」ときっぱり。自分の為すべきことに向かってブレない、強い気持ちが伝わってきました。

一カ月ほど前に話を聞いた時には、石﨑監督のサッカーでは離れた敵に対しても全力でプレッシャーをかけることを求められ、これまで梅鉢選手が考えていたよりも2、3メートル遠いところからでもプレスをかけに行く必要がある、と話していました。「その2、3mをぐっと近づくということは、入れ替わる可能性もありますから、そのリスクとも戦わなければいけないし、複雑な技術が要るプレーだと思いますね」と課題を話していた梅鉢選手。微妙なプレー感覚を山形仕様に調整するのには時間が必要なのかもしれません。

試合への出場が叶わない中でも、開幕から6戦勝ちなしのチーム状況に対して感じる責任は変わりません。特にホームでのC大阪、清水との2連戦はベンチからも外れ、チームは連敗。

「ファンの方と一緒に(スタンドから)試合を観て、試合後、ファンの方々がうなだれて……かといって不満を爆発させることもできずに帰って行く姿を見るのは辛いものがあります」

まるで自分たちが戦って敗れたかのように無力感を身にまとって帰途に着くファン・サポーターの思いに応えるためにも「ひたむきさというか、伝わる何かを残さなければいけない。(自分が出たら)そういうプレーは絶対にしたいと思います」。

梅鉢選手は鹿島時代にも、開幕からなかなか初勝利を挙げられずに苦しんだ経験があります。プロ入り2年目の2012年、ジョルジーニョ新体制でスタートした鹿島は開幕から5戦勝ちなし(1分4敗)。この間に梅鉢選手はプロデビューを果たしています。そして開幕から6戦目にしてやっと初勝利を挙げた試合には、梅鉢選手もフル出場でした。

「(勝てない間は)ものすごいブーイングを受けたし、バスを囲まれたり、監督が解任されるのではないかという不安もある中で、みんなで奮い立ってなんとか勝った。僕は無我夢中でやっていただけですが、チーム全体が練習から、自分たちがやらなければ何も変わらないという自覚を持ってやっていました。それがピッチにも表れて勝利できたと思うので、全ては僕たち次第だと思います」。

そして「チームとしても個人としても」と言った後に少し言葉を探し、「うん」とうなずいてからこう続けました。「どうやって踏ん張っていくか。これを機に、乗り越えていく姿を見せて行ければ、また周りのサポーターの方々の力をより得られることになると思うんです」。

(文・写真:頼野亜唯子)

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