【FUKUDA’S EYE】player report 15エスクデロ・セルヒオ(2012/1/24)

2011シーズン出場記録

・Jリーグ:20試合 892分出場 1得点

・ナビスコカップ:6試合 488分出場 1得点

・天皇杯:出場なし

自分の良さを出せたシーズン

セルにとって2011シーズンは、浦研でも問題点を指摘したこともあったが、自分の良さを出せたシーズンだったと言えるのではないだろうか。特に、チームが勝ち点を伸ばせず追い込まれていった終盤戦は、攻撃の中心だった原口が疲労からパフォーマンスを落とし、右サイドで大きなアクセントとなっていた峻希が怪我で戦線を離れ、チームとしてほとんど攻め手がなくなってしまい、何試合も得点を奪えないというような状況が続いた。

そのような状況下でセルはスタメンで出場するようになった。前線でボールを受けてキープすることもできるし、サイドで受けてそこからドリブルで前にボールを運ぶこともできる。自らが直接ゴールを奪う、という面では技術的に足りていないところもあって大きな問題は抱えたままだが、チャンスを作ることに関してはチームに対して大きな貢献ができたと言えるだろう。

フィニッシュの精度に関してはこれまでも彼が長い間抱えてきている課題であり、決定的な場面をしっかりとものにしていくことを突き詰めていかなければならないし、彼が今後、選手としてより高い評価を受けるためには必ずクリアしていかなければならないところだ。ただ、その前までの段階についてはかなり良くなってきていると言える。しっかりボールを受けられて、簡単にボールを失うことがない。彼が高いキープ力を前線で発揮することによって、周囲の選手が攻撃に出て行く時間を作ることができていた。

エジが移籍してからずっと、前線のピースがはまらない状態が続いていたが、終盤戦にセルが出てきたことが、チームが残留できたことの大きな理由になったと思う。顕著だったのは第33節の福岡戦で、28分にセルが負傷で退いたら、途端に攻める形がまったくと言って良いほどなくなってしまった。最終的に勝つことはできたものの、攻撃の形作りの多くをセルに頼っていたことが浮き彫りになった試合だったし、彼がいなくなるだけであそこまでチームとしての攻撃力が低下してしまうのかと驚かされた。そのくらい、終盤戦のチームにとって、重要な役割を担った選手だと思う。

“チームとしてボールを繋いで”という表現は良く聞かれるものだが、前線の選手が簡単にボールを失ってしまっていたら、なかなかチーム全体が高いポジションを取ることは難しいし、相手のディフェンスラインを下げさせることもできず、パスを回していたとしてもそう簡単に前へ付けることができない。縦パスが最前線に入ったときに必要とされる個の力は、非常に重要だ。福岡戦を見ればそれは良く理解できることだと思うし、改めてセルが重要な役割を担っていたんだと再認識させられる試合だった。

怪我と体重の管理

ただ、これもこれまでと変わらぬ課題ではあるが、セルは怪我に悩まされる期間があまりにも長い。この理由は峻希と似たところがあって、常にフルパワーでプレーするそのスタイルに一つの理由を求められる。また、もう一つの問題点として、体重の管理がある。フィンケさんが監督を務めていた頃は、かなり厳しく体重の管理を言い渡されていて、○キロを超えたら練習に参加させない、などと、食生活を変えながら相当苦労して体重のコントロールを行っていた。

体重のコントロールは馬鹿にできない部分で、1キロ増えればそれは常に1キロのおもりを背負ってプレーすることと同じ意味になる。日本人は、それほど体重が増減することがないから、あまり理解できない部分かも知れない。体調を崩したりすれば減ることはあっても、トレーニングしながら体重がどんどん増えていく、ということはあまりない。その分、筋肉が付きづらいということだ。逆にセルのような選手は、筋肉が付きやすいという側面がある一方で、同時に脂肪も付きやすい。

相当しっかりと管理しなければコントロールするのは難しいが、上手く管理しない限り長いシーズンを乗り切る事はできない。セルは別に体重が増えたからといってプレーが良くなるタイプの選手ではないし、怪我を減らす意味でも、上手くコントロールしていくしかない。もう甘えは許されないと思う。

高いパフォーマンスを継続して発揮して欲しい

昨年から浦和は、多くの得点を挙げることのできるフォワードがチームにいない状況で、ポポが新加入選手として入ってきた。しかし2011シーズンのパフォーマンスを見れば、セルのほうがポテンシャルとして上の部分もたくさんあると思う。セルはコンディションさえしっかりと整っていれば、高いパフォーマンスを見せられるということを既に証明しているのだから、監督が変わった新しい環境で刺激を受け、しっかりと自己管理をして、シーズンを上手く乗り切っていって欲しい。今シーズンは、セルが出場し続けるような状況になってくれば、チーム状況は好転していくと思う。それだけのポテンシャルのある選手だ。

あれだけ前にドリブルで仕掛けられてチャンスを作ることができ、なおかつ前線でボールを失わない選手は、なかなか見つけられるものではない。だからこそ、彼がコンディションを保ち、ペトロヴィッチ新監督のサッカーを理解して彼が継続的に出場していけば、浦和としても可能性を感じさせるシーズンになるだろう。今後はそれほど大きな補強ができるわけではないのだから、セルにはやってもらわなければ困る。個人的には、非常に期待している選手の一人だ。

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